もし子どもが大切なら、投票所へ一緒に行ったほうがいいかもしれない。
1.はじめに
参院選も公示から1週間が経とうとしています。さて、皆さんは「投票」と聞くと何を思い浮かべますか。
有権者、つまり18歳以上の人をイメージする方も多いと思います。
しかし、投票権は18歳以上に限られているものの、18歳未満の人でも投票所に入ることが可能となっています。私も17歳の時、母に連れられ投票所に行き、一連の投票の様子を見たことを今でも覚えています。このことが1つのきっかけとなり、政治に関心を持つようになりました。
そして現在、私はMielkaにて、中学・高校に出向き、生徒の皆さんを対象に、選挙や政治を身近に感じることの出来る授業を行っております。授業をしてみると、高校生からは「選び方が分からない」「選ぶことは難しそう」という意見が相次ぎます。
私たちは、選挙に限らず、日常生活の中で「選ぶ」という行為を行っています。なぜ、選挙になると選べないのか?本記事では、日常生活の中における「選択」から、未来のために、お子さんを持つご家庭の方が出来ることを考えていきます。
2.日常の中の選択 -夕食選びのひとこま-
さて、私たちは日常生活の中でどのような選択をしているでしょうか。ここで、ある家庭の夕食巡る出来事を見てみましょう。
*こちらは、Mielkaが実際に高校生に対して行っている授業の教材を参考にしています。
夕食①では、母から子へ今日の夕食の選択を迫られています。さて、皆さんは今日の夕食にカレーかシチューのどちらを食べたいですか?
この選択は比較的簡単にできるのではないでしょうか。実際に求めても、「ご飯と一緒に食べたいからカレー」や「辛いのは苦手ながらシチュー」という、多種多様な意見が出てきます。
次に、夕食②を見てみましょう。明日の夕食の選択を迫られています。さて、皆さんはヤンソン・フレステルセかピッティパンナのどちらを食べたいですか。
皆さん「ん?」と思ったのではないでしょうか。高校生も同じ反応を示します。そして「料理かどうかも分からないから選べない」と話す生徒も出てきます。実はヤンソン・フレステルセとピッティパンナは、スウェーデンのジャガイモ料理です。私たちは、たとえ、この情報を得たとしても、どんな料理か想像がつかないままにメニューを選ぶことは出来ないでしょう。
3.選ぶための3つのステップ
上記の事例から私たちは何を学ぶことが出来るでしょうか。
私たちのメッセージは、
・私たちには、普段の生活の中に選択する機会がある。
・私たちは事前知識のある状態でしか選べない。
という2点です。
カレーかシチューを選ぶ際には、それぞれの特色を知った上で、比較し、選択していきます。例えばカレーには香辛料が入っていることを知っていて、その上で自分が辛味を苦手としている人は、シチューを選択するはずです。
このように、私たちは何かを選択する際、①「知る」②「比較する」③「自分の軸に合わせて選択する」というフローを踏みます。
これは選挙でも同じです。まずは各争点についての基礎知識を入手した上で、各党や各候補者の意見を比較し、選択していきます。知ること無くして、選ぶことは出来ないのです。
では、どこから私たちは情報を入手出来るでしょうか。
新聞やテレビ、インターネットなどがあげられます。またJAPAN CHOICEも有効な情報入手方法になり得ます。是非、ご活用ください。
4.「選ぶ力」の向上のためにご家庭で出来ること
夕食の選択のみならず、何時に起きるのか、そしてどの洋服を着て外出するのかを決めることも生活の中の「選ぶ」機会です。私たちが「選ぶ」機会は、決して選挙だけではなく、日常生活の中に多数存在しています。そして、夕食を選択することと、候補者や政党を選択することは、限られた多数の選択肢の中から選ぶという点では非常に似ています。そのため、何気ない生活の中において、ご家庭でお子様と一緒に選ぶ練習をすることをぜひ大切にして欲しいです。特にお子さんが選択をした際に、「なぜそれを選んだの?」とお子さんに問うことは、お子さん自身の判断軸を明確にしてあげることができ、「選ぶ力」の向上に有効であると考えます。
5.なぜ子育て世代の投票が必要なのか
そして是非、子育て世代の方には、以下2つの観点から投票に行って欲しいと思います。
5.1 もっと子育て世代を重視した政策へ
現在の日本では、子育て世代のために使われる行政予算の金額が極めて低く抑えられています。その金額を世界各国と比較すると、各国の家族関係社会支出の対GDP比は、日本が1.32%、フランスが2.93%、イギリスが3.97%となっています(1)。また、OECDによると、日本の教育機関への公的支出の割合は、34ヶ国中最下位となっています(2)。
この背景のひとつに、若者/子育て世代の投票率の低さがあります。若者よりも高齢者の方が投票に行く現状は「シルバー民主主義」とも呼ばれています。国民の代理人である政治家は、投票をしてくれる人、すなわち、現状の日本では高齢者に向けた政策を重視しやすくなってしまいます。しかし、逆を返せば、若者、とりわけ子育て世代の投票率を向上させることができれば、子育て世代への行政予算も増える可能性が出てくるということです。
日本の未来を担う子ども達への投資が少ないこの社会に未来はあるでしょうか。まずは子育て世代が投票に行き、政治に対する影響力を示すことが重要となります。
5.2 未来の担い手を育てる
総務省は、子どもの頃に親の投票についていったことが「ある」人が将来投票に行く率が63%で、「ない」人は41.8%であったとのデータを示しています(3)。ここから、保護者の投票意欲は、子どもの投票意欲に大いに影響することが予想できます。
つまり、子ども達の未来のためには、まずは保護者の皆さんが投票に行くことが重要です。そして、投票の際には、ぜひお子様をご一緒に連れて行ってあげてください。
6.最後に
いかがだったでしょうか。本記事では、日常生活の選択から、未来のために、お子さんを持つご家庭の方が出来ることを考えてきました。この選挙を機に、何気ない日常の選択から、実際の投票に至るまで、お子さんと一緒に「選ぶ」ことについて一緒に考えてみませんか。
参考文献
(1)内閣府『少子化対策予算について (参考資料)』2019年6月30日最終閲覧https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/taikou/k_5/pdf/s4-2-1.pdf
(2)OECD『Education at a Glance 2018』
(3)総務省『主権者教育等に関する調査及び18歳選挙権に関する意識調査の結果』2019年6月30日最終閲覧http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei15_02000153.html
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