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一人飲みがたのしい



 夫が出張で不在の日は、朝からその日の夕飯のことを考える。日本酒を飲みたい。私は日本酒のワンカップ瓶が好きである。日本酒をあのサイズでそのまま飲むというちょっとした背徳感。「一人で楽しむ」ということがギュッと詰められている気がする。あと普通にかわいい。透明のワンカップ瓶ってかわいくて捨てられない。夜はワンカップを買ってこよう、と決めたら途端にその日のわくわくが始まる。

 我が家は夫婦ともにお酒は好きだが晩酌をしないので、これが私にとってのたまの楽しみになっている。日本酒を飲むことは決めているので、合わせるおつまみを考える。お刺身は外せない。あとはだし巻き卵を作る。茄子があれば焼き浸す。大根もおろして、プランターの大葉も1,2枚採って…と色々考えだすと、ひとりの夜がとても魅力的で楽しみになる。一人なのに普段の夕飯よりも手が込んでしまう。

 買い出しはなるべく遅い時間に行く。さもしい女、お刺身の値引きを狙っているのである。無事にお刺身の盛り合わせを半額でゲットし、ついでに目についた30%引きのメンマも購入した。日本酒コーナーに行くのがこの買い出し最大の楽しみであるが、スーパーのワンカップ酒の種類が少ないのが残念でならない。もっと置いてほしい。私はワンカップが好きなのである。全酒造にぜひ出してほしい。あまり需要がないのだろうか。

 この日は無事に、地元のゆるキャラが描かれた辛口純米酒を購入。最高のコラボで最高であった。こうして捨てられないワンカップ瓶が増えていく。買ってきた刺身はお気に入りの皿に盛り直し、メンマには白髪ねぎをこさえてラー油と和える。一通り準備が済むと、また普段より丁寧にダイニングテーブルに配置する。そして一発写真を撮る。

 丁寧に「いただきます」をし、緊張の一瞬、最初にくいっと一口飲むのが最高で、つまりこれがピークである。今宵のピーク。その後はゆるゆると遠慮せずたのしむ。大抵はお笑い番組などを見ながらゆるゆる飲んでいる。この日は中川家のチャンネルを見ながらたのしく飲んだ。20代女が家で中川家を見ながらワンカップ酒を飲んでいるという事実はあまり外では言えないですけどね。

 つまりは夫の出張が最近たのしいのである。共有スケジュールに「出張」が入るとすこしときめいてしまう。夫も少しずつ増えているワンカップ瓶には気付いているかもしれない。夫も、たまの留守で妻がひとり寂しくしているよりは、いえーいとばかりに楽しんでいる方がいくらか安心だろう。開き直りである。とりあえず、顔には出さないように細心の注意を払いたいと思う。

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