G7広島サミット、結局なんだったの?
5月19日から21日まで行われ、ゼレンスキー大統領の来日でも盛り上がったG7広島サミット。ニュースでもたくさん見聞きしたものの、結局何だったの?と思う方も少なくないと思います。そこで、G7広島サミットの要点についてまとめて解説していきます。
そもそもサミットとは?
サミットとは毎年開催される国際会議で、世界の主要国のリーダーたちによって主に世界経済、地域情勢、様々な地球規模課題について意見交換が行われます。
現在はG7(Group of Seven : フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ(※1))の7か国の首脳と欧州理事会議長及び欧州委員会委員長が参加する会議となっており、国際的に大きな影響を与える会議です。
サミットのきっかけは冷戦下の1970年代です。ニクソン・ショック(1971年)や第1次石油危機(1973年)などの諸問題に直面した先進国の間で、政策協調について首脳レベルで総合的に議論する場が必要であるとの認識が生まれ、1975年11月、当時のフランス大統領ジスカール・デスタン氏の提案でパリ郊外のランブイエ城においてG6(フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア)による第1回サミットが開催されました。これ以降、各国が持ち回りで議長国を務めつつ、毎年首脳会合を行うことになっています。参加国はその後1976年にカナダが参加しG7に、冷戦終結後の1998年にロシアが参加しG8になりましたが、2014年にロシアによるクリミア併合やウクライナへの軍事介入に対する強い批判を受け、現在はロシアを省いた冷戦時のG7とEUの代表者による会合となっています。
サミットはG7首脳らの会合のほかに、サミット前後に議長国(今年は日本)の各地で行われる関連閣僚会合も含み、分野ごとの代表者が集まって詳細な議論を行います。
※1 国名は議長国順
G7広島サミットの主な議題
国際社会は近年コロナ禍の経験とロシアによるウクライナ侵攻により、歴史的な転換点にあると言えます。そんな中行われた今年のG7広島サミットでは、
地域情勢(ウクライナ、インド太平洋)
核軍縮・不拡散
経済的強靱性・経済安全保障
気候・エネルギー(エネルギー安全保障と2050年ネットゼロ)
食料
保健
開発(SDGs)
ジェンダー、人権、デジタル、科学技術等の分野
についての議論が行われました[1]
特に喫緊の課題であるウクライナ情勢と被爆地広島という地を生かした核軍縮の議論が最重要論点だったようです。
G7広島サミットの議論の主な成果
G7広島サミットの議論の成果は、「G7広島首脳コミュニケ」という公開文書に詳細に記載されています。
その中でも特に
法の支配に基づく国際秩序を守り抜く姿勢の再確認
ウクライナ支援を継続的に行うことで合意し「ウクライナに関するG7首脳声明」を策定
「核兵器なき世界」を目指して協力して取り組んでいくことで合意し「核軍縮に関するG7広島ビジョン」策定
グローバル・サウス(※2)との連携の強化と自由で開かれたインド太平洋(※3)の重要性の再確認
が今回の特徴的な成果と言えるでしょう。
※2 グローバル・サウス:アジア、アフリカを含む、主に南半球に位置する開発途上国の総称。近年これらの国々が世界経済において大きな力を持ちつつあると言われており、対ロシア、対中国の動向が世界的に注目されている。[2]
※3 自由で開かれたインド太平洋:太平洋とインド洋に面するアジアやアフリカの国々の平和と安全を補償しつつ自由な経済活動や法整備を目的とした取り組み。[3]
特徴的な出来事
平和記念公園行事
核軍縮の議論が重要議題だった今回のサミットの一番の注目行事が平和記念資料館の見学といえます。核軍縮に焦点をあてた初めての声明「核軍縮に関するG7広島ビジョン」では、ロシアによる核の威嚇を非難するとともに中国の核戦力増強への懸念を示し核保有国に透明性の向上を求めることを示しました。広島の地でこのような成果を出したことは歴史的にも意味があったと言える一方で、実際の見学の様子は完全非公開で短時間であったとされ、核軍縮を目標にするという方向性で合意は取れたものの現核保有国に対する軍縮の具体的な施策の提案がないことから、一部批判の声も上がっているようです。ちなみにカナダのトルドー首相は日本滞在中に個別にもう一度資料館を訪れたようです。
また、G7メンバーではありませんが日韓両首脳による初の韓国人原爆犠牲者慰霊碑への献花が行われたのも特徴的な出来事として挙げられます。日韓関係改善への一歩となり、韓国人被爆者からも好意的な反応が得られているそうです。[4]
ゼレンスキー大統領の来日
ウクライナのゼレンスキー大統領のサミットへのゲスト参加は、今回のサミットの大きな特徴と言えます。
もともと今年3月に岸田首相がウクライナを訪問した際の首脳会談にてオンライン参加という形で決まっていたようですが、ゼレンスキー大統領に強い対面参加の意志があったことと移動手段が確保できたことから、来日が実現しました。G7首脳やEU代表者に対ロシアでの連携強化を訴えるとともに、平和記念資料館を訪れることでロシアの核の脅威への対抗姿勢を示したと言えます。
グローバル・サウスを含む各国の首脳を招待国として招いたこと
今回のサミットにおける重要論点の一つであったグローバル・サウスとの連携強化や「自由で開かれたインド太平洋」実現のため、岸田首相はG7のほかにオーストラリア、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、韓国、ベトナムの首脳らを招待しました。これを機に岸田首相と招待国各国首脳の首脳会談はもちろん、クアッド(※4)やインドのモディ首相とゼレンスキー大統領の会談など、実に様々な外交の場が設けられました。ロシアとウクライナに対してあくまで中立的な立場を取ってきたインドのモディ首相とゼレンスキー大統領が会談で握手をしている写真は、世界に大きな驚きを与えました。
※4 クアッド:日米豪印の4か国首脳による戦略対話。[5]
まとめ
いかがでしたでしょうか。サミットは国際社会における重要な議論の機会であるとともに、その場自体が参加国同士の関係をつなぐ重要な外交的な役割を持っているといえるでしょう。
サミットの話し合いが有意義だったかどうかは、今後の国際情勢の動きに注目することでわかってくるものです。
是非今後のニュースに注目してみてください。
参考資料
[1] https://www.g7hiroshima.go.jp/summit/issue/
[2] https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM251U10V20C23A2000000/
[3] https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000430631.pdf
[4] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230521/k10014073811000.html
[5] https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/82879.html
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