#4 ロボット掃除機は愛嬌をふりまく
2年前、一人暮らしをしているときにロボット掃除機を買った。便利そうだから というよりも、ロボット掃除機を導入すれば、稼働させるために床が片付く(否、片付けなければならなくなる)と考えたからである。もっとも、集合住宅の人々が昼間働きに出ている間にロボットに這いずり回ってもらう方が、朝晩に掃除機の騒音を立てるよりもいくらか気持ちは楽だろうという考えもあった。
とはいうものの、実際に探してみると本当にピンからキリまで種類が豊富である。憧れのル〇バでも…と簡単に考えていたが、どれもとても一人暮らしの狭い間取りに導入できる価格感ではなかった。マッピング機能?必要ないだろう、一部屋しかないのだから。
結局、目を回しながら価格につられて購入したのが、AnkerのEufy RoboVac 11Sだった。当時2万円弱で購入したような気がする。
わりと低価格帯だったため、"ちゃんと使えるのかどうか"が心配ではあったが、実際に使ってみると吸引力も申し分なく(むしろ強い)、そこまでうるさくもなく、非常に良い製品であった。放っておけば隅から隅まできれいにしてくれたし、掃除が終われば自分で充電ステーションに戻っておとなしく充電されている。とても良い買い物をしたと、大満足であった。
ただ、このときの私は知らなかった。ロボット掃除機は、ただ部屋をきれいに掃除してくれるだけのロボットではなかったことを。
言い方が大袈裟であるがそんなに大したことではない。ただ、使っていくうちにわかる。意外と鈍臭くて、意外と手間がかかる。そしてそれが段々と、なんとも愛らしく思えてくるのである。まるでペットのように。
これは注意事項にもあるが、そこまで高性能な製品ではないので、コード類は認識できずに巻き込んでしまう恐れがある。そのため、稼働するスペースにはコード類を垂らした状態にしないことがお約束になっている。
しかし、ロボット掃除機との暮らしに慣れてくると、その禁忌をおかしたまま、ヤツに任せて出かけてしまうという恐ろしいことをしでかしてしまうことがある。当然、恐ろしい結果になる。冷蔵庫の電源コードを引き抜かれていたこともあった。𠮟りつけてやろうかと振り向くと、そんなことは存ぜぬとおとなしくステーションで充電されている。困ったものである。完全に私が悪いのだが。
玄関マットを吸引しながら動かしてしまったらしく、私が帰宅すると玄関に逆さまに落下してこと切れていたこともあった。なんとも無様である。
ただ、この不器用さがなんとも面白く、愛嬌があって癒されてしまう。部屋のどこかしらに引っかかって力尽きたヤツを拾い上げて「ハウス」のボタンを押すと、稼働開始時の元気いっぱいな様子とはうって変わって、しおしおと下がっていくのもまたなんとも可愛らしい。愛嬌である。
導入時は、一人暮らしなのに、とも思っていたが、一人暮らしにこそ最適なのかもしれない。疲れ果てて帰宅して、部屋がきれいになっているのを見てほっとしたことが何回もあった。暗く冷えた部屋で、ひとり頬を緩ませることも何回もあった。ロボット掃除機のおかげで、部屋も私も、少し余裕を持つことができていたのかもしれない。
ちなみにヤツには現在、家が変わっても現役で働いていただいている。家は大分広くなったが、変わらず隅々まできれいにしてくれる。一人暮らしの間取りでなくても、充分すぎる製品であった。そして変わらずたまにドジをする。これからも末永いお付き合いをしていただきたいものだ。