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小説「年下の男の子」-10

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第12章-1「波乱」

井田と原田の2人は、絆を再確認して、いつもの駅で降り、改札を出た。

いつもは駅から原田の家まで、井田が送りがてら腕を組んでイチャイチャとしながら歩くのだが、今日は改札を出て2人が腕を組もうとしたら、思わず腕を組むのを止めてしまった。

改札を出た所にいたのが、偶然かもしれないが、私服姿の燈中由美だったからだ。

幸い、燈中はまだ原田と井田に気付いてないようなので、そのまま気付かぬフリをして通り過ぎようとしたら、さっきからの曇り空からいよいよ雨が降り出していた。

「正史くん、傘持ってる?」

「俺、持ってるわけないよぉ」

「そしたら、アタシの折りたたみ傘に2人で入る?」

「そ、それしかないよね。ゴメン、頼む…」

と言って2人が話していたら、何か聞き覚えのある声だと察知したのか、燈中が声を掛けてきた。

「もしかして、原田先輩と井田くん?」

2人は観念した。とりあえず、今初めて気付いたように振る舞おうと、目と目で合図した。

「え?燈中さん!私服だから分からんかったー。どうしたの?」

と、まず井田が先に喋った。

「アタシは、雨が降ってきたから、お父さんの迎えにきたの。井田くんは、部活、体調悪いって早退してたよね。アタシ、帰りのミーティングとか、喋れる相手がいないから、寂しかったよ。でも早退したのに、なんで今頃の列車で帰って来たの?」

「えっ?あぁ、そ、それはね…」

井田が答えに窮していると、原田がそこで初めて燈中に声を掛けた。

「燈中さん、今日は大事な2日目なのに、部長のアタシがいなくてごめんね」

「あれっ?原田先輩も…。あーっ、もしかして、2人は怪しい関係ですか?」

燈中は笑いながらそう言った。

「まさか!アタシに彼氏はいないよ。アタシの彼氏は、やっぱりスポーツマンがいいな。アタシより背が高くて、アタシをグイグイ引っ張ってくれる男性がいいな」

原田は適当に思い付いたことを話した。

「でも原田先輩も、体調が悪くて部活休まれたんですよね?何故に井田くんと同じ列車で帰って来られたんですか?」

燈中が、当たり前のことを聞いてきた。原田は副部長の田川には、用事があるから…と言ったのだが、井田と原田と一緒に現れて、ゴチャゴチャになっているのかもしれない。だから変に訂正せず、燈中に合わせて話をすることにした。

「実はさ、燈中さんなら分かってもらえると思うんだけど…。あ、井田くんはアッチ向いててね」

「はーい」

あくまでも井田は、偶々原田と一緒になったスタンスでいた。

「今日さ、アタシのお月様がお腹で大暴れしちゃって、実は昼からずっと保健室で寝てたの。痛み止めも飲んでね。なかなか治まらなかったんだけど、やっと楽になったのがもう学校を閉める時間で、保健の先生にも悪いけど、帰れる?って聞かれてね」

「うわーっ、先輩、そうだったんですか!アレは男子には分からない痛みですよね…。アタシも何ヶ月かに一回、酷い時があります」

「だよね?アタシもいつもは大した事ないんだけど、今回は酷かったぁ…。こんなに痛いのは初めてだったよ。何が原因なんだろうね。で、部活も休ませてもらって、保健室でずっと寝てたから、こんな時間になっちゃったんだ」

「そうだったんですね。今は大丈夫ですか?」

「うん、薬のお陰かな?落ち着いてるよ。でも今日の部活、面倒見てあげれなくてごめんね」

「いえいえ、先輩がそんな大変な目に遭ってたなんて。とりあえず今日の部活についてなんですが、田川副部長にはご報告したので、明日にでも聞いて頂けたらと思うんですが、アタシ、トロンボーンもテナーサックスもどっちも魅力があって、アタシには決められなかったんです」

「うんうん…」

「そこで、サックスの沖田先輩とトロンボーンの橋本先輩に、ジャンケンして決めてもらったんです」

「へえ!凄いことになったね。結果は…?」

「その結果、テナーサックスをやることになりました!」

原田と井田は、その瞬間、少しホッとした。サックスなら、大抵は合奏の時に、ユーフォニアムより後ろにはならないからだ。
もしトロンボーンになって、合奏時に後ろに燈中がいるという環境は、原田も井田も、出来れば避けたいところだった。

井田も、燈中の楽器決定を喜んだ。

「燈中さん、楽器が決まって良かったね!でも今週は波乱の週だったんじゃない?」

「ありがとう、井田くん。でも波乱の週?そうかな?」

「女子バレー部で嫌がらせされて、退部して、すぐ吹奏楽部に入部して、担当楽器も決まって…」

「そう言えばそうだよね。全部この1週間に起きたことだから…」

と言いながら、アタシが告白したこと忘れないでね、というような意味深な目線をも、燈中は井田に対して向けて来た。

3人が話している内に、雨は増々酷く降ってきた。

「燈中さん、お父さんはまだ着かないの?」

井田が聞いた。

「うん…。会社を出る時に電話があったんだけど、その後何も連絡ないし。もしかしたら大雨で電車も遅れてるのかも…」

「それは心配だね。アタシ達、一緒にいてあげようか?」

と原田が言うので、井田は驚いた目で原田を見た。原田は、大丈夫!と目で返してきたが…

「いえ、先輩のご厚意は嬉しいですけど、何時になるか分からないだなんて、大変なご迷惑を掛けてしまうので、アタシは大丈夫です!」

「そう?」

井田は、流石燈中を知り尽くしている原田だと思った。ああ言えばこう返す、言葉のラリーのパターンを読んだのだろう。

「だから原田先輩も、井田くんも、まだ体調が万全じゃないんだし、先に帰って頂いても大丈夫ですよ。アタシに付き合ったせいで体調がまた悪くなったら…、不本意ですから」

「じゃ、お言葉に甘えて…。アタシ、先に帰るね。ゴメンね、燈中さん」

井田は流石!と、原田の話術に敬服していた。だが原田は続けて井田に対して、こう言った。

「ところで井田くん、傘持ってる?」

「え?さっき持ってないって言っ…グフッ」

原田はちょっと力を込めて、井田の脇腹を押した。そして何するんだ、と目で訴えた井田に、逆に目で(さっきの!演技!)と伝えてきた。

「ご、ごめんなさい先輩、俺、傘は何も持ってないです」

「やっぱり…。じゃあ仕方ない、アタシの折りたたみ傘に強引に入って行く?」

「良いですか?スイマセン…」

ここで燈中が言った。

「アタシが傘2本持ってるから、お貸しできれば良かったんですが、何せ父の傘なもんで…スイマセン」

「ううん、燈中さんは気にしないでね。お父さんが早く帰って来られるのを祈ってるよ」

原田はそう言うと、手早く折りたたみ傘をカバンから出して、広げた。

「アタシ、部長の責任で彼を連れて帰るから。燈中さんも気を付けてね」

「はい、ありがとうございます。井田くんをよろしくお願いします」

「はーい、じゃあね!」

原田はそう言うと、井田の手を引っ張って、小さな女の子向けの折りたたみ傘に入れ、暫く無言のまま歩いた。

お互い、顔とほんの少しだけ右半身と左半身が濡れずに済んでいるだけの状態だった。


第12章-2

もうかなり駅から遠くなり、2人で話しても大丈夫な所まで来た。
先に話し始めたのは、井田だった。

「さっきのやり取り、流石!朝子大明神様々だよ」

「んもう、アタシの緊張も知らないで…でも、何とか切り抜けたね」

「でも、あのさ、あのぉ…」

「ん?」

「あの…なかなか聞きにくいんだけど…」

「アタシ達の間柄で、聞きにくいことなんて、何かあるっけ?」

「今日、本当に体調悪かったの?女の子特有の、あの、月に1回来る、アレで…」

原田はつい噴き出してしまった。

「何がおかしいんだよ」

「アタシが生理で本当にツラかったら、正史くんにそう言うよ。今日アタシを探しに来てくれて、見つけた場所はどこだったっけ?」

「え?あっ、喫茶店だった…」

「自分で忘れてるんだもん。大丈夫、アタシは生理は順調で、薬のお世話になるほど痛かったこともないよ」

「いや、男にはさ、その、なんだ、『片付ける』って意味の言葉を3文字で言う、あの単語は、口にしづらいんだってば」

「アハハッ!まあそうかもね。正史くん、女子だけの世界に来たら、会話の中身に失神するかもね。去年の夏に男子の先輩が引退してから、この春まで女子しかいなかった吹奏楽部に、正史くんがもし来てたら、女って生き物に幻滅したかもね、ウフフッ」

2人の会話は危機を脱し、安堵した楽しいものになっていたが、雨は相変わらず激しく、ほぼ2人は顔以外はずぶ濡れのような感じになっていた。

「ねぇ正史くん…。どうする?アタシの家から正史くんのお家まで。もう殆ど濡れちゃってるけど」

「そ、そりゃあ全速力で走っていくよ」

原田は井田に、驚くような提案をした。

「…あのね、アタシの家で、シャワーでも浴びていかない?」

「えーっ?なんだって!?」

「聞こえなかった?シャワー浴びていかない?」

「い、いやいや、遠慮するよ、ご両親だって、ご兄弟姉妹だっておられるんでしょ?恥ずかしいし、何か勘繰られたら困るし」

慌てる井田を見て、原田は弟みたいだなぁと可愛く感じた。

「正史くん…。本当にウブなんだから、可愛いなぁ」

「そりゃウブにもなるよ。確かに全身殆ど濡れてて気持ち悪いけど、ここまで来たらどうでもいいし。それより原田家に上がりこむ恥ずかしさの方が勝ってるよ」

「ウフッ。アタシがなんの考えもなく、アタシの家にお出でなんて、言う訳ないでしょ」

「え?というと、誰もいないの?」

原田は、少し照れながら話を続けた。

「極端だな、正史くんは。誰一人もいないとは言ってないよ。お母さんと、妹はいる」

「えーっ、やっぱりご家族がいるんじゃん。そんな所へは入れないよ」

「でもお父さんは出張で明後日までいないのと、お兄ちゃんは県外の大学に行ってるからいないも同然」

「な、なんか中途半端…」

「あのね、アタシのお母さんと妹は、もうアタシが正史くんと交際してるのを知ってるんだ」

「えっ、そうなの?」

「ゴメンね、隠してたみたいで。でもアタシのお母さんと妹は、アタシに初めて彼氏が出来たって、凄い喜んでるんだ。お母さんは、早く一度家に連れて来なさいとか言ってるし、妹もお兄ちゃんより良い人か見て上げるって張り切ってるの」

井田はそれなら原田家へちょっとだけお邪魔しても大丈夫かな?と思い始めた。

「そ、そうなの?俺が上がり込んでも、歓迎…は大袈裟だけど、シャワーを借りるなんてこと、許してくれるの?」

「もちろんだよ。で、濡れた制服や下着は、アタシが洗って上げるから、今夜はアタシのお兄ちゃんのパンツでも穿いて、井田家に帰れば良いよ」

「うーん、なんだか背徳感が拭えないんだけど…」

「気にしない、気にしない!さ、アタシの家はもうすぐだから」

原田がそう言って、井田の手を引っ張り、やや小走り気味に歩くと、いつもは玄関先でバイバイする原田家に到着した。

「ちょっと待っててね❤」

原田は先に家に入った。お母さんと妹さんに、井田がずぶ濡れだからシャワー浴びさせて着替えを貸してやっていいか、確認しているのだろう。

しばらくすると、玄関のドアが開いた。
そこに原田朝子が立っているかと思ったら、朝子にそっくりな顔をした、女子高生がいた。

「こんばんは!」

その女子高生が先に言葉を掛けてくれたので、井田も

「こんばんは!井田と申しますが…」

と返した。すると

「オッケー、井田くん、お家の中にどうぞ!」

という返事が返ってきた。きっと妹だろう。

「ごめんなさい、夜遅くに突然来まして…」

と井田が言うと、女子高生は

「うわっ、ますますオッケー!お姉ちゃん!いい人見付けたね!」

と、家の中の方へ向かって大きな声を上げた。

井田は苦笑いしながら、妹が開けてくれた玄関に入り、先ずはその場で待った。

「あれ?井田くん、中に入りなよ」

「いえ、靴から靴下まで濡れてますから…」

「ねぇ、なんて素敵な男の子なの?凄い礼儀もしっかりしてるし、濡れてるからって家に上がろうとしないよ。ねぇ、お母さーん?」

そこへやって来たのが、朝子を少し年配にした感じの女性だった。恐らくお母さんだろう。

「あらあら井田くん、こんなに濡れちゃって。気にしないでいいから、靴と靴下を脱いで、上がって下さいね」

「そんな、汚れてしまいます。本当によろしいんですか?」

「朝子がいつも我儘言って困らせてるでしょ、ごめんなさいね。お詫びに少しぐらい、我儘言ってもらっても良いのよ」

井田は当惑した。初対面の彼女の家族に、いきなりこんなに歓迎されるなんて思ってもみなかったからだ。

「では、お言葉に甘えて…。失礼いたします」

井田は靴と靴下を脱ぎ、裸足になり、お母さんが出してくれた足拭きマットで足を拭いてから、原田家へお邪魔した。

「井田くん、思わぬ大雨で大変な思いしたでしょ?雨が落ち着くまで、家でユックリしてね」

とお母さんが言うと、妹が

「そうそう、ユックリしてね!なんなら泊まっても良いよ!」

とまで言った。

「本当にすいません。改めて、お母様と妹さんのお名前をお聞きしても良いですか?」

「あら、アタシなんかお母さんで良いのよ。朝子の妹!あなたはちゃんと名前を教えて上げなさい」

「はーい。アタシはお姉ちゃんの一つ年下の、高校2年生、裕子って言います。よろしくね!」

「ごめんなさいね、井田くん。娘の躾がなってなくて…」

「い、いえ…。明るくて羨ましいです」

「ほら、お兄ちゃん…だけど年下の井田くんは、褒めてくれたよ?」

「こら、だからって調子に乗らないの」

井田は苦笑いしながら、

「僕は年の離れた、もう嫁いでしまった姉しかいませんので、やっぱり羨ましいです」

と言った。

「そうなんですか。お姉様とは、幾つ年が離れてらっしゃるの?」

「姉とは8歳離れています。今年24歳なんですが、去年縁あって結婚いたしました」

「へぇ、凄いなぁ、井田くんのお姉ちゃん!23歳で結婚してってことでしょ?じゃあ我が家のお姉ちゃんもあと5年で結婚してもおかしくないんだね」

井田は突然、朝子と結婚することが脳裏に浮かんでしまった。

朝子が23歳の時、俺はまだ21歳だ…責任もてるのか?

「まだお姉ちゃんは、進学するか就職するかで迷ってるんだから、結婚なんてまだ先のことよ。そうそう井田くん、お腹空いてるでしょ?何か食べていきませんか?」

お母さんから、思わぬ夕飯のお誘いだ。
確かに喫茶店でカフェオレを飲んだだけだから、空腹なのは間違いない。だがいきなり、では何か食べさせて下さいなんて言うほど、井田も馬鹿ではない。

「とんでもないです。シャワーをお借りするだけでお邪魔したのに、夕飯までいただくなんて申し訳なさすぎます」

そこへ、姿を消していた朝子がやって来た。
なんと既にパジャマになっている。先にシャワーを浴びていたようだ。

「ゴメンね、正史くん。先に何も言わずにシャワー浴びちゃって」

「え、いやいや、気にしないでいいよ。ここは朝子のお家なんだから」

「うわっ、お姉ちゃん達って、もう下の名前で呼び合う仲なの?照れるー!『おい、朝子』『なに?正史くん』とか言ってるの?キャー!」

妹の裕子のテンションがマックスだ。

「裕子、黙ってて!」

「はいはい、お姉ちゃんの大事な初めての彼氏だもんね」

「んもう、そういうんじゃなくって…。正史くん、シャワー浴びちゃって。お母さん、何か食べてもらうなら、シャワー浴びた後の方が良くない?」

「そうかもね。まだ雨で濡れたままだもんね。じゃあ井田くん、先にシャワーどうぞ。脱いだ物は、洗濯機に入れてね」

「えっ、そんな洗濯までなんて、いいですよ。失礼過ぎます」

「気にしないでね、そんなの。なんなら泊まっていっても良いわよ」

なんと、妹の裕子に続いて、お母さんまで泊まっても良いと言う。裕子は、

「そうそう。さっきアタシもそう言ったんだけど、そこまでは…って感じだったの」

と続けた。

「いくらなんでも、初めてお邪魔して、洗濯までして頂いて、なおかつ泊まらせて頂くだなんて、申し訳がなさすぎますし…」

そこへ裕子が口を出した。

「お姉ちゃん!お姉ちゃんの気持ちはどうなの?正史くんに泊まってほしいの?帰ってほしいの?どっちなの?」

なかなか妹の裕子は、末っ子だからか容赦なく突っ込んで来る。

「えーっ?アタシ?…そ、そりゃあ正史くんと少しでも長く一緒にいたいけど…」

「はい、じゃあ決定!正史くん、今日は家に泊まっていきなよ。明日の朝までに、制服とか、乾くでしょ?お母さん?」

裕子の方が積極的だ。

「うん、今すぐ洗濯機回して、乾燥機にかければ大丈夫よ」

井田の方が圧倒されていた。

「もう、2人ってば…」

と言いながらも、朝子も満更ではなさそうだ。

「じゃあ井田くん、お風呂、入っちゃって。その間に夕飯作って上げるから。あと、井田くんのお家に、私が電話しておくわ」

「いやもう、本当に何もかも申し訳ありません!どう御礼を申し上げたら良いのやら…」

「本当に正史くんは礼儀がしっかりしてるね。お姉ちゃん、将来は安心だね!」

裕子がそう言うと、朝子は苦笑いするしかなかった。

「じゃ、すいません、お風呂、お借りします」

「どうぞ、どうぞ。脱いだ物は洗濯機にそのまま入れてね。代わりに、ウチのお兄ちゃんので申し訳ないけど、一応洗濯済の着替えの下着とパジャマ、用意しておくわね」

お母さんがそう言ってくれた。
井田はスイマセンを連発しながら、朝子に浴室へと案内された。

「正史くん、なんだか凄いことになっちゃって、ゴメンね。でもアタシ、嬉しいよ。正史くんが泊まってくれるなんて」

「俺もビックリの連続だよ…。でも、朝子のお母さんと妹さんに認めてもらえたみたいで、嬉しいな」

「うん…。ね、やっと2人きりになれたから…。キス、して…」

「ああ、待たせちゃったね」

2人は唇を重ねた。その場が原田家の浴室の脱衣場というのが、互いを興奮させる。いつになく長いキスになった。

「お姉ちゃーん、正史くんに何かしてるんじゃないの?案内しただけにしては遅いよ?」

鋭い妹、裕子からの声が聞こえた。

「はいはーい。お風呂場の使い方を説明してたから…」

「本当に?だとしても結構長すぎなような…」

「今すぐ戻るよ!」

井田と原田は互いに苦笑いした。

「あんな妹…だけど正史くんにとっては学年は1つ年上になるけど、よろしくね」

朝子はテヘッと舌を出して、脱衣場から出て行った。

(ふう…。朝子がさっき入ったばかりの浴室…。ドキドキする…)

これからどんな夜になるのだろうか…

<次回へ続く↓>


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ミエハル
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