掴んで揺さぶられる感覚
何故か。と聞かれるとわからないが、最先端で流行っていてチヤホヤされているものと一定の距離をとる癖が私にはある。
また、これは牡牛座の性格だと聞いたことがあるのだが、自分が好きなものの世界観が壊れるのを嫌がるところがある。
少し前から話題になっていたYouTubeの「THE FIRST TAKE」というチャンネルは知っていたし、話題の彼が歌ったことも、Mステに出演することも知っていた。
だけど、彼は私の中で「めちゃめちゃいい役者」というカテゴリーに配置されていた。だから何となく見ないで、スルーしていた。
そう。彼とはDISH//の北村匠海だ。
私が彼を認識したのはいつだったかもうはっきりとは覚えてはいないが、やはり、彼の存在を世の中にも私の中にも確定的にさせたのは主人公の"僕"を演じた「君の膵臓をたべたい」なんだろう。
私はあの映画を見たくなかった。
確実にしんどいぐらいに泣く事はわかっていたから見たくなかったのだが、当時付き合っていた人の意見を聞かない彼に連れられて(自分の意思を貫く男に関してはいつか別記事を書きたい笑)映画館で見てしまった。
結果、まあ泣いた。笑
自分が予想していたよりもしっかりと、そしてずーっと泣いていた。でも、あのシーンだけは別格だった。
"僕"がずっと抑えていた感情を爆発させ、号泣するシーンだ。
私は彼と一緒にビックリするぐらいに、ただひたすら涙を流した。
なんて役者だ、この人は。と思った。化物というか、ホンモノというか。
この年代でこんな子が現れたのかと恐ろしくなった。
そりゃあメディアに出て、それを生業として生きている人達なのだからみんな上手い。上手い上に各々の魅力がある。
だからという訳ではないが、世の中には「イケメン俳優」と呼ばれる枠がある。
10代から20代前半の俳優さんはこのビジュアル推しで芝居をする。つまり極論を言えば"芝居なんて下手くそでもビジュアルが良ければOKっす!"な枠があるのだ。
正直そりゃそうだ。と思う。芝居なんて経験して上手くなってくるもんだし、ビジュアルが良ければ格好もつくから良くも見える。
私はこれを「キラキラ俳優」と呼んでいる。
もちろんこの枠の人たちも芝居は上手い。当たり前だ。
だけど私は北村匠海をこの枠にどうしても入れたくなかった。
昔見たあの空港のロビーで「助けてください!」と叫んだ映画の彼と同じ認識を私は北村匠海に持っていた。叫ぶのと抑えてきて泣くのでは表現が違うが、同じぐらい心に響いた。
前者の彼はテレビで見る機会は減ったが、今も舞台に立てば誰にも負けない輝きを放つ唯一無二の存在だ。
だからこそ、私は北村匠海の歌を聞かなかった。チープな存在になる気がしていたからだ。なんなら「芝居に専念してほしいわー」ぐらいに思っていたのだ。
だが、今回は何かが違うことに気付いてはいた。しかし私の中の何かが形を変えてしまいそうで、なんとなく遠ざけていたのだ。
そうしていたのに。何故だか不意に聞いてしまった。雨の日の帰り道、ふと愛用しているサブスクで再生してしまったのだ。
私の心はあっけなく持っていかれてしまった。
傘をさして歩きながら、イヤホンから流れてくる歌を聞いて、気付けばすーっと涙が流れていた。自分でも驚くほどに自然に心が揺さぶられた。歌詞に共感ができる心境でもないし、何か悲しいことがあった日でもない。だけど彼は私の心をしっかりと掴んで揺らすのだった。
思うに、彼は抑えているところからの感情の幅がすごい。一見静かなタイプに見えるが、実は内側でめちゃめちゃ熱いタイプなんだと思う。それが私の心にいつもピッタリとハマるのだろう。
私の考えが甘かった。本当に素晴らしい俳優は表現方法が変わろうが、表現するとやはり素晴らしいものが生まれるのだ。歌だろうがなんだろうが、本当の表現者は何をやっても人の心を動かす。
だから私はこれからも彼の表現を見続けていきたい。次はどんな表現で私の心を奪って動かしてくれるのだろう。
そして最後にやっぱり思うこれだけは言いたい。言葉のチョイスが神がかっている愛情深い天才、あいみょんはすごい。(これもいつか別記事に笑)