
東京のベンチ。
ベンチってすごい。
そこにあるだけで、ひとたびカフェのような力を発揮する。
珈琲片手に、パン片手に腰掛ければ、
自分だけのカフェが完成だ。ようこそ。
私は好きなベンチが3つあった。
一つは、代々木公園の噴水のベンチ(今は改修工事中で無くなってしまった)
私のアイスを狙っているカラスと格闘しながら、噴水を眺めてぼぉーっと過ごす。
喉が渇くと、自販機まで歩いて行き、夏はジョージアのアイスカフェオレ、冬はホットコーヒーを買い、またぼぉーっと過ごす。かなり至福の時間だ。
2つ目は、新宿ミロードの7階のベンチ。ここから南口の街並みを、またまたぼーっと見下ろすのが好きだった。
ここに座ると、小説「君たちはどう生きるか」のコペルくんの気分になる。
「人間って、まあ、水の分子みたいなものだよねぇ」
そんなセンスのある考えには至らなかったものの、
このビルの下に何十万もの人々が生きていて、それぞれの意思をもって生活しているんだなぁ。と思うと、なんとも言えない不思議な気分になった。
と、同時に、いま隣にいてくれているキミとの出会いって奇跡なんだなぁ。って思ったりもした。
そんなミロードも、2025年3月で閉館してしまう。
40年の歴史だったらしい。
そして、3つ目は、渋谷東急の屋上のベンチ(ここも取り壊しで無くなってしまった)。
ここからは、現在の気温が分かる掲示板が見える。夏の終わりの日の入り前、薄暗くなりつつある空を見上げながら、夜はだいぶ涼しくなってきたなぁ。なんて思ったりする。
ここに座ると、決まって聴きたくなる歌がある。
「東京中の電気を消して夜空を見上げてぇな」から始まる、エレファントカシマシの友達がいるのさ である。
渋谷という、都会のど真ん中のような街の、かの有名な東急の屋上。
そんな、田舎ものが想いを馳せるには絶好の場所で聴くエレカシのそれは、私の心に深く深く刻まれていった。
東京中の電気を消して夜空を見上げたら、星綺麗に見えるかな。
ここで一句。
思い出の、ベンチは3つあるけれど、
今や全てが、星の屑。