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愛媛県西条市内マイナースポット巡り

前回のあらすじ:
はるばる愛媛まで行って石鎚山に登り始めるも、天候不良にて途中で撤退。思わず時間が余ってしまった私は、伊予西条駅の観光案内所に助けを求めるのであった…。

旅行中、私は観光案内所で
「今日時間が余ったのですが、どこかおすすめの場所はありますか?」
と質問して、教えてもらった場所に行くことが多いです。
事前にネットやガイドブックでも調べてはいるのですが、観光案内所で入手できる情報量は桁違いです。そして「どこかおすすめの場所」という質問は案内所の方の個性がすごく反映されるので、思わぬ回答が返ってくることもあります。
メジャーな定番どころを教えてくれる人、地元の人しか行かないような意外といいところを教えてくれる人、親身になってたくさんのスポットを挙げてくれる人、まれに遭遇するのは「このあたりは何もないよ」と正直ながら観光案内所の存在意義そのものを覆す人…。

伊予西条駅の観光案内所の方は、かなりマニアックな場所を教えてくれたので、遠方から来た私は想定外の「地元再発見」みたいな観光をしてしまいました。
遠くから観光を目的に西条市街地を訪れる方はあんまりいないとは思いますが、参考のために私が巡った感想を残しておきます。


西条市内水巡りで出会った謎の像

観光案内所の方は、開口一番
「西条市は水の都と呼ばれていて、水巡りがおススメです」
とのことでした。どうも、西条市は地下水が豊富にあるため、穴を掘るだけで水が噴出するという「打ち抜き水」で有名だということのようです。この「打ち抜き」スポットへの情熱があまりにも強火だったので、口車に乗っていろいろ巡ってみることにしました。

たしかに水辺の散歩は気持ちいい。気持ちいいのですが、しかし、あまりにも地味です。地味すぎて自分で写真撮るのを忘れてしまいました。仕方ないので、以下2枚ほど、西条市のページから写真を転載します。

総合文化会館。噴水や遊歩道がきれいです。家族連れが縄跳びして遊んでました。
旧陣屋跡のお堀。たしかにきれい。きれいなんだが!向こう側は普通の車道です。

毎日散歩するにはいいところなんでしょうが、わざわざ遠くから観光に来る感じではないです。地元の緑化公園を思い出しながら散策していると、突然謎の銅像に遭遇しました。

「五月晴れ」とある以外に説明文などはなにもなし

これはいったいなんだろうか?
君はなにを今、見つめているの?(古い)
曇天の中、遠くを見つめる青年は何も答えてくれません。一種の「映えスポット」だろうかという疑問を残しつつ、謎の銅像を後にしました。

Google mapで見つけた「五百亀記念館」なる場所へ

水巡り中、Google mapにて「五百亀記念館」なる施設を発見しました。どうやら「伊藤五百亀」という地元出身の彫刻家に関する施設のようです。無料で入れるのですが、記念館の2階は市民ギャラリー(当日はお休み)、1階の半分は企画展示室で、伊藤五百亀を専門に取り扱う展示室は一つしかない?ようでした。

こちらも、写真撮るのがためらわれたので公式インスタから引っ張ってきた写真です。

なんだか見覚えのあるタッチの彫刻…。なんと、伊藤五百亀はさきほどの映えスポット「五月晴れ」の作者だったのです。おまえの仕業か!
西条市内には伊藤五百亀の作品がいたるところに展示されており、「五月晴れ」もその一つだったとのことでした。思わぬところで謎が解けて、よくわからない満足感を味わいました。

西日本最大級の干潟

西条市の「禎瑞(ていずい)」という地域は干拓地で、平坦な土地に田んぼが広がっています。観光案内所の方が、
「ここは西日本最大級の干潟でぜひおススメ!」
と強く主張したので、こちらも訪れてみました。
実際に見ると、確かに干潟です。超絶地味ですが、景色はいいです。地元の人がちょっと疲れた仕事帰りに、ふらっと立ち寄って缶コーヒーでも飲みながらぼんやりするようなところです。
しかし地味。遠方から来た観光客に、ここをおススメする観光案内所の人は、なかなか根性が座っているなと思いました。

干潟対岸の高圧鉄塔がよく見えます。いい景色。
干潟を背にすると、干拓地らしい平坦な田園地帯。のどかです。

現代版「驚異の部屋」、それが西条郷土博物館

それでもまだ時間が余ったので、さきほどの五百亀記念館の隣にある西条郷土博物館を訪れることとしました。
経験上、郷土博物館というのは当たり外れが大きく、しかも圧倒的にハズレが多いです。昭和から放置されて日焼けした展示物説明板、埃のかぶった昔の生活用品、どこかの蔵から発掘された読めない字体の手書きの書類…。
それなので、西条郷土博物館も全く期待していなかったのですが、よい意味で予想を裏切られました。

パッと見た感じはよくある郷土博物館なのですが、展示物のカオス度合いが群を抜いています。鉱物、動物のはく製、水生生物の標本、虫、鎧兜など…。

一見、よくある郷土資料館というかんじです
西条藩でつかわれた鎧兜や生活道具。ここまではまあありがちな展示。
なぜか剥製。だいぶん日に焼けて劣化しているのは気の毒なところですが。
なんの脈絡もないくろまつの輪切り。このあたりから風向きが怪しくなります。
蛇の標本。なにこれ?特に説明はありません…。
よくわからない水生生物たち。グロい。特筆するべきは、これらは別に西条産ではないということです。
火山噴出物。西条郷土博物館に、阿蘇山噴出物を展示する理由がよくわからない…。

まず注意するべきことは、「西条郷土博物館」といいつつ、展示物の半分以上は西条市とは何の関係もないということです。どうやら、西条市の花火師であった田中大祐という方による趣味のコレクションが、市に寄贈されて展示されているということでした。
しかしこの方のコレクション、混沌を極めています。もっとも力を入れたのが鉱物であり、

明治24年、西条の市之川鉱山で毛状アンチモニーを発見したことは学会に一大センセーションを巻き起こした。

https://www.saijo-museum.com/%E4%BA%BA%E7%89%A9%E7%B4%B9%E4%BB%8B/

という業績を持つそうですが、それ以外にも上の写真のように珍しそうなものは何でも収集しているようなイメージです。

かつて、ルネサンス期のヨーロッパでは、裕福な人の間で「驚異の部屋」という私設博物館が流行ったという話を聞きます。
これは、世界中から集めた珍品を自宅に展示することで、エキゾチックなものへの憧れを満たすとともに、自らの権威を誇示するというものだったそうです。残念ながら私も本やネット上で文章を読んで想像するのみなのですが、まさにかつての驚異の部屋というのはこういうものだったのではないかと想像させられるようなカオスでした。西条郷土博物館に行かれる方は、ある程度時間を取って、しっかりカオスに浸るのがよいと思います。

ゲットヴァイク修道院の「驚異の部屋」(Salomon Kleiner、1743 - 1745)

なお、となりには、愛媛民芸館というのがあったのですが、私は「民芸」というのは金持ちによる道楽貧乏くらいの印象しかなくて、今回はスルーしてしまいました。

SAIJO BASEのだんじり展示は超かっこいい

観光案内パンフレットには大きく取り上げられていないのですが、SAIJO BASEという施設に展示されているだんじりは超かっこいいです。こちらも観光案内所の方に教えてもらいました。
SAIJO BASEというのは、コワーキングスペースがあったり貸会議室や展示場があったりするような、どちらかというとビジネス寄りの施設です。よって、観光客がふらっと立ち寄るのはあんまり想定されていないのですが、1階のフリースペースに江戸時代につくられただんじりが展示されていて、下からも上からもいろんなアングルから観察できてよいです。
だんじり本体もよいのですが、「布団締」とよばれるだんじりを飾る刺繡も超イカスかんじで、布団に関する詳しい説明も見ることができます。ここもちゃんと20分ほど時間を取って見に行くとよいと思いました。コワーキングスペースにはコーヒーなんかが飲めるちょっとしたカフェも併設されています。

だんじりが並んでいます。よい。

大本命の鉄道歴史パークSAIJOは真っ先に訪れるべき

おもわず西条市のマイナースポット巡りをしてしまいましたが、観光案内所の方がなぜかスルーした駅前の「鉄道歴史パークSAIJO」は、そこそこの規模があって大人も子供も楽しめる素晴らしいスポットだと思います。というか、マイナーなところ行く前に、まず最初にこちらを素直に訪れるべきでしょう。
電車の車両がたくさん展示されているのですが、その多くは運転席を含めて出入り可能です。ジオラマなんかもあったり、ちょっとした鉄道の科学のようなものも展示されてあったりして、あんまり鉄道に興味ない方でも十分楽しめると思いました。

四国なのに、なぜか新幹線。早く新幹線に来てほしいという願いのこもった展示のようです。
私はSLには思い入れないのですが、「キハ65」という昔の電車は懐かしい思いがしました
昔の新幹線の内部。今に比べるとやはり乗り心地ちょっと悪そうです。

おまけ:朝ドラへの強い思い

かつて高知県の土佐清水を旅行していた際には、いたるところに
「ジョン万次郎を大河ドラマに!」
というのぼりや看板を見かけました。

少なくとも10年間くらいはこの活動続いているようですが、NHKにはずっと袖にされ続けているようです。

似たような活動で、今回西条市内のいろんなところで見かけたのは、
「十河信二とその妻を朝ドラに」
というポスターでした。

SAIJO BASEにて撮影

この四国におけるNHKへの期待度の高さはいったい何なのか?私は朝ドラも大河ドラマも興味が全然ないのでよくわからないのですが、町おこしとしての効果は、そんなに高いものなのかと驚かされます。
たしかに、かつて「江~姫たちの戦国~」が放映されていたころには、滋賀県中に江の登場人物に関する顔はめ看板が発生していたよな…と思い出してしまいました。気の毒なことに「姫たちの戦国」はあんまり人気がなかったようで、超不発に終わったそうですが…。

2018年12月、彦根市内にて撮影

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