関西電力は日本最古の原発、高浜1号を今すぐ止めて!==11人死傷、美浜3号事故を振り返る==
いままで経験のない地震
1月1日、能登半島で大きな地震が起きました。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、今もまだ「いつもどおり」の暮らしを取り戻せていない皆様に、お見舞い申し上げます。
現地周辺では3年以上群発地震が起きていました。おととし6月にはマグニチュード5.2、最大震度6弱の地震が起きましたが、今回はこれを上回る大地震が起きました。これで地震活動が収まるのか、今後どうなっていくのか専門家にもわからないようです。
引用「類を見ない現象が起きている。地震学の経験的モデルに当てはまらず、最悪のシナリオが去ったかは誰も分からない。地震活動が今後、佐渡島西方沖の海底活断層に及び、断層が破壊された場合、津波を伴う地震になりうる」
日本最古の高浜1号が蒸気漏れ
そんな中、関西電力は1月18日に運転開始47年を超える老朽美浜3号を起動しました。今回の地震で従来の原発事故の避難計画はまったく役にたたないことがわかったので、稼働中の原発はすべて停止してほしいと願っている人が多いと思うのですが、関電は地震の後わずか18日で、新しく原発を動かしたのです。
そして、1月22日には日本最古の原発である高浜1号が蒸気漏れを起こしました。当然、原発を止めると思ったのですが、なんと関電は出力を40%に下げて運転を継続していました。原発を動かしながら故障箇所や原因を特定し、蒸気漏れを起こした配管を交換、出力を100%にもどそうとしています。(2月6日関電発表*3)これは本当に危険なことです。関電は美浜3号事故の反省から、関電は原発運転中に作業員を原発の中には入れないことにしたはずでした。
11人死傷の美浜3号事故
2004年8月9日、11人もの死傷者を出した美浜3号事故から今年で20年になります。
関電は美浜3号の運転開始以来28年間、検査が一度もおこなわれていない配管があることに気づきました。しかし稼働率を重視した関電はすぐに美浜3号を停止せず、次の定検で当該箇所を検査することにしました。あと数日で定検入りという日に、摩耗で薄くなっていた配管がついに破断、高温高圧の蒸気が噴き出しました。しかも関電は、定検期間を短くするため、運転中から準備作業のために原発内に多くの作業員を入れていました。そのために5人の方が亡くなり、6人が重傷を負う大事故となってしまったのです。
美浜発電所3号機事故についてhttps://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/m3jiko/about.html
安全性より経済性
美浜3号の事故のあと、関電は毎年8月9日を「安全の誓いの日」と定めて石碑もつくり、「安全最優先」の誓いをしました。定検期間を短くするために稼働中から作業員を原発内に入れることもやめていたはずなのです。
ところが今回、高浜1号の蒸気漏れでの対応は、この「安全最優先」の誓いとは真逆のものになっています。関電の姿勢は「原発再稼働最優先」、「安全性より経済性」です。
定検期間を13ヶ月から15ヶ月に
また、関電は、現在「13ヶ月まで」となっている原発の運転期間を「15ヶ月まで」に延長する検討を行っています。
ATENAと規制委員会で秘密会議?!
昨年12月26日に、ランチタイムの女たちが以下の質問を関電に出し、1月25日、回答がきました。*1
(質問)関電は、現在「13ヶ月まで」となっている原発の運転期間を「15ヶ月まで」に延長する検討を行っているとのことですが、いつどのような検討をしてきたのか。規制委員会とどのような議論をしてきたのかも具体的に教えてください。また公開されている資料があるなら教えてください。
(回答) 安全を大前提として既設の原子力発電を最大限活用する方針としており、その一環として、運転サイクルの長期化も検討しているところです。現在、ATENA(原子力エネルギー協議会)を中心として、現在の原子炉設置変更許可の範囲内で、柔軟な運転サイクルの導入に向け、原子力規制庁とも適宜安全性等に関する議論を行っているところであり、現在、公開されている資料はありません。
60年を超える運転のことなどで、規制委員会と議論していたあのATENAの名前がここで出てきて驚きました。規制委員会と議論を行なっているのに「公開できる資料はない」との回答。「秘密会議」が行われているということでしょうか。
新増設、リプレースも検討中という関電社長
1月29日、福井県美浜町で美浜3号事故を契機に定期的に行われている懇談会で、関電の森望社長は原発のリプレース(建て替え)や新増設について、「検討を始めなければならない時期に来ていると思っている」と話したとのことです。
関電は福島原発事故の前、美浜1号を廃炉にしたあとに、リプレースをして新しい原発をつくろうと調査を進めていました。その推進役は高浜町元助役から1億円以上の金品を受領したあの豊松副社長(当時)でした。福島原発事故や金品受領などのスキャンダルによりリプレースをすすめられなくなっていた関電が、7基の原発をすべて稼働させ、次なる段階へ向けて動き出してきたようです。
珠洲原発を作ろうとしていた関電
今回の地震の震源地のすぐ隣の地区、珠洲市高屋に関電は原発をつくろうと不正な土地買収などを行なっていました。
もし珠洲原発が完成して稼働していたら、福島原発事故の再来となり、多額の賠償金と2度と動かせない壊れた原発という不良債権を抱えて、関電は会社存続の危機に陥っていたと思います。今関電が過去最高益などと浮かれていられるのは、珠洲原発建設を阻止してくれた能登のみなさんのおかげです。
また、北陸電力の志賀原発2号機についても、建設開始から15年間、原発が動いても動かなくても関電は電気代を支払っていました。電気料金値上げの審議会でこのことが問題になると関電は「志賀原発は自社電源同様」と主張してきました。
今回の震災の復興を支援し、若狭の原発を止めることこそが関電から能登のみなさんへの恩返し!です
*1 「毎月26日のランチタイムに関電前に集まる女たち」と「日本消費者連盟関西グループ」が昨年12月26日に質問し、今年1月25日に返ってきた回答。
*2 タイトル図は関電の原発周辺の主な活断層ということで関電がつくった地図です。今回の能登地震では20km離れた活断層とは認定されていなかった志賀原発近くの断層が連動したといわれています。
『越前若狭のふれあい』特別号No.14 2012.4.17 https://www.kepco.co.jp/corporate/profile/community/wakasa/ew/sp/tanpou_s_201204_5.html
*3 蒸気漏れの原因は、2002年の定検のときに設置した「架台梁」の置き場所のミス。熱さで5.5mm伸びるのに、隙間を5mmにしてしまったことだそうです。
20年以上、運転開始40年をこえる運転のための検査の時もだれも気づかなかった。そしてこんな検査、調査、交換を原発を稼働したまま行った関電。見つけないといけないところを見落としているのではないか。作業員の安全は守られているのか。日本最古のおんぼろ原発、心配です。
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2024/pdf/20240206_2j.pdf
*4 関電の珠洲原発立地工作については、生々しい証言が載っています。
朝日デジタル「原発と関電マネー 立地『工作班』の証言」
白木琢歩、室矢英樹
2020年8月8日〜12日
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