【2019参院選】15争点で公約を比較してみた【地方・IR編】
本記事では、JAPAN CHOICE 公約比較 サービスと連動して、15個の争点について、解説を行っていきます! 表だけでは伝わらない、争点の構造や争点をめぐる経緯について各争点1記事ずつにまとめました。15の争点、今回は【地方・IR】についてです。
1.地方って?背景と現状について
令和を迎えた日本では、少子高齢化と都市部への人口流出の2つが地方にとって大きな課題となっています。若年層を中心に、地方圏から東京圏へ人口が流出、そこに出生率の低下が重なり、人口オーナス(人口に占める働く人の割合が低下する現象のこと)が地方経済への大きな打撃となっています。
そのような中、政府主導で少子高齢化に歯止めをかけ、人口減少を食い止めるための取り組みが求められています。そのためには東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みやすい環境を確保すると共に、将来にわたって活力のある日本社会の維持のために、国家をかけて、「まち・ひと・しごと創生」に関する姿勢を総合的かつ計画的に実施することが目指されます。
また、少子高齢化や人口減少で働き手の減少で地方の経済環境の厳しさは増しており、都市部と地方の一人当たり県民所得などにばらつきがみられます。地方が自由に使い道を指定できる地方交付税交付金は人口によって変わることもあり、地方の働き手の増加は財源確保の面からも欠かすことはできません。
2.そもそも「まち・ひと・しごと」って何?
政府によるこれまでの政策は、「まち・ひと・しごと創生」を掲げているわけですが、そもそもここでいう「まち・ひと・しごと」とは何のことを指すのでしょうか。
以下でまとめてみました。
3.人口流出の現状を知る
戦後、三大都市圏を含む関東、近畿、東海ブロックでの人口は増加がみられ、とりわけ東京圏を含む関東への人口集中は一貫して続いています。
さらに、2050年までには、現在人が居住している地域の約2割が無居住化するとされており、国土の約5割に人が居住している現在の状態から約4割にまで減少すると予測されています。
また、地方圏から三大都市圏への流出の背景として良質な雇用機会の不足や社会インフラ(交通、病院、商店等)の不足、娯楽施設の不足、教育環境(高校・大学等)の不足が上位にあげられており、定住人口の減少を抑えるためには、地方圏における良質な雇用、社会インフラ、教育施設を増やし、地方からの流出を減らすように努力する必要があります。
4.地方政策に対する各政党の立場
自民党
・若者の地方での起業・就職・就学を金銭的にも支援し、地方への人の流れをつくるとともに、地域経済活性化に資するローカル・イノベーションを推進
・「地域未来牽引企業」が取り組む事業に対し、「地域未来投資促進法」の活用で後押し・自治体とともに予算、税制、金融、規制緩和などの様々な政策手段を組み合わせ、地域に経済波及効果を促す
公明党
地方が社会保障などの課題に取り組めるよう、地方財源を十分に確保し、新戦略策定や研究機関の地方移転、地方大学の独自性強化によって、地域イノベーションの好循環を創る
立憲民主党
・国から地方自治体への補助金等は、特定のものを除き廃止し、地域独自の判断で投資事業の実施が可能な一括交付に
・地域の先駆的な取り組みに対し、規制の特例措置、税制・財政・金融上の支援措置を総合的に実施する総合特区制度などを整理しつつ、それらを最大限活用し、地域に根ざした着想を積極的に支援
・自律分散型の自然エネルギーを普及させることで、各地域での雇用創出と経済の活性化につなげる
国民民主党
・地域の自立的政策展開を可能にする「一括交付金」を復活
・普通車以下は、高速道路料金の上限を土日祝1000円、平日2000円に。
・低コストで地域内でお金が回る仕組みがつくることができ、地域経済活性化に資する「地域仮想通貨」の発行を可能に
日本共産党
道州制や市町村再編、コンパクトシティ化など、行政サービスの後退を招く地方創生に反対
地方交付税交付金は自治体の自主性を保障し、すべての自治体を支援し、成果ではなく必要性によって交付額を決める制度に改め増額
日本維新の会
消費税の地方税化や道州制導入など、地方に権限を移譲
社民党
権限・財源を自治体に移譲/地域循環経済を構築するため、エネルギーを含めた「地産地消」を推進し、地元の企業や金融機関、NPO等の連携を支援
4.IR法案について
地方創生のための起爆剤としてあがっているものがカジノを含むIR(統合型リゾート)政策です。
IRとは、カジノ、ホテルや劇場、国際会議場や展示会場などのMICE施設、ショッピングモールなどが集まった複合的な施設をいいます。21世紀に入ってからラスベガスやマカオ、シンガポールといった都市で、集客施設として国際観光推進に役立たせたいとの動きがあり、IRが次々と建設されていきました。最近では、韓国やフィリピンなどにも建設され、インバウンドを狙うアジアのトレンド産業ともなっています。
日本では、2002年にIR設置に向けた超党派の議員連盟が発足し、2013年、2015年にカジノ解禁を主軸とした「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(IR推進法案)」が国会に出されましたが採択されず、2016年に「IR推進法」が成立、さらに2018年4月には「IR実施法案」が閣議決定し、同年7月20日に成立しました。
5.IR誘致をしているところは?
IR 誘致の動きがある自治体としては、北海道(釧路市、苫小牧市、留寿都村)、横浜市、 愛知県常滑市、大阪市、和歌山市、長崎県佐世保市などがあります。
2021年までに国内 で2~3 箇所を作る予定であり、数が少ない事から多数の観光客が見込める大都市周辺とならざるを得ないことがネックとなっています。そこで、地方自治体は国内に建設するIRの数を増やすよう要求しています。
6.そもそも地方がIRを推進する意味って何?
地方自治体が IR の誘致活動を積極的に行っている背景には、IR 誘致が地域経済に大きな経済効果を与えるというものがあります。IRを誘致することによって、海外からの訪日外国人客誘致の促進や外国人観光客の受入環境の整備が進み、富裕層の訪日数増加による観光消費額の拡大や新たな観光客の増加、さらにインバウンドの効果による地元雇用の増加、観光資源・受入環境の整備、周辺施設や交通網の充実、長期滞在客の増加というメリットが生まれると考えられています。
一方で、治安の悪化やギャンブル依存症の増加が懸念されています。現在、日本でギャンブル依存症の疑いのある状態になったことがある人は約320万人といわれています。ギャンブル依存症対策や日本が世界でも誇れる治安の良さをどのように守っていくのかが引き続き大切な争点となります。
7.IR政策に対する各政党の立場
(1)賛成(自民党、公明党)
誰でも楽しめるような日本ならではのIRを目指す。
(2)反対(立憲民主党、日本共産党、社民党)
ギャンブル依存など日本にとって重要な問題を引き起こすことも考えられ、誘致反対。
(3)問題点が多いまま進めるべきでない(国民民主党)
「賭博の違法性阻却の問題」、「カジノ事業者が貸金業者とし てカジノ内で融資を可能としている」など多くの問題点が解決されておらず、また誘致を目指す都道府県・政令市が事業者と整備計画を策定し、国が選定するプロセスには入るべきでない。
(4)今回の政策集での言及はなし(日本維新の会)
日本維新の会は政策集での言及はありませんが、日本維新の会の地方政党である大阪維新の会は、大阪広域マニフェストというものの中でIRに賛成であり、実際に大阪では誘致をしています。
いかがでしたか?政策比較表を見る際は、自分の考えに合うか合わないかだけでなく、政党公約それぞれにはどんなデメリットやメリットがあるのか、また自分の意見と一致しない政策にも一理あるのではないかなどと考えてみてください。
こうすることで、自分の考えと、政党の掲げる政策を俯瞰的に検討することで、新たな公約を捉える座標を手に入れていただければと思います。
JAPAN CHOICEでは自分の考えと各政党との考えの合致具合がわかる「投票ナビ」を使用いただけます。こちらもぜひご利用ください。
★この記事はJAPAN CHOICEと連動して各党の公約を分析したシリーズです。ぜひ他の記事・サービスもご利用ください。
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まち・ひと・しごと基本方針2018
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/honbukaigou/h30-06-15-siryou1.pdf
北陸財務局HP http://hokuriku.mof.go.jp/soumu/pagehokurikuhp003000027.html
東京圏への一極集中に関する論点ペーパー 内閣府
大和証券
https://www.dir.co.jp/report/consulting/reg-revitalization/20180322_020006.pdf
JTB総合研究所https://www.tourism.jp/tourism-database/glossary/ir/
大阪広域マニフェスト 大阪維新の会 広域政策委員会
https://oneosaka.jp/policy/policydetail/pdf/tokubetsuku_koiki_detail.pdf
道州制の動き 大阪府ホームページhttp://www.pref.osaka.lg.jp/chikishuken/chiikishuken/dousyu-ugoki.html
地域仮想通貨が続々発行、地方の救世主となるか?
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34465
分散型エネルギーについて 資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/006/pdf/006_05.pdf
道州制にして消費税を地方税化することの問題点 アゴラ http://agora-web.jp/archives/1474029.html