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デジタル・ファースト法でわかる日本のデジタル化
IT担当大臣がITの専門家ではない人が大臣になる日本。国のデジタル化はどこまで進んでいるのでしょうか。
2019年5月に制定されたデジタルファースト法案の解説ともとに、どこまで国のデジタル化の方向性についてまとめてみたいと思います。
ちなみに他国ではどうなっているのでしょうか。
IT先進国として有名なエストニアでは、行政サービスの99%がオンラインで完結しています。そのため、行政サービスの手続きが大幅に効率化されています。
1)日本のデジタル化の現状
日本はどうでしょうか。
2016年時点で行政手続きは約4万6000種類ありましたが、そのうちで電子化されているのはまだ1割強です。そこで、政府は全面的なデジタル化に弾みを付けるために、政府はデジタルファースト法を策定した経緯があります。
詳しくは2019年5月24日の日経記事にあります。
この記事や、厚労省の資料を参照すると、デジタル・ファースト法は国としても急務として捉えています。
というのも、世界全体を見たときに、日本の行政手続きは後れを取っているため、ビジネスを行う上での環境が不十分ともいえるからです。
具体的には、会社を作るためには登記の手続きが必要ですし、納税するにしても、納税も簡便さが求められます。さらに職員を採用したときにも、社会保障の手続きを行うためには現在では書面を管轄の自治体へ提出するなど、一つ一つに手間がかかってしまいます。
世界での競争力を持つためには、電子化が必須です。つまり行政の手続きがデジタル化(=簡便にできる)そのものは、単に行政手続きのデジタル化を図るだけには留まらないということです。
そのような大きな流れの中で、日本国内の行政手続きのデジタル化はどこまで進んでいくのでしょうか。
2)デジタル化の基本原則
内閣官房IT総合戦略室が作成した、デジタル手続法案に関する資料には、デジタル法案の3原則が書かれています。
デジタル化の基本原則は3つ上げられます。
①デジタルファースト
個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する
②ワンスオンリー
一度提出した情報は二度提出することを不要とする
③コネクテッドワンストップ
民間サービスを含めて、複数の手続・サービスをワンストップでやる
②については、特に実感があります。
例えば、引っ越しをしたときに新しい住所へ変更した場合、児童手当の住所変更、警察署への住所変更、住民票の異動届など、それぞれ管轄が異なるため、一つずつ行う必要があります。
大変ですよね。
デジタル化すると、手続きをする側の簡素化が図られると共に、行政側からみても、情報の一括管理により手続きが効率的です。
3)国のデジタル化が進むと期待される4つのこと
さらに国のデジタル化を進めるにあたり、以下の4つのことが期待されます。
1.国外転出者に関する手続のオンライン化
海外に住んでいる日本人も、マイナンバーカードを使い納税や年金受給の手続きをネットでできるようになります
2.情報システムを活用した行政事務拡大への対応
マイナンバー制度の活用により、年金など長期にわたり個人情報をシステム上管理する事務の効率化が期待されています。また、住民からのニーズの高かった「土地所有者の探索」「休眠預金の活用時の同一人性の証明」「車の廃車や譲渡時の同一人性の証明」などが行えるようになる予定です。
3. オンライン本人確認手段の利便性向上
電子証明書について暗証番号入力を要しない利用方法が検討されており、実現すると利用者の利便性が向上します。また、マイナンバーカードは2020年度から健康保険証として活用される予定です。これにより、医療機関窓口で、多様な疾患を持つ患者の本人確認を円滑に行えることなどが期待されています。
4.マイナンバーカードの取得の促進
現在の紙製の通知カードは廃止される予定です。また、施行日時点で交付されている通知カードは経過措置として、記載事項に変更がないか、正しく変更手続きがとられている限りは、マイナンバー証明書類として利用できるようになる見通しです。
このように、デジタルファースト法が制定されることで、上記のことができるようになることが期待されています。
今後は医療の実務にどの様な影響が考えられるかを書いていきたいと思います。