観光地化されていない離島へ旅する人に向けたメモ
ネットで「離島 旅行」と検索すると、多くヒットするのは宮古島や石垣島などの沖縄の離島や、佐渡島、小豆島などの比較的人口の多い離島に関するページです。しかし、日本の離島でこれらのように観光地化されているのはむしろ少数派で、あまり観光客が訪れないような離島も数多くあるのです。
こういう離島に行ってみたいと思いながらも、観光地化されていない=旅行プランを立てづらいことから二の足を踏んでいる方も多いと思います。この記事は、私がこれまで離島を旅行した経験をもとに、そうした方向けに離島旅行のプランを立てるために役立つ(かもしれない)ことをまとめたものです。
*なお、この記事では「離島」という単語を「本土と架橋されていない島」という意味で用いています。
島への交通手段
① 「島の名前 アクセス」で検索
多くの場合、自治体や島の観光協会が公式サイトを開設しており、そこで島へのアクセス方法について記載されています。まずは「島の名前」「アクセス」で検索してみるのが常套手段です。
例として「沖島 アクセス」で検索してみた結果を下記に示します。
② 港へのアクセスがわからない場合は、Googleマップで検索
しかし、「島の名前 アクセス」で検索しても十分な情報が得られない場合があります。例えば「土佐沖ノ島 アクセス」で検索して最初に表示されるページをご覧ください。
宿毛市が運営する土佐沖ノ島への定期航路について書かれたページが見つかりました。船の運航時間なども記載されているのですが、船に乗るための港へのアクセス情報がほとんどないことがわかります。
土地勘のない状態で、港へのアクセスを見つけるのは非常に面倒です。このような場合にはGoogleマップに頼るのがいいでしょう。
③ 航空便を使う場合は要注意
ただし、GoogleマップはAndroid版に限って航空便が検索できないという謎の仕様となっています。なぜGoogleが開発したAndroidが一番不便なのかがよくわからないのですが…。
Android版とPC版のGoogleマップで大阪駅から奥尻島までの経路を検索した結果を比較したのが次の図です。これを見ると、Android版とPC版で表示される結果が全く違うのが分かっていただけると思います。
では、航空便に対応したiOS版やPC版なら大丈夫かというと、こちらもやや使い方に注意が必要です。PC版では問題なく奥尻島までの空路が検索できていて、4時間20分で奥尻島に到達できるように見えますが、これは完全な罠です。
「「Google フライト」の検索結果を見てみる」というところをクリックしてみると、乗り継ぎに次ぐ乗り継ぎで結局は伊丹空港から奥尻空港まで20時間程度を要することが判明しました。
実は、多くの場合において最適解は
伊丹空港から函館空港、新千歳空港、または仙台空港まで飛行機で移動
空港から江差港まで陸路で移動
江差港から奥尻島まで船で移動
となるのですが、Googleマップでは空路と陸路を混ぜた経路は検索できないのです。このような場合は、乗換案内を用いると正しい経路が表示される確率が高くなります。
ただし、乗換案内は地図上から直接目的地を選択できないという大きな欠点もあるのですが…。
④ Googleマップや乗換案内の落とし穴…ドックタイヤは非対応
また、離島への定期船便においては、ドックダイヤというものに注意が必要です。これは、船舶の定期メンテナンスのために複数ある船のうち1隻が使用できなくなるなどの理由により、便数が間引かれる期間のことを指して言います。
例えば、2025/1/26に鹿児島県の川内駅近くのホテルから甑島の里港へのルートを検索してみると、下記のような結果が表示されました。
14:30川内港発の便(高速船「甑島」)で甑島に行くことになっていますが、実は1/16~1/29の期間はドックダイヤにて高速船「甑島」は運休なのです。
よって、Googleマップを信じてはるばる川内港までいったところで、船が出ていないことに気づいて呆然とするなんてこともありえるでしょう。Googleマップも完璧ではないということを頭に入れておく必要があります。
⑤ 結論
いろいろと面倒なことが多いのですが、基本的には
「島の名前 アクセス」で検索
港へのアクセスがわかりづらい場合はGoogleマップを使用
空路を使用する場合は、乗換案内を併用
概ね経路が固まったら、ドックダイヤの有無を調査
ということになります。この時点でけっこうハードルが高いのは間違いないのですが…。
島内での交通機関
① 「島名 フェリー 自動車」で検索
もし島に車を持ち込みたいならば、「島名 フェリー 自動車」で検索してみましょう。たとえば、讃岐広島については、下記のようなページが見つかります。
という情報が見つかります。
島に自動車を持ち込む際の注意なのですが、離島行のフェリーは積載量が限られていることが多く、積み残しが発生する可能性はゼロではありません。その場合、通常は(余剰の船舶を保有していないため)増便などはなく次の便を何時間も待つことになるので、積み残されないように早めに港で乗船手続きをすることをお奨めします。
「自動車積載不可」とだけ書かれたページがヒットすることも多いです。「沼島 自動車 フェリー」で検索して見つけたページをご覧ください。
それでは、島内はどうやって移動したらいいのかという疑問が発生するのですが、このページには何も書かれていないのです。
② 「島名 バス」「島名 レンタサイクル」で検索
こうした島は、バスが走っているパターン、レンタサイクルが借りられるパターン、移動手段が徒歩のみのパターンに分かれます。
とりあえず、「島名 バス」「島名 レンタサイクル」で検索してみるといいでしょう。ただし、離島のバスは便数が少なく、多くの場合メインの移動手段として用いるのは困難であると考えるべきです。
また、こうした離島のバス路線については多くの場合「Googleマップ」「乗換案内」等が対応していないことに注意が必要です。
③ それでも情報が見つからない場合は「島名 徒歩」で検索してみましょう
これでも情報が見つからない場合は、徒歩以外の移動手段がないことがほとんどです。「島名 徒歩」で検索すると確定情報が得られるでしょう。
なお、沖縄県の一部の島を除き、日本の離島は高低差が大きいです。「離島」というと八重山諸島の小浜島のような平坦な島を想像なさる方も多いのですが、そうした島は例外的な存在です。
そのため、自転車にせよ徒歩にせよ島内を巡るにはそれなりの脚力を要することに注意が必要です。
「ざつ旅」という漫画の新潟県の粟島を電動アシスト自転車で巡る場面では
というセリフがあります。これはまさに真実でして、電動アシスト自転車に対する過大な期待は禁物なのです。
島内の宿泊施設を探す方法
過疎の離島には宿泊施設は全くないかというと、意外と民宿などが営業していたりします。離島には土木工事や仕事で訪れる人向けに宿の需要があるからだと思われます。
しかし、こうした宿は楽天トラベル等のECサイトには掲載されていないことがほとんどです。島の観光案内所のページなどで探すのもいいのですが、個人的にはGoogleマップで検索するのが一番のおすすめです。
公式サイトを持っていないような小規模な民宿も掲載されている
口コミの信頼度が非常に高い
ために、宿探しにはきわめて強力なツールだと思います。ネットで全く情報が見つからない宿でも口コミが投稿されていたりして、しかも口コミに書いてあったことが間違っていたことは私の経験ではほとんどありません。
こうした宿はネット経由での予約は不可能なことが多いので、面倒がらずに電話で問い合わせてみましょう。一泊二食付きで安くておいしいご飯を食べさせてくれる宿が見つかったりもします(建物は古く、潔癖な方には向かないことも多いのですが)。
島を巡る準備
とにかく現金を準備しよう。1000円札および小銭が必要です。
離島ではキャッシュレス決済ができないことが多く、乗船券や島内バス、(ごくまれにある)自販機などでは一万円札も使用が困難だったりします。島内の宿泊施設も、基本的には現金払いが必要だと思っておいた方がよいでしょう。最近は現金を持ち歩かない方も多いですが、離島に行く際は現金の手持ちを確認してください。
観光マップはネット上に載っていないことも多い
とくに小さな島では、地元の観光案内所のサイトにマップが掲載されていないことが多いです。
そういう時にはまず、「島名 マップ」で検索してみるのがよいでしょう。
一般の方が、現地でしか配布されていないパンフレットや、船着き場の観光案内看板をネット上にアップロードしてくれている場合があります。X等のSNSの検索も試してみるといろいろ見つかることもあります。
また、意外と有用なのがYAMAPです。YAMAPは登山用アプリなのですが、離島の地図も充実していて、徒歩でしか通行できない道もカバーされていることが多いです。携帯電話の電波が通じなくてもGPSで自分のいる場所がわかるので、旅行前にアプリと地図をダウンロードしておくとよいです。
食事の現地調達は期待しないこと
小さな離島では、現地で食事を調達することはほぼ不可能と考えたほうがよいです。観光案内所のサイトには食事処などが掲載されていたりもしますが、そうしたところはほとんどが予約必須なので、突然ふらっと行って昼食を食べるなんてことは考えない方がよいでしょう。
基本的には食事は本土から持参するか、またはちゃんと事前に電話で予約しておく必要があります。Googleマップ上では開業してそうに見えても、いつの間にか廃業していたとか、臨時休業していたいうパターンも多いです。
荷物預かりは本土側にある可能性のほうが高い
離島を徒歩やレンタサイクル、バスで巡る場合に気になるのが荷物を預けられるかどうかです。
島内で宿泊せずに日帰りする場合、または宿泊するにしても送迎などがなく早めに宿泊施設に荷物を預けられない際には、島内に観光案内所があれば荷物を預かってもらえることもあります。(インターネットなどに記載がなくとも、電話で問い合わせると預かってもらえることもあります)。
ただし、観光案内所が存在しない島では、荷物を預かってもらえる可能性はほとんどありません。港にも人が常駐していないので、荷物の保管に責任を持てないからです。
その場合は、本土側で荷物を預けられないか検討することになります。たとえば、広島県の鞆港から走島に行く場合は、鞆港付近で荷物を預けるのがよいでしょう。
しかし、離島への旅は想定外のことがよく起きるので、事前情報に反してどこにも荷物を預けられないとか、現地でコインロッカーがいっぱいで預けられないということもまれにあります。最悪の事態を想定して、離島にはキャリーバッグなどの機動性の低い荷物ではなく、バックパック等の持ち歩きが比較的楽な格好で訪れることをお奨めします。
遊歩道は整備不十分なので、歩きやすい格好で臨みましょう
離島では山の中の遊歩道の整備の人手が不足していることが多いです。夏になるとあっという間に草木が生い茂り、遊歩道が通行困難になったりもします。
そうでなくても、道が荒れ気味だったり危険な状態だったりというのはしばしば見受けられるので、歩きやすい靴、汚れてもいい服で訪れるほうがよいと思います。
現地では知らない人に話しかけられることもあります
人口200人以下くらいの島では、島民は全員顔見知りです。
そのため、よそ者がうろうろしているとすぐに旅行者だとばれてしまいます。しかも、観光地化されていない島を訪れる旅行者が少ないため、珍しがられて島民からいろいろと話しかけられることも多いです。
もし時間に余裕があるなら話をきいてみたり、またはおすすめの場所を尋ねてみましょう。思わぬイベントが発生するかもしれません。
私がこれまでに出会ったイベント
目的地まで軽トラの荷台に乗せて送ってもらった(すみません。違法ですが…)
寺の軒先で暑くてへばっていたら、クーラーのきいたお寺の本堂に呼び入れてもらい、船が来るまでの間休ませてもらった
汗だくで歩いていたら、住民の方にタオルを恵んでもらった
ハーブティーの原料となる草をわけてもらった
人口一桁の島で自治会長さんに2時間ほどいろいろと話を伺った
期間が終わった芸術祭で廃屋につくった作品を特別に見せてもらった
船は運休することもあります
離島は船が運休すると、行くことも帰ることもできなくなります。
多くの場合、運行会社の公式サイト等で早朝に当日の便の運航状況が発表されるので、必ずチェックしましょう。
そして、離島に旅行する際には欠航時にどうするかをあらかじめ考えておくことも重要です。
行きの便が欠航となった
周辺でどこか観光できるところはないか考えると同時に、島で宿泊するつもりだった場合は、代わりの宿泊地を探す必要もあります。
なお、船が欠航になったせいで宿泊をキャンセルした場合、宿のキャンセル料は免除してもらえることが多いです。帰りの便が欠航となった
これは私もまだ未経験です。
急ぎで島内に宿泊場所を探す必要があります。帰りの便が欠航になる際は行きの便も欠航となった可能性が高く、その分の宿泊キャンセルが発生するので宿を見つけることは難しくないでしょう。
行きの時点で天候が怪しい場合は、乗船前に船の運航会社の方に欠航しそうかどうか聞いておくのも一手です。確実なことは言えないでしょうが、危なそうかどうかは教えてもらえます。
ネット上で欠航率などを調べられればいいのですが、そうしたものは私はほとんど見たことがありません。
太平洋側、日本海側を問わず、冬季は夏季に比べて欠航率が格段に上がるのは間違いなさそうです。(瀬戸内海はめったに欠航しませんが)
予期せぬトラブルも楽しむくらいの勢いが重要
離島に行くと、本当にいろんなことが起きます。
野犬にほえられて前に進むことができなくなる
船の乗客が自分以外全員顔見知りで、強いアウェー感を味わう
船酔いする
遊歩道がアブだらけで前に進めなくなる
気が付けば服にヒルがびっしりとついている
ネットで名所だと書いてあったので行ってみると、落ちたら死ぬような断崖絶壁で恐怖を味わう
心を強く持てば、こういうトラブルも逆に楽しむことができるかもしれません。オーバーツーリズムが問題となっている昨今ですが、こういう時だからこそ誰も来ないような離島に行ってみるのもよいと思います。
まとめ:観光地化されていない離島へ行ってみよう
基本的には離島には何もありませんが、何もない割には意外といろいろなものがあるというのも事実だと思います。あんまりネット上に情報がないような場所に行ってみて自分の目で確かめてみようという方は、軽率に観光地化されていない離島に行ってみましょう。