雨の日。
とある日のデートは、奈良。
桜の季節が終わって
緑鮮やかな、鹿さんがいっぱいの公園を歩く。
手を繋ぎながら。
他愛のない話をしながら。
ひとつひとつの景色を焼き付けるように
レンズを向けながら。
帰り道、なんの前触れもなく
どしゃ降りに遭った。
折りたたみの小さな傘は
あっという間に意味をなくして、
雨宿りできる場所もなかった。
ただただ、濡れていくわたしたち。
遠くに大きな木が見えて、
その下で雨宿りしようと向かう。
ちゃぷちゃぷのスニーカー、
肌が透けている白い服、
洗いたてのような髪。
せっかくお洒落したのに、と
心の中で少し落ち込むわたし。
でも彼は、
大当たりやねって笑ってて
わたしを一瞬で笑顔にしてくれた。
そして、大きな木の下までやってきた。
雨音だけが響いて、
誰もいなくて、2人だけの世界になった。
すごく不思議な空間だった。
なんとなく見つめ合って
くちびるが重なった。
深く、ながく。
会えなかった時間を埋めるかのように。
非日常を味わうかのように。
とにかく、ずっとずっと、
彼に触れていたくて仕方がなかった。
* * * * *
雨の日になると
ほんわかと幸せで
愛おしい余韻に浸ってしまいます。