#随想016 中年の星

年を取ったなと感じた一番初めの瞬間は、高校球児がみんな年下になった時。自分が大人になったのだと言えば聞こえはいいが、もう子供ではいられなくなってしまう悲しみをひしひしと感じたものだ。

好きな漫画のキャラクターの年齢を追い越し、活躍する芸能人が自分より若い人ばかりになり、自分はたいして成長していないのに、年齢ばかり増えていく焦燥感。私の場合は結婚も出産もせずに生きてきたので、何も成し遂げていないまま不惑を超えた時の悲哀は凄まじかった。

一昨年のM-1で急に私の前に現れた錦鯉。おじさんがとてつもなくくだらない漫才をしていた。特に爆笑したわけでもなかったが、なんとなく気になり、その後ちょくちょくお笑い番組に出てくる錦鯉を見ては、おじさんなのに相変わらずくだらないことをしているなあと思い、徐々に錦鯉への応援の気持ちが芽生えていった。

まさのりさんの元気な挨拶と派手な動きにべたなギャグ、そして隆さんの鋭い突込み。どんどん目が離せなくなっていく。ついには、まさのりさんが「こーんにーちわー!」と発声するだけで笑いが止まらなくなっていった。

昨年のM-1で見事優勝すると、その後の勢いはとどまることを知らず、子供から大人までみんなが好きな芸人に成長している。攻撃性のないお笑いやお二人の仲の良さと性格の良さが、時代にフィットしているのだろう。

まさのりさんは私よりも年上なのに、新人としてはつらつと頑張っていて、たまに見せる中年の顔がスパイスとなり更なる笑いが巻き起こる。

夢を追いかけるというほど大げさなことではないが、私ももう少し頑張ってみようかなという気持ちになる。前向きにしてもらえる存在はとても愛おしい。これからも錦鯉を応援し、沢山見て笑っていたいなと思う。

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