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SNSで投票日に選挙のことを投稿するのは法律違反なの?~正しく知ろう選挙運動のルール~

1.はじめに
2.選挙運動とは
3.選挙運動ができる人
4.選挙運動の規制
5.インターネットと選挙運動
6.おわりに
参考文献

1.はじめに

 アメリカ合衆国のトランプ元大統領が旧Twitter(現:X)を使って様々な発信をして影響力を広げていたことは、(もう2016年のアメリカ大統領選から7年も経ちますが、)記憶に新しいと思います。近年、日本でも、ソーシャルメディアを活用して意見を発信する政治家が増えています。一方、選挙期間中にはこれまでと変わらず、街頭演説や選挙カーといった比較的アナログな方法を用いている政治家を多く見かけるのではないでしょうか。どうしてデジタル化が進む社会の中で、選挙運動は街頭演説や選挙カーという形をとり続けているのでしょうか。この記事では選挙運動の規制について説明していきたいと思います。

2.選挙運動とは

 まず、日本国内での選挙において選挙運動はどのように定義されているのでしょうか。判例、実例によると、選挙運動は「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされていて、公職選挙法により、選挙運動の期間は、選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までと定められています。[1]つまり、政治家の普段のSNSでの発信は選挙運動に含まれないのです。また、選挙運動は特定の候補者の当選を目的とする行為とされているので、規制の対象には、政治家だけでなく、政治家をサポートする有権者も含まれるということになります。

3.選挙運動ができる人

 では、選挙運動は誰でもしていいのでしょうか。公職選挙法では選挙運動を禁止されている人が規定されています。18歳未満の者、選挙事務関係者(投票管理者等)、特定公務員(裁判官、検察官、警察官等)、選挙犯罪等により選挙権及び被選挙権を有しない者は選挙運動をしてはいけません。違反した場合は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処することと定められています。[1]

4.選挙運動の規制


図1:選挙運動において禁止されている行為の例(出典:東京都選挙管理委員会HP、https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/qa/qa-katudou/

 選挙運動の内容に関しては、有権者の家への戸別訪問が禁止されています。これは買収などの不正を防ぐために作られた規制と考えられていて、政治家や後援会関係者にとどまらず、有権者も投票の依頼や演説会の告知などのために戸別訪問をすることが禁じられています。[2]他にも、特定の人に投票させる/させないことを目的とした署名活動、選挙運動のために気勢を張る行為(自動車を連ねるなど)や飲食物の提供も禁止されています。しかし、例外的に、選挙運動員などに弁当等を提供することは、弁当の額と数の上限つきで認められています。[3]また、選挙運動のために使用する文書などは、選挙用との表示がされた葉書やビラ、マニフェストなどの公職選挙法に規定された一定のもののほかは基本的に、頒布することができなくなっています。[4]ただし、インターネット等を利用して頒布した場合は特別に、認められています。(コンピュータ上の文字なども判例上、文書図画と解釈されており、公職選挙法の規制の対象にあたります。そのため、ウェブサイトや電子メールを利用して頒布した場合でも、そこから紙に印刷して頒布するのは違法となります。)[1]

5.インターネットと選挙運動

 インターネットを使った選挙運動も、2013年に解禁されました。有権者はブログやSNS、動画共有サービス等を用いた選挙運動は認められている一方で、電子メールを用いた活動は認められていません。一方、候補者や政党はウェブサイト等を用いた選挙運動も電子メールを用いた選挙運動もどちらも認められています。(注)また、ウェブサイト等を用いた選挙運動では、投稿者へ直接連絡するために必要となる情報、具体的には電子メールアドレスやSNSのユーザー名、返信用フォームのURL等の表示義務が定められてます。候補者や政党等が行うことができる電子メールを用いた選挙運動では、氏名、電子メールアドレスの表示義務や記録の保存義務などが定められてます。[3]
(注)政党等は、政令指定都市以外の市の議会選挙、町村長選挙、町村議会選挙では電子メールの送信が認められていません。[5]

図2:インターネットを用いた選挙運動のルール(出典:総務省HP、https://www.soumu.go.jp/main_content/000427851.pdf

 インターネットの使用ができるようになったことで、選挙運動がより手軽にできるようになりましたが、新たな注意も必要になりました。例えば、選挙権を持たない、18歳未満の選挙運動は禁止されているため、18歳未満の者がインターネットに「〇〇候補に投票してください」と投稿することは公職選挙法違反に当たります。また、選挙運動期間外の選挙運動も引き続き禁止されているため、投票日の朝にSNSに「〇〇候補を当選させましょう」と投稿すると、それも公職選挙法違反に当たります。また、当然ですが、誹謗中傷やなりすましも法律で禁止されています。これらの法律違反を犯さないように留意しながら、選挙運動をする必要があります。
 また、SNSでの発信のほかに、インターネット広告の使用についても公職選挙法によって規定されています。公職選挙法では、以下の有料インターネット広告が禁止されています。[5]

  • 候補者・政党等の氏名・名称などを表示した選挙運動用のもの

  • 選挙運動用のウェブサイト等に直接リンクしたもの

  • 候補者及び後援団体による挨拶を目的とするもの

6.おわりに

 選挙運動でのインターネット使用が解禁されてから8年が経ちました。選挙運動に限らず、政治家や有権者のインターネット、特にSNSの使い方は当時から大きく変化しています。読者のみなさんも、この記事をきっかけに、普段目にするSNSでの投稿や、選挙カー、街頭演説などにさらに興味を持っていただけたら幸いです。

参考文献

[1]総務省|現行の選挙運動の規制 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10_1.html
[2]してはいけない選挙運動 [選挙運動のルール ] 京都府
https://www.pref.kyoto.jp/senkyo/prohibited.html
[3]総務省|インターネット選挙運動の解禁に関する情報
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10.html
[4]文書図画による選挙運動 [選挙運動のルール ] 京都府
https://www.pref.kyoto.jp/senkyo/bytext.html
[5]総務省|(1) インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10_2.html


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