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【2019参院選】15争点で公約を比較してみた【社会保障制度編】

  本記事では、JAPAN CHOICE 公約比較 サービスと連動して、15個の争点について、解説を行っていきます! 表だけでは伝わらない、争点の構造や争点をめぐる経緯について各争点1記事ずつにまとめました。15の争点、今回は【社会保障制度】についてです。

  少子高齢化が進み、財政状況も安定していないこの日本の選挙の大きな争点として社会保障制度があります。社会保障制度といってもその施策は多岐にわたっていてなかなか全体をつかむのは難しいため、ここでは各政党が公約に掲げたものの中で政党ごとに比較できる分野を上げて、社会保障制度の争点として見ていきたいと思います。


 Ⅰ 年金制度についての争点

 日本の年金制度は、働く世代が納めた保険料の財源をそのまま高齢者の給付として使う賦課方式という制度になっています。
 現在の日本の人口バランスは、年金の給付を受ける高齢者の数が、働いて保険料を納める世代に対して高い比率になっています。現在の賦課方式の制度では現役世代が納めた保険料をそのまま給付に回す制度のため、保険料収入が少ないのに対して給付すべき額が多く、年金制度の財政は厳しい状況です。
 今後もその状況は一定の期間続くため、制度を現在の財政状況に見合う形で変化させながら、高齢者の所得保障をどう維持していくかが重要な争点となります。

1.1 受給開始年齢など

 今回の争点の1つとして、受給年齢の水準の設定が挙げられます。各政党が打ち出している政策の違いを見ていきましょう。
 下の表は各政党の受給年齢引き上げに関する公約を集めたものです。

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 在職老齢年金制度とは、高齢者になって年金をもらいながら働いて一定の額を超えると、年金額が一定割合減給される制度です。これを見直すということは、これは年金受給額を減らさず更に働けるようにするということなので、受給年齢の引き上げと含めてより高齢になっても働くという動機が生まれやすい性質があるように見えます。
 
 いくつかの政党に共通している政策として、厚生年金の適用範囲を短時間労働者へも拡大するものがあります。厚生年金は、企業に雇われている人が加入する年金で、その対象は労働時間が週20時間以上、給与所得が年103万円以上の人です。この条件を緩和し、その時間以下や、その所得額以上の人へも適用される範囲を広くすることをめざしています。


1.2  年金の持続性・安全性

 続いて、最近話題の年金の持続性・安全性に関しての公約を見ていきましょう。年金制度は、賦課方式なので、働く世代の保険料の納付があってこそ、その財源で年金給付を行うことが出来ますが、働く世代と年金受給世代の人口バランス関係で財源が厳しい現状があります。その状況の中で今回の参院選で各政党が打ち出している公約をまとめてみました。

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 自民党が公的年金だけではなく私的年金の活用促進を打ち出していることや、共産党が保険料の源泉となるそもそもの働く世代の賃金をあげることをめざすことなど、注目したい公約が並んでいます。自民党の私的年金の活用促進にかんしては、公的年金では対応できない部分を民間部門の活用によってカバーすることを目指すもので、年金制度の持続性・安定性にも関わってきます。
 
 ではここから、その年金の持続性・安定性に関して特に争点になっているものを紹介していきます。それは、保険料と給付額の水準、年金積立金の使い道です。

1.2.1 保険料と給付額の水準


 現在、保険料と給付額の水準の決定の重要な要素となっているのは、マクロ経済スライドという方式です。自民党が2004年にこの方式を導入しました。この方式では財源は増えることがないため、高齢者が受け取る年金額も低く抑えられます。自民党はこの方式を変える方針はありませんが、野党などからは反対の声が上がっています。下の表はこの方式をそのまま維持する方針を取らない、もしくは廃止することを目指す政党をまとめたものです。

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 さらに社民党は、2016年に制定された年金カット法(通称は年金改革法)を見直すことも公約で示しています。この法律はマクロ経済スライド方式で、物価上昇賃金下落の場合の保険料給付低下を抑える仕組みになっていたものを、物価と賃金の動向通りに給付水準を下げるようにした法律で、成立当時に大きな批判が起きた法律です。(1)
 一方で自民党は、若者の給付水準確保を図る制度改革を行い、若者も高齢者も安心できる制度を作っていくことを掲げています。 

1.2.2 年金積立金の使い道

 次にもう1つの争点である、年金積立金について見ていきましょう。
年金積立金とは、年金財政が危機的状況になった場合でも年金給付額を担保するために予備的に積み立てられているもので、現在は給付額3年分が積み立てられ、日本企業の株式に投資されています。その投資を続けるべきなのかどうかが一つの争点となっています。

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ここまで年金制度の持続性、安定性に関わる争点でした。ニュースや新聞などでもよく取り上げられる項目出もあるので、注意深く見ていけたらいいのではないかと思います。

1.2.3 受給額の保障、低年金・無年金への対策

 続いて、年金制度の争点の多い受給額の保障、低年金・無年金への対策です。現在、国民年金の給付額は6万5,000円であり、生活保護水準より低いこと、また制度上、年金を受け取れない人がいることが問題となっています。その問題への対応について、争点をまとめました。

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 他方で、年金への未加入問題への対応も一つの争点ですが、その問題への取り組みとして、公明党がマイナンバー制度を活用して保険料「免除制度」の確実な適用を測り、国民年金の未納未加入問題の解消を目指すこと、国民民主党が「中小企業正規労働者雇入臨時助成金の支給に関する法律」を成立させ、企業の負担を軽減して厚生年金への未加入を防ぐことを目指す公約を掲げています。

1.3 年金制度のビジョン

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 最後に年金制度の枠組みに関するビジョンも各政党それぞれが示したものをまとめました。大局的な観点から制度選択、投票先の選択の基準にもなりえると思います。

 ここまでが年金に関わる争点です。年金制度は受給者には直接生活に関わることだと分かり易いですが、若い現役世代の将来にも大きくかかわってくることなので、しっかりと今回の争点を検討し、投票に反映させたいものです。



 Ⅱ 社会保障、医療についての争点

 続いて社会保障全体に関しての争点を、解説していこうと思います。
 社会保障の基本の枠は、社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生の4分野です。その社会保険の1つの制度が上記の年金制度です。

2.1 社会保険

 ここからは社会保険と医療についての争点を見ていこうと思います。社会保険制度について各党が掲げている公約は以下のようになっています。

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 立憲民主党と国民民主党が導入しようとしている総合合算制度とは、医療、介護、保育、障害などの社会保障サービスを受けるときに利用者が負担する自己負担を世帯で合算し、その合計額が一定の基準を超える場合に超えた分を国が負担する制度で、消費税率が引き上げられた場合の低所得者対策として導入が検討されました。その特徴は、サービス対象を保育と障害にも広げ、広く保育サービスを受ける若い世帯なども対象に含めるとともに、世帯所得の把握が可能となるマイナンバー制度の導入を前提に、世帯の所得に応じて上限額が調整される公平性の高い制度と言われています。
 国民民主党はベーシックインカムの導入を目指していますが、これは政府が国民全員に最低限の生活費を給付する制度で、その導入によって無年金者、生活保護世帯を減らすことを目指しています。
 一方で、日本維新の会は、大きなビジョンとして、社会保障の助け合いの理念を同世代間での再分配を主とするものへと転換させることを目指していることがわかります。具体的には、例えば年金は現在若い世代の保険料を高齢者への給付に回す賦課方式ですが、保険料を納めた分の給付を受け取る積立方式になると、その負担や再分配効果が世代間のものではなくなるようになります。

2.2 医療

 続いて医療について見ていきます。

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医療分野に関しても様々に公約が掲げられいます。
 
 ここまで、社会保障の全体的な争点を俯瞰してきました。各政党の目指すべき社会保障のあり方を知ることができたでしょうか。


Ⅲ 介護・福祉

 最後に簡単に介護分野についての争点を解説していきます。介護分野は現在、離職率が高く、人材不足が叫ばれています。その中で各政党は介護離職を減らすことを目指し、政策を練っています。自民党、公明党はICT化推進で職員がケアに専念できる環境づくりを。国民民主党、社民党は賃上げによる処遇改善を行うとしています。その中でも公明党、社民党は人材育成にも力を入れることを掲げています。
 

最後に

 社会保障の争点について様々な観点から解説してきましたが、現在の制度と各政党が掲げる理想の姿を知ることはできたでしょうか。社会保障は国の予算の約3割を占める重要な政策分野でありますが、その範囲が広く、内容も複雑であるため、非常にわかりにくくなっています。今回は特に争点になっている政策を解説してきましたが、この他にも政党は社会保障制度に関してたくさんの公約を掲げています。少なくとも、政党間に対立のある政策について、その違いを分かったうえで投票にいっていただければ、これほど嬉しいことはありません。

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(1)厚生労働省ウェブサイト 年金改革法
   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284.html

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