台風で浸水した時の泥から210ベクレル/kgのセシウムが見つかった=神奈川県川崎市=福島原発事故の汚染土の全国ばらまきに反対します。
台風被害の泥を測ったら210ベクレル
2019年の台風19号、雨台風といわれた台風は全国のあちこちに大きな被害をもたらしました。
川崎市 中原区では、内水氾濫がおき、多くの家が浸水しました。水はすぐにひいたものの泥が残りました。その泥の放射能を測ったら、セシウム134が12.1、セシウム137は197.7、合計で209.8(単位はベクレル/kg)ありました。半減期約2年のセシウム134が検出されたことで、この放射能は福島原発事故由来であることがわかります。ちなみにセシウム137の半減期は約30年です。(*1)測定は2020年2月。タイトル画像は測定結果。
雪かきならぬ泥かき
台風で「浸水」というより「浸泥」?した時のメカニズムが、以下↓の日経XTECHの記事に書かれています。(有料記事なので一部しか読めませんが)
以下記事から引用します
「台風19号による豪雨で多摩川の水位が上昇して、河川の水が下水道管に逆流。下水を押し戻すように中心街まで河川からの泥水を運んだ。(中略)幹線となる下水道管から毛細血管のように延びた側溝にまで泥水が入り込んだ結果、街の各所に泥の池が出現した」
記事には「泥の池が出現した」とありますが、「泥の道が出現した」というのがふさわしかったと思います。道路はすべて泥でおおわれていました。生まれて初めて「雪かき」ならぬ「泥かき」をしました。その泥をどうしたかというと、基本的には水で排水管に流しました。排水管からあふれた泥をまた元へもどしたということです。一部は袋にいれて、ごみ収集に出した人もいました。広い道路では、どこかの空港?の雪かき隊が泥かきをしていったのをみました。南武線沿線道路は半日以上泥のために通行できませんでした。
集められた泥はしばらくの間、多摩川の河原に文字通り山のように積まれて雨ざらしになっていました。あの泥が放射性廃棄物として扱うべきもので、乾燥したものが風に乗って運ばれ、体内に取り込まれたら、内部被ばくの影響を心配をしなければならないレベルのものだとは、当時はまったく考えていませんでした。
令和元年台風第19号による被害等 令和元年11月22日国土交通省の審議会資料
今も泥がたまっていたところの土からは高い数値を検出
この泥を翌年2月に放射能を測定した結果は、最初に書いたようにセシウム合計で209.8ベクレル/kgで、思っていたより高くて驚きました。(タイトル画像)
その後も毎年、同じ庭の土を測っていますが、この泥がたまっていたと思われるところは、他より高い数字がでています。2024年12月の測定データでは、この時の泥が溜まっていたと思われるところの土がセシウム134が4、セシウム137が99で合計103ベクレル/kgでした。違うところからとった土はセシウム137が52.6ベクレル/kg(134は検出されず)で約半分の数字になっています。
福島原発事故8ヶ月後は500ベクレル
福島原発事故のあった2011年の11月、同じ庭の柿の木の根元の土(浅いところ)を測ったところ、セシウム134が210、137が290、合計500ベクレル/kgでした。2012年12月には同じ庭の土で、セシウム134が56、137が110、合計で166/kgが検出されました。2013年にはセシウム134が40、137が130で合計170ベクレル/kg、2014年にはセシウム134が12、137が54で合計60ベクレル/kgにまで減ってきていました。
2020年で210ベクレル/kgというのは、かなり放射能濃度の高い泥が排水管にたまっていて、それが地上に出てきたものだと考えられます。
神奈川県川崎市でも、これくらいのレベルの放射能の泥が下水の排水管に存在しているということが、台風の内水氾濫で明らかになりました。福島原発事故で広範囲に汚染された東北、関東地方では、放射能の高い泥が今も下水の排水管などにたまっていて、今後、台風などの水害で地上に出てくる危険があるということになります。
8000ベクレル以下のものを全国で再利用?!
国は福島原発事故で汚染された大地を除染して出てきた高い放射能を含む大量の汚染土を全国で「再利用」しようとしています。覆土をして道路などの公共事業に使う計画です。今後、台風や地震、津波などによる浸水、土砂崩れ、液状化などで、汚染土が地上に出てくる危険があります。100ベクレル/kgを超えるものは放射性廃棄物として扱うべし!という従来からの基準がありながら、今回の再利用計画では、なんと8000ベクレル/kg以下のものなら再利できるようにしようとしています。
もし、みなさんの地元の自治体が、8000ベクレル/kg以下の高濃度の汚染土の再利用を受け入れたと仮定しましょう。今後台風や地震などの災害で、高濃度の放射能汚染土が地上に出てきた時、地元の自治体は迅速に放射能の測定や汚染した土壌の管理などができるでしょうか?そもそもなぜそういうリスクのある汚染土を受け入れないといけないのでしょうか。
まさに今パブリックコメントを募集中です。締め切りは2月16日0時、実質的には2月15日中です。ぜひ反対の意見を送ってください。
汚染土再利用反対の署名も集めています。
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*1 半減期とは
放射線を出すことでエネルギー的に安定な状態となった物質は放射線を出しません。時間がたてば放射性物質の量が減り、放射能も弱まります。こうして放射能が弱まり、はじめの半分になるまでの時間を(物理学的)半減期と呼びます。
半減期分の時間が経過するたびに放射能が半分となるため、半減期の2倍の時間が経過すると、最初の状態の4分の1に減ることになります。
半減期は放射性物質の種類によって異なります。例えばヨウ素131の半減期は約8日、セシウム134の半減期は約2年、セシウム137の半減期は約30年です。
放射線の基礎知識 11ページよりhttps://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/pdf_h29/2017tk1s01.pdf
*2 測定したのは
2011年〜2014年 有害化学物質削減ネットワーク
2020年〜2024年 新宿代々木市民測定所