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日本は使用済MOX燃料を再・再処理、イギリスはプルトニウムを固化して、地中処分
関電のロードマップが1年経たずに破綻
関電が、23年10月に発表した「使用済燃料ロードマップ」は、24年9月に破綻、関電の森望社長は杉本福井県知事と面会し「今年度内に実効性のある計画を提示できなければ、美浜3号、高浜1、2号の運転は実施しない」と約束しました。詳しくは以下↓のnoteを。
25年2月の県議会で新ロードマップ発表
この計画破綻に対して9月9日の福井県議会では保守系の議員たちからも「次のロードマップが示せるまで老朽原発止めろ」、「これが最後の通告」と関電への厳しい批判の声が相次ぎました。25年2月の福井県議会に、関電は新しいロードマップを示さないと老朽原発を止めることになります。
経産相がフランスへ持ち出す使用済核燃料の量を増やす提案
1月21日に、経産相が福井県知事に会い、使用済MOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料の県内原発からの搬出量が増える可能性を示唆したことが報道されました。
この経産相の提案を受けて、23日に福井県知事は「それもありかな」みたいなこと 言っています。
「毎年130トンぐらい新しく使用済み燃料が出てくる中で、それをどう持ち出すのか。全体像で分かればいいわけなので、新しい方式が編み出されるなら入れればいいし、積み増しも十分ある」
経産相は使用済MOX燃料の搬出量を増やすことを提案しているのに、福井県知事の話ではなぜか年間130トンくらい増えるウランの使用済核燃料をどうするかという全体像の問題になっています。増やすのは使用済MOX燃料なのか、普通の使用済核燃料なのかわかりません。しかもこの間関電が一切表に出てこないところが不気味です。
MOX燃料の再・再処理は可能なのか?
23年10月から11月にかけて、毎日新聞デジタルで、MOX燃料の再・再処理について、連載記事が掲載されました。有料記事なので一部だけ引用します。
引用:今回、フランスで計画されているのは、使用済みMOX燃料の再処理の実証研究だ。
関電の原発からフランスへ搬出される使用済み核燃料は200トン。そのうち10トンがプルサーマル発電で発生した使用済みMOX燃料で、残り190トンは使用済みウラン燃料という。(中略)関電によると、この1対19の割合は、再処理を請け負うフランス・オラノ社が指定してきたという。この割合は、使用済みMOX燃料の扱いがいかに難しいかを如実に表している。
引用:再利用に向けては安全管理や研究開発で多額の資金が必要になるが、フランス国内では資金不足も指摘されているという。真下さんは「大きな資金を出してくれる日本との試験研究は、再処理を担うフランスを手助けする側面がある。実現性の薄いマルチサイクルに、同じ問題を抱えている日本が便乗している構図だ」と指摘する。
引用:使用済みMOX燃料の再処理は、安全上の特別の配慮が必要になり、手間とコストがかかる。それなのに、分離されるプルトニウムは質に問題があり、わざわざ別のところ(使用済みウラン燃料)から質の良いプルトニウムを持ってきて、薄めないと軽水炉では使えない。
岩井さんは「使用済みMOX燃料を再処理して、再利用する意味はほとんどない。『使用済みMOX燃料は核のゴミではありませんよ』と言い訳をするための利用政策ではないか」と指摘する。
無理を承知、メチャクチャ高くつく実証実験をする理由
上記↑3つの記事に書かれているように、MOX燃料の再・再処理はウラン燃料の再処理以上に危険で、難しく、お金もたくさんかかり、できたとしてもあまり意味がない、どうしようもないものです。
なぜこんなどうしようもないフランスでのMOX燃料再・再処理の量をもっと増やそうとしているのでしょうか?
ロードマップの破綻の原因は、六ヶ所再処理工場がいつまでたっても完工できず、使用済核燃料を六ヶ所に運び込めないからです。その分をフランスへの輸送量を増やすことでカバーしようとしているようです。関電はとにかく使用済核燃料を県外に持ち出す計画を福井県に示すことしか考えていません。「MOX再・再処理が可能なのか」とか「取り出したプルトのニウムはどうするのか」などの問題はすべて先送りしています。
MOX再・再処理の費用は電気代から
使用済MOX燃料再処理実証研究に伴う 当社の使用済燃料の搬出等に係る福井県への報告について
2023年6月12日 関西電力株式会社
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230612_1j.pdf
これ↑は関電社長が2023年6月に、わずか5%の使用済核燃料と使用済MOX燃料をフランスに運ぶことで使用済核燃料搬出の福井県との「約束は果たされた」と発表した時の資料です。
3ページ(タイトル画像)を読むと
○ 電力11社が実施主体となり、日本原燃および日本原子力研究開発機構に委託するとともに、 再処理実務を行う仏国オラノ社に再委託する
○使用済燃料再処理機構は再処理等拠出金法に基づき、オラノ社へ再処理等を委託する
○研究に必要な約200トンの使用済燃料を関西電力より搬出する
とあります。
再処理に必要なお金は、使用済燃料再処理・廃炉推進機構 (再処理機構)というところから再処理工場に支払われています。原発の運転状況に従って決められた料金が、再処理拠出金として電力会社から再処理機構に支払われています。つまりは私たちの電気代です。
そもそも再処理にはお金がかかります。MOX燃料はウラン燃料の10倍高くなっています。(*1)
その上、使用済MOX燃料を再・再処理して、取り出したプルトニウムをまたMOX燃料に作り替えたら、どれくらい高価な燃料ができあがるのでしょうか。
この資料を読む限り、今回のフランスでのMOX燃料の再・再処理実証実験にかかる費用は関電だけが負担するのではないようです。「電事連としてフランスオラノ社に再委託」、「使用済燃料再処理機構は再処理等拠出金法に基づき、オラノ社へ再処理等を委託」とありますから、電気事業者全体で負担し、再処理拠出金から出されるようです。今拠出している再処理拠出金単価では当然足りなくなることが予想されます。表向きは「原発は安い」とか言って原発を推進しながら、今後陰でこっそり再処理拠出金単価を値上げしてくるでしょう。
できもしない、役にもたたない超危険な再・再処理はやめて
関電はフランスへ使用済MOX燃料や使用済核燃料を送って、できもしない、たとえできてもたいして役にも立たない再・再処理にばく大なお金をかけるのはやめてください。使用済核燃料の持っていく場所がないなら、原発を止めるべきです。
イギリスではプルトニウムを固形化し地中処分
イギリスがプルトニウムを「資産」ではなく、固形化し、地中に処分するというニュースが流れてきました。
引用:1月24日、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省は、保有するプルトニウムについて、地層処分を前提に「固定化」を進めると発表。プルトニウムが核兵器に転用されないよう、セラミックにして閉じ込める方法などが検討されている。英原子力廃止措置機関(NDA)が固定化の研究開発を続け、10年内に、核物質の処理などに向けて新たな施設を建設する方針だという。
英政府の担当高官は声明で「期限なく長期保管を続けることは、将来世代に安全保障リスクと核拡散への注意の負担を残すことになる」と説明。「手の届かないところに置き、長期的な安全保障上の負担を軽減し、地層処分に適した形状にする」とした。
やっぱり関電はフランスへの搬出量を倍増
2月11日、NHKの朝のニュースで「関西電力 使用済み核燃料 フランスへの搬出量を倍増へ」というニュースが流れました。関電にしたらやっぱりこれしかないもんね。老朽原発をうごかすために、やれるかどうかもわからない、危険で、ものすごく高くつく再・再処理にしがみつくしかない関電。しかも取り出したプルトニウムはイギリスにしたらただのごみだって。これで「原発安い」なんて平気でうそぶく、原子力ムラ人はほんとうに信じられないです
核燃料サイクルは破綻しています。脱原発しかない!!
*1 MOX燃料と輸入ウラン燃料との比較はこちら↓を。
*2 関電は福井県との「約束」を破り続けてきたのに、成果?だけはあげてきた黒歴史はこちら↓