【詩のようなもの】祖母に送信
ばあちゃんへ
又聞きの又聞きは
私の記憶に刻まれているよ
“船乗りはよく分かってるから言ったのさ
板子一枚下は地獄 ちゃっちゃと動いて命を守れ”
アレンジを加えたことわざもたくさんあったね
“霧雨と親のバチは後から当たる”
“損して得取れ”
“上をみたらキリがない下を見たら目が回る”
いまは ばあちゃんにとって
ちょうどいいところに居るんだろうな
ぜんぶ満ち足りているあの世で
大好きな植物を育てたり漬け物作りを楽しんだり
その他いろいろ
だけど
蓮の池から覗くやり方は変わらないでしょ?
たまにね
ほんとにたまにでいいから
こっちを池の水越しに見て欲しい
きっとこう言うのかな
「間違えて地獄見たんだろか」
残念だけど
この世なんだよ
──ドアの向こうは外より地獄
──ドアの内なのに地獄より地獄
星がはっきり見える夜は
ばあちゃんへ送受信がうまくいったと
都合良く思おう
──想いは光よりも速く届く
最新の又聞きを添えて