【2019参院選】15争点で公約を比較してみた【沖縄の米軍基地編】
本記事では、JAPAN CHOICE 公約比較 サービスと連動して、15個の争点について、解説を行っていきます! 表だけでは伝わらない、争点の構造や争点をめぐる経緯について各争点1記事ずつにまとめました。15の争点、今回は【沖縄の米軍基地】についてです。
沖縄関係の政策での争点は、特に「普天間基地の移設・辺野古新基地建設」、「在日米軍の再編・沖縄負担軽減」、「日米地位協定の改定」、「日米同盟」が挙げられます。
この記事では、「普天間基地の移設・辺野古新基地建設」と「日米地位協定の改定」を取り上げて解説していきます。
1.普天間基地の移設・辺野古新基地建設
日本には、日米同盟・日米安保条約に基づき多数の米軍基地がありますが、そのうち約7割が沖縄県にあります。
沖縄県宜野湾市にある米軍普天間基地には、海兵隊(船や飛行機から敵地に上陸し戦う精鋭部隊)の飛行場があり、2003年に視察に来たアメリカのラムズフェルド国防長官の言葉から「世界一危険な米軍施設」として知られています。
なぜなら、宣野湾市の市街地に位置するこの基地の周囲には120の学校や公共施設が存在し、常に周囲の人々は飛行機やヘリが墜落する危険にさらされているからです。
1995年の米兵による少女暴行事件で反基地運動が高まったのち、1996年には橋本龍太郎首相とウォルター・モンデール米駐日大使は普天間飛行場を5~7年以内に返還すると合意しました。しかし、この際、代わりの基地を沖縄県内に建設するという条件が課され、その候補地として名護市辺野古に海上基地を建設する案が出ました。
さらに、2004年に普天間基地の米軍ヘリが沖縄国際大学の構内に墜落したことを契機に、「米軍再編ロードマップ」が作成され、辺野古沿岸に新基地を作るとともに海兵隊員約8000人がグアムに移転することが決定しました。
2009年には鳩山由紀夫氏が首相になり、「最低でも県外」と発言し基地の県外移設を試みましたが、前述の「米軍再編ロードマップ」で辺野古移設に合意していたため、翌年「県外移設」が断念されました。
しかし、2014年に辺野古移設反対を掲げた翁長雄志氏が沖縄県知事選に当選し、翌年翁長雄志知事は辺野古新基地建設のための埋め立て承認を「取り消し」ました。その有効性を巡って国と沖縄県が裁判で戦った結果、「取消処分は違法」との最高裁の判決により沖縄県は敗訴しました。
2018年に就任した玉城デニー沖縄県知事による、辺野古移設に反対する理由は以下の3点です(1)。
しかし、辺野古以外の有力な移設地は見つかっておらず、また米軍基地は急速に軍事力を増す中国や核・ミサイル問題を持つ北朝鮮などへの抑止力になるため、一概に移設に反対することも難しく、辺野古移設(新基地建設)はやむを得ないとする考え方もあります。
2.日米地位協定の改定
日米地位協定とは、1960年に日米安全保障条約と同時に結ばれた、在日米軍の扱いについて取り決めた協定です。
一般に、他国に軍が派遣される(もしくは駐留する)場合、他国にいる軍人の権利を守るため、軍を派遣した国と派遣された国で地位協定が結ばれます。
日米地位協定が不平等と言われる理由として主に、
①日本側が裁判権を有さない場合がある② 犯罪者の事情聴取・事故現場の調査ができない場合がある
という2点があります。それにより、犯罪が起こった際に日本側が泣き寝入りせざるを得ない状況が起こりやすいのです。
実際、1995年の米兵による少女暴行事件の犯人は日本に引き渡しされず、アメリカで懲役6年6ヶ月という比較的軽い判決を言い渡され、また窃盗など多くの犯罪は不起訴になっています。米軍関係者による犯罪での起訴率は16.3%であり、全国平均の約38%と比べて低い水準です(2)。
他にも、
第3条
「合衆国は、施設及び区域において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置をとることができる。」
との定めに対して、これは治外法権を認めているのではないかという声や、
第12条3項
「合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が適当な証明書を附して日本国で公用のため調達する資材、需品、備品及び役務は、日本の次の租税を免除させる。
(a) 物品税(b)通行税(c)揮発油税(d)電気ガス税」
との定めに対して、経済的特権を与えているのではないかという声もあります(3)。
しかし、日米地位協定は日本にとって不利でないかというこれらの声に対し、外務省は、
「他国が米国と結んでいる地位協定と日米地位協定を比較して日米地位協定は不利だと主張する方もいらっしゃいますが、比較にあたっては、条文の文言だけを比較するのではなく、各々の地位協定の実際の運用のあり方等も考慮する必要があり、そもそも一概に論ずることが適当ではありません。」(3)
「例えば米軍人が刑事事件の被疑者になった時にどの時点で受け入れ国側へ引き渡されるかという問題については、日米地位協定に基づく運用が、他のどの地位協定よりも早い時点での引き渡しになっています(4)。」
と回答しています。
日本も、PKO派遣の際には諸外国と地位協定を結んでおり、中にはジブチなど、他国の権利を侵害するのではないかと指摘される地位協定もあります(5)。
他国に兵士を派遣し、その兵士を守る義務があるアメリカの立場も考えつつ、この協定の改正問題を考えねばなりません。
3.各党の立場
より詳しい比較は JAPAN CHOICE公約比較 に載せておりますので、ぜひ目を通していただければと思います。
★この記事はJAPAN CHOICEと連動して各党の公約を分析したシリーズです。ぜひ他の記事・サービスもご利用ください。
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沖縄タイムズ+プラス「なぜ沖縄県は辺野古に反対なの?」(2019.2.22)(2019.7.7アクセス)https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/387070
(2)琉球新報「米軍関係者、不起訴8割 17年一般刑法犯”特別扱い”浮き彫り」(2018.8.15)(2019.7.7アクセス) https://ryukyushimpo.jp/news/entry-782484.html
(3)ホンシェルジュ「5分でわかる日米地位協定!内容や不平等と言われる理由をわかりやすく解説!」(2018.12.21) (2019.7.7アクセス)
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/7099
(4)外務省「日米地位協定Q&A 問3:日米地位協定が日本にとって不利になっているというのは本当ですか。」(2019.7.7アクセス) https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa02.html
(5)imidas「伊勢崎賢治・布施祐仁に聞く「日米地位協定と主権なき日本」」(2018.3.12 ) (2019.7.7アクセス)
https://imidas.jp/chiikyotei/?article_id=l-81-010-18-03-g550