【最近は、こんな感じ】 「いいね」より、自分らしさ。
上海で生活する女の子たちの日常って?
ファッション、メイク、食べもの、よく行くお店。あと、普段考えていること。悩んでいること。そして目標。
そんなあれこれを、同じ目線で聞いてみた。
@mie_shanghai
23 lott
ファッションにすごく詳しくて、
モデルさんみたいだったから、
最新おしゃれスポットかと思ったら、
呼び出されたのは
下町風情が残る南昌路の茶館だった。
lottさんって、どんな人?
――lottさんはインフルエンサーだと思っていました。会社員とのこと。
lott はい。コスメなどの美容系商品のコンサルをしています。海外ブランドの商品が中国市場に受け入れられるかを調べる仕事。データを出して、そこから考察したことをまとめる毎日です。でも、いろんな発見があったり意外なチャンスが見つかったり。頭を使う仕事って楽しいと思います。
――専門家視点で、上海では今どんなメイクやファッションが流行っているのでしょう。
lott ドーパミンコーデですね。自分の気持ちを表現できるようなスタイルです。コロナ後もまだストレスを抱えていて、思うような生活ができていない人も多い。だから、メイクや服で自分の気持ちを上げるというか。Y2K(2000年代ファッション)も若い子はみんな好き。会社内でもそれ系の服の子がいっぱいいます。
――lottさんの今日のコーデもすごくおしゃれ。
lott 今日は雨だったので大人っぽくしてみました。晴れだとかわいい系にしています。服と帽子は『kotohayokozawa』。一見シンプルだけど、よく見るとおもしろいんですよ。アクセサリーは、今日つけてるの全部『Soierie』。デザインがユニークですよね。靴は『TOKYO BOPPER』です。
――コスメは、特に注目しているブランドはありますか?
lott 『INTO YOU』が使いやすいなと思います。「唇泥」(泥質感のリップ)という概念を作ったことがすごい。潤うし品質もいいと思います。今日も使っています。
“おばあちゃんがすごい人”
――ブランドはどんなふうに選ぶんですか? 何を参考にしているんですか?
lott ずっと好きなのがモデルの中村里砂さんです。キラキラしていてお人形みたい。彼女が出ている雑誌『LARME』はいちばん影響を受けたと思います。あとは、ノギザカ……、白石麻衣と斎藤飛鳥も好き。『LARME』に出ているからです(笑)。でも私、日本語ができるわけではなくて。『LARME』だけずっと好きだったので、アメリカに留学していたときも送ってもらっていました。
――アメリカ留学していたんですね。
lott ニューオーリンズで金融について勉強していました。金融を学ぶならアメリカがいちばんだと思ったからです。ジャズバーがたくさんある街。あと、アメリカは本物のヴィンテージの古着屋さんがありますよね。フリマも楽しい。あー、また海外に行きたいな。もともとおばあちゃんとお母さんが海外志向なんです。
――おばあちゃんが。
lott おばあちゃん、すごいんですよ。靴工場の工場長だったんです。母も海外でビジネス展開していて、最近はちょいちょいメキシコに行っています。目的? ビジネスチャンス探しとのこと。だから今、私は父との二人暮らし中。父がご飯作ってくれます(笑)。
――温州の人って、海外でのビジネスで成功している人が多いですよね。
lott 特にイタリアですよね。なので、「イタリアの日本料理は温州の味」って言われたりする。温州人が経営しているからです。一家で何代もイタリアに関わっている人も多い。うちも、親戚がみんな海外ビジネスの話題で盛り上がれるので、すごく仲がよくて。一族全員78人のグループチャットもあります。毎年のように宴会もある。人数が多いのでレストランは貸切です。その中心にいるのがうちのおばあちゃん(笑)。
――すごい……。
lott 私は上海育ちなんですが、家族を見ていると温州人は根っからの商人なんだなと思います。
――では、lottさんはお休みの日は何をしていますか?
lott 友達とお茶、おしゃべりです。最近、友達の影響でK-POPにハマってしまって。推しはSEVENTEENです。メンバーがみんなすごく努力家なので、私も仕事頑張ろうって思えるし、エネルギーをもらえる。韓国にライブにも行きたいなと思っています。あとは、小紅書でインフルエンサーが勧めているスイーツのお店に行ったり。
“自分らしくシンプルに”
――スイーツ。
lott 最近は『ConnieHe』とか。あの、プリンアラモードのお店。でもあんまりおいしくなかった(笑)。上海はお店の入れ替わりが早いので、リピートしようと思うともう閉まっていたりする。だから、常に試しで食べ歩いている感じです。
――lottさんもインフルエンサーとして活躍できそうですけど。
lott 以前、少しだけモデルの仕事をしていました。でも、演技しないといけない。私は、自分が好きな服を着るだけで楽しいので。いいねにこだわらず、自分が好きなことをしていたほうがいいと思っています。あとは、最近はみんな好みが細分化していますよね。小衆(マイナー/ニッチ)なほうが主流。でも、フォロワーをたくさん集めるなら大衆化するしかない。あと、中国はインスタもTiktokも小紅書もユーザーがバラバラだし、遊び方も人それぞれになってきていると思います。
――lottさんは以前、ロリータファッションを着ていたと聞きました。
lott その分野も進化がすごくて。写真を撮るために衣装やメイクをすごく作り込む感じ。私はだんだん、自分を隠すようなファッションなのかもと思い始めてしまった。今は、自分らしくてシンプルな服が好きです。
――では、今後やってみたいことはありますか?
lott やっぱり海外に行きたいです。コロナ以降まだ行けていないので。まずはライブのために韓国ですね。あとはタイ、日本にも行きたい。ヨーロッパもおもしろいですよね。ヴィンテージのマーケットとか。でも、日本の古着屋さんも帽子とか小物の雰囲気のいいのがたくさんある。やっぱり、まずは古着探しに下北沢に行こうかな。
(取材日:2023年6月17日 撮影地:南昌路)
<彼女のお勧め>
『Kebabs on the Grill』(上海市黄浦区黄陂南路227号中区広場103-1単元)
☆最近行ったインド料理店。オーナーがインド人で、本場の味っていう気がした。
『堂屋糖水店』(上海市長寧区愚園路1409号)
☆広東系のスイーツ屋さん。「焦糖烏龍奶茶氷(キャラメル烏龍ミルクティー)」がおいしかった。店構えもかわいい。
『tea’s stone』(上海市黄浦区黄陂南路380号新天地新里1階)
☆お茶もオリジナルのスイーツもとてもおいしい。普段お酒は飲まないので、こういうお店が好み。
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萩原晶子
フリーライター。上海にて2007年頃よりガイドブック、ファッション誌、機内誌、ウェブなどの記事を手がけている。
カルチャー誌『Ketchup.』(上海と東京で販売)など。
ins:@hagiwara_akiko_
微博:Akiko06
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阿部ちづる
2006年にフォトグラファーとして独立。ファッション誌、ビューティー誌、週刊誌、写真誌等のグラビア、ポートレート写真を撮影。アイドルグループやグラビアモデルからのアーティスト写真撮影で指名されることも多く、女の子の新鮮な表情を切り取る。
佐々木希『ささきき』(集英社)、武田玲奈『Rena』(集英社)ほか多数。
ins:@chizuru0821
https://lov-able.com/photographer/chizuru-abe