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クイズ小学校 #こんな学校あったらいいな

登校

「行ってきまーす!」

あたしはお父さんの転勤で、この春から新しい街に引っ越してきたの。
小学校も転校になって、新しい小学校に通うことになったんだけど、この街の小学校って、楽しいんだよ♪

あっ、あたしの名前は海東メイ。メイって呼んでね。

あたしの名前を英語風に読むと「メイカイトウ」、そう、「名回答」になるの。
なんでこんな名前になったのかお母さんに聞いてみたら、お父さんがとにかく海外に出ても頭の良い子に育ってほしくて付けたんだって。
でも海外でメイカイトウって言っても、英語じゃ別の言い方になるんじゃないのかな。
逆に日本で英語式に自己紹介したら、笑われるんじゃないかなぁ…。

まあいいや!もう6年生だから、来年は中学生になるし、ちゃんと勉強しなくちゃね!
でも勉強はまだいいけど、体育は苦手なの。
この前もマット運動してたら目が回っちゃって、休憩させてもらっちゃったし。
だけどあたし、この小学校に転校してきて、毎日が楽しいよ!

それはね・・・

「おはようございまーす」

あ、クイズ委員会の人だ。今日はどんなシートかな?

「はい、メイちゃん。今日は○×クイズの日だよ」

「やったー!あたし、○×クイズ、好きなんだ」

「よかったね。じゃあ放課後まで頑張ってね」

「はーい、頑張ります!」

あたしの小学校は、1学年1クラスの小さな小学校なの。
だからあたしが転校してきたときも、すぐにみんなと仲良くなれたよ。あたしのことも、メイちゃんって、すぐ覚えてもらえたし。

そして最初はビックリしたんだけど、クイズ委員会っていう委員会があって、毎朝生徒全員に、その日の回答シートを配ってるの。
クイズは色んな形式があるんだけど、1日5問。

あたしたちは、その日一日の授業のどこかで出されるクイズに答えて、放課後にクイズ委員会に持って行くんだ。

そしたら、正解した数と同じだけ、お菓子がもらえるの!

クイズはね、突然出されるから緊張してなきゃいけないけど、そんな難しい問題は出ないから、楽しいよ!

よーし、今日はあたしの好きな○×クイズだから、全部当てて沢山お菓子持って帰ろうっと。

第1問・社会

1時間目は社会なんだ。1時間目から、いきなりクイズ出されるかな~。

「メイちゃん、おはよう!」
「あっ、カナちゃん、おはよう!」

あたしの友達、平野カナちゃん。
あたしが転校してきたとき、一番最初に声かけてくれた子なの。
だから、一番の親友なんだよ。

「メイちゃん、今日は○×クイズだから、メイちゃん全部当てちゃうんじゃない?」
「うん!あたし、頑張るよー」
「あ、先生が来た!」

6年生の担任、桃恵先生。
ももえじゃないよ、モモメグミ先生だよ。
みんな、モモちゃん先生って呼んでるよ。
いつも元気で、体育の授業じゃない時でも、ジャージ姿なんだ。

「はーい、みんなおはようございます!」
みんな、大きな声で返事をしてる。
「はい、今日もみんな元気だね!いいことです。じゃあ1時間目は社会なので、社会の教科書を出してください。授業始めるよー」

ランドセルから、社会の教科書を出して、と。
まだ1時間目にはクイズは来ないかな?
って、よく見たらモモちゃん先生の背中にデカデカとクイズが貼り付けられてる!

『第1問 群馬県の県庁所在地は、前橋である。○か×か』

先生が黒板に授業内容を書きながら、自分で笑ってるのが見えちゃった。
教室のみんなもザワザワしてるよ。
背中にクイズを貼り付けるのは、誰が考えたのかな。
でもこの問題、ちょっと難しいよ~。1年生や2年生は更に難しいんじゃないかなー。

クイズはね、1年生から6年生まで、同じ問題が出るんだよ。でもどうしても高学年が有利だから、ハンデとして、3年生以下は正解したらお菓子が2倍もらえるの。
でも絶対友達と相談しちゃいけないってルールもあるの。
そりゃそうだよね、相談してたらみんな正解になっちゃうもんね。

(ウーン、前橋なんて聞いたことないけど、分かんないからマルにしとこ)

あたしはマルにしたよ。どうかな、合ってるかなぁ。

カナちゃんはどっちにしたのかな?

第2問・国語

2時間目は体育。あたしの嫌いな体育。あー、クイズは楽しいけど、体育は嫌だなぁ。体育の時間に問題出るのかな~。

「今日は、みんなで縄跳びをします」

やったー、縄跳びならあたしも出来る!男子も女子も喜んでるよ♪

「最初は1人で飛んで、次はクラスの班別にミニ縄跳びをして、最後はみんなで大縄跳び。いいかな?」

ハーイという声が沢山だよ。モモちゃん先生、ナイス!
縄跳びなら、クイズも出なさそうだね。

「じゃあ最初は1人で何回飛べるかな?にチャレンジするよ。みんな、縄を取りに来て!」

モモちゃん先生の所に、縄が全員分用意されて、みんながその縄を取りに行ったよ。
そしたら、男子の阿部史郎くんが大声上げたの。
みんなビックリして阿部くんを見たら、

「俺の縄にクイズが貼ってある!」

えーっ、モモちゃん先生ったらサプライズが好きなんだから。
モモちゃん先生を見たら、クスクス笑ってるし!
とりあえず問題、問題・・・阿部くん、見せてー。

『画数が1つの漢字は、一だけである。○か×か』

みんな考えてる…。教え合っちゃダメだから、静かだけど、でも回答シートは教室に置いて来ちゃったから、どっちを選んだか覚えておかなきゃ・・・。

(画数が一つなんて、一しかないでしょ。マル!)

「みんな、クイズはもう解けた?じゃあ体育やるよー。縄を持って、準備してね。じゃあ何回飛べるか、レッツゴー!」

あたしは自信満々。今日は全問正解間違いなし!
そう思ったら、縄跳びも沢山飛べちゃったよ!
珍しく体育の時間が楽しかったな。
モモちゃん先生、いつも縄跳びにしようよ~。

第3問・理科

3時間目と4時間目は2時間続けて家庭科なの。
1日5問だから、3問目が家庭科で登場する確率は高いわ、きっと。
急いで体操服を着替えて、家庭科室へ行かなきゃ。

今日の家庭科は、班別の調理実習。先生もモモちゃん先生じゃなくて、家庭科専門の松本千種先生。モモちゃん先生よりちょっとおばちゃん先生だけど、体も大きくて、元気な先生なんだ。家庭科じゃなくて体育が似合ってるってあたしは思うんだけどね。

「はーい、みんな体育の後で疲れてると思うけど、家庭科の調理実習、やりますよー」

松本先生が大きな声で叫んだ。
家庭科室は広いから、大きな声を出さないと分からない時があるんだよね。

「メニューは何を作るんだったかな?」

「カレーライス!」

先週は、カレーライスの作り方を勉強したんだけど、今日は実際にやってみる日なんだよ。
材料は学校で用意してくれるから、みんな同じ味のカレーライスが出来上がるはずなんだけど、どうだろう?

「アッ、クイズだ!」
「えーっ?」

今度は、男子の岡田一親くんから大きな声が上がったよ。どこにクイズがあるんだろ?

「俺の班の鍋に貼ってあった!みんな、見に来て~」

ワーッとみんなが、岡田くんの班に行ったから、あたしも慌てて岡田くんの所に行ったよ。
問題は・・・問題は・・・

『太陽は東から上り、南へ沈む。○か×か』

(こんなの簡単じゃん、バツ!)

でも回りのみんなを見たら、意外に苦戦してる。
あれ、東西南北って意外に難しいのかな・・・。
カナちゃんを見たら、もう終わったみたいで、カレーライス作りしてるよ。
あたしもカレーライス、作ろうっと。

第4問・算数

やっと給食の時間になったよ!
あたし、この小学校の給食、大好き。
前の小学校の給食は、遠くから運んできてたから、あんまり美味しくなかったの。
この小学校は、調理室があるから、いつも作り立てを食べられるんだよ。
だけど、お魚系は苦手なんだよね。
今日のメニューは何かな?

「はーい、給食だよ。今日はみんな大好きな揚げパンだよ!」

モモちゃん先生が発表してくれた。やったー!って、みんな大喜び。あたしも大好きなの。あとは、スープと牛乳とミニサラダ。
さっき家庭科でカレーライス食べたばっかりだけど、給食は別腹だなぁ。

給食委員の子が、一人分をまとめては、並んでる子に渡していく。早くあたしの番にならないかな。

「あっ!まさか給食でクイズが出るとは・・・モモちゃん先生、ビックリさせないでよ~」

揚げパンを一つ一つ皿に入れていた男子、島田源一郎くんが驚きながら言った。

「ウフフ。ビックリしたでしょ?みんな家庭科で2時間頑張ったから、給食の時は気が抜けてるんじゃないかと思って、仕込んでおいたよ」

モモちゃん先生は楽しそうだった。若いから、色々あたし達が楽しめるように、クイズを出してくれるんだ。
でもおじいちゃん先生の4年生のクラスは、どんな風にクイズを出してもらってるのかなぁ?

あっそれより、クイズ、クイズ!

『3+2+1は、5である。○か×か』

えっ、5で合ってるよね・・・?
いやいや、6だ!だから、えっと、×って書かなきゃいけないんだよね。
わー、引っ掛かりそうになっちゃったぁ。
みんなも一瞬、え?って顔してる。引っ掛かってる子、いるんじゃないかな~?

さてさてあたしは給食をカナちゃんと食べようっと。

「カナちゃーん、給食食べよ!」
「う、うん」


あれ?カナちゃん、元気ないよ。どうしたのかな?

「メイちゃん、今日の問題って難しくない?」
「そ、そうだね、引っ掛けというか、アレだよね」
「アタシ今日は全問正解賞は無理かも・・・」

カナちゃんは落ち込んでた。

「大丈夫だよ!カナちゃん。あたしだって間違えてるかもしれないし!今日全問正解賞もらえなかったら、明日また頑張ればいいじゃん!」
「そうだよね、今日だけじゃないもんね。うん、ありがとう、メイちゃん」

クイズはやっぱり楽しくなきゃね!

第5問・芸能

今日も給食美味しかった~。
でもカレーライス食べた後だったから、きっと太ったよ、あたし。
お昼休みはグランドで遊んで、少しは痩せなくちゃ!

「カナちゃん、グランドに遊びに行こー!」
「うん、メイちゃん、行こー、行こー!」

あたし達は2人で教室から駆け出した。
体育は嫌いだけど、昼休みに遊ぶジャングルジムや鉄棒は好きなんだ。
みんなが苦手な逆上がりも、スイスイ出来ちゃうよ。
体育が嫌いなあたしの、唯一の自慢なの。
今日はジャングルジムと鉄棒、どっちが空いてるかな?

「今日はジャングルジムは男の子が沢山だね~。メイちゃん、鉄棒にしようか?」
「そうだね、鉄棒に行こうよ。今日も逆上がり頑張ろうっと」

2人は鉄棒に向かって走った。

「メイちゃん、いつか逆上がりのコツ、教えてね」
「うん。簡単だよ。両手でグイッと体を引っ張って、って、やってみるね」

あたしの得意な逆上がりを、メイちゃんに教えてあげることになったよ。
一応言葉では伝えたけど、なかなか体で覚えるのは難しいんだよね。慣れるしかないんだよね~。

「あっ、パンツ見~え~た~。海東は白、平野はお洒落な水玉~♪」

何よ!誰?あたし達のパンツ見えたとか言ってるのは!
あっ、同じクラスのエッチな、吉田光男くんじゃない!
もーっ!また見られた!

「吉田ーっ!許さない、待てーっ!」

えっ、カナちゃんの方が凄い怒って、逃げる吉田くんを追いかけてる。
カナちゃん、あたしと違って体育好きだから、足も速いよ。
あーあ、吉田くん、やっぱりカナちゃんに捕まって謝らせられてるよ、ヤレヤレ。
最初からあたし達のパンツなんか見なきゃいいのに。
って、あたし達もちょっと油断してたなぁ。気を付けなくちゃ。
カナちゃんが鉄棒まで戻ってきたよ。

「吉田のスケベ、ちゃんと謝らせた!もう、アイツに何回スカートめくられたり、パンツ見られたりしたやら。今度やったら学校一怖い前田先生に言い付けるから!って、キツク言っておいたよ」
「あ、ありがとう、カナちゃん・・・」

カナちゃんの怖い一面を見ちゃったよ。
あたし、なにがあってもカナちゃんとケンカしないようにしようっと。

とか走り回ってたりしたら、あっという間に昼休み終わっちゃった。教室に戻って、5時間目の準備しなきゃ。これだけ動いたから、ダイエットになったかな?

えっと5時間目は国語、国語・・・。
でも今日の最後の問題は国語の時間に出るのかな?6時間目の算数で出るのかな?
4問目まで出ちゃったから、逆に油断できないよ~。
これまでは社会、国語、理科、算数と来たから、5問目は楽しい芸能問題!

「みんなー、昼休みは沢山遊んだかな?疲れたと思うけど、5時間目の国語、始めるよー」

モモちゃん先生が元気に教室に入ってきたよ。
いつ問題が出るか分かんないから、緊張して寝たりしないようにしなきゃ!

・・・5問目、国語の時間には出なかった・・・


モモちゃん先生、意表を突くなぁ。何事もなかったように、6時間目の算数の授業の準備してるよ。

「じゃあ今日の最後の授業、算数を始めるよ。みんな準備はいい?じゃあまずプリントを配るから、その問題を解いてね。前の人は後ろの人に回してね」

モモちゃん先生がプリントを配り始めた。
あたしは後ろの方の席だから、回ってくるのを待ってたんだけど、前の方の席から、あっ!とか聞こえてきた。もしかしたら5問目かな?

「はい、メイちゃん」
「ありがとう、カナちゃん」

やっぱりだ。5問目が、算数の問題プリントの隅っこに貼ってあったよ!
えっと、問題は・・・

『ヒット曲、「世界に一つだけの花」を歌ったグループは、EXILEである。○か×か』

芸能の問題は、各学年の担任の先生が作ることになってるの。モモちゃん先生らしい問題だな~。
でも、EXILEなんて激しいダンスしてるグループが、「世界に一つだけの花」なんて歌うかな?
音楽の時間に習ったけど、優しい気持ちになれる歌って思ったけどなー。
だから、×にしとこうっと。

あとはプリントを解かなきゃ・・・。

「はい、みんな問題は解けたかな?クイズも解けた?先生の自信作問題だよ。みんな当ててね!じゃあ本来の、算数の問題の答え合わせと説明をして、6時間目を終わりにするよ。じゃ、算数の第1問目からね。この問題は・・・」

下校

キーンコーンカーンコーン
6時間目が終わったよ。
みんな早く、クイズ委員会の部屋に行こうとしてる。
あたしは全問正解したかな、どうかな?

「みんな、慌てないの。最後の終礼しますよ~」

モモちゃん先生が明日の授業で必要なものと、お母さんやお父さんへ渡すようにってプリントを配ってる。なんだろう、保護者懇談会とかかな、嫌だな~。しばらく隠しとこうっと。

「はい、今日はここまで。終わりの挨拶してから、みんなはクイズ委員会室へ行ってください。じゃあ起立!」

サヨーナラーと大きい声で挨拶して、あたしはカナちゃんと一緒にクイズ委員会室へ向かったよ。
学年別に列が出来てる。6年生の列はここね。

「はい、次の方~」
あたしの番だ!
「お願いしまーす!」

・・・えー、1問間違えちゃったよぉ。画数が一つしかない漢字って、「一」以外に何があるの?
カナちゃん、知ってる?

「あたしもメイちゃんと同じところ間違えちゃった。なんだろうね、一体」

そう、○×クイズの時は、答えが合ってるかどうかしか教えられなくて、詳しい解説はないんだ。だから自分で調べなきゃいけないの。
でも、お菓子4つもらえたから、まあいいかな?

あたしとカナちゃんの2人でお喋りしながら帰ってたら、後ろから誰か走ってきた。
誰だろ?
あっ!なんて早業?スカートめくられちゃった!誰よ!

「吉田ーっ!」

カナちゃんがとっくに怒って、追い掛けてた!やっぱり吉田くんか、もーっ!

「2人とも、昼休みと同じパンツでした~、合格~」
「何を訳の分かんないこと言ってんのよ!明日、前田先生に言い付けるからね!」
「ご自由に~」
「もーっ!」

カナちゃんから逃げれるわけないのにね。やれやれ。

さて、明日はどんなクイズが出るのかな?
明日も楽しみにしてようっと。
おっと、明日は吉田くん対策で、ジーンズにしとこうかな?

(オシマイ)

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最後までお読み頂き、ありがとうございました。本小説は、ポプラ社の企画に賛同して、書いてみた小説です。

目安の4000文字を遥かにオーバーしてしまいましたが(笑)、童心に帰って書かせてもらいました。楽しかったです(^▽^)/






















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