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シャドー・ハウスと戦時日本

この作品はすごい

 この作品は、一期からリアルタイムで追っていた。現在オンゴウイングの二期も、現在飽きずに継続して追っている。
 作品の世界観がとてもいい。異世界ファンタジーと取れる一方で、なんだかリアルに感じられる。

生人形の歌。

 「さあ、働きましょう。~」で始まる歌がなにより印象的である。ある程度作品を継続して観ていると、この生人形の正体もわかってくるのだが、まったく洗脳行為に等しい。
 『月月火水木金金』という軍歌がある。帝国海軍の丈夫のあいだで歌われていたものらしい。
 
 『お掃除の歌』と『月月火水木金金』とはまったくパラレル構造を成している。

『お掃除の歌』
拭けば明日はすすが積もる
すすが積もればまた拭ける
さあ働きましょう
お役に経ちましょう
余計なことは考えない
シャドー家のために
さあ働きましょう
お役に経ちましょう
余計なことは考えない
シャドー家のために

 この非常に覚えやすく口ずさみやすいリリックが特徴的。えみりこもケイトの下に帰った後口ずさんでいる。拭いても吹いても煤が積もり続けることをポジティブにとらえていることがわかる。
 『月月火水木金金』の歌詞も見てみれば(youtubeに載っているので確認してほしい)、2番の

赤い太陽に 流れる 汗を
拭いてにっこり 大砲 手入れ

(拭いてが"汗"と"大砲"の2つに掛かっている)も、同様に終わりのない苦労の賛歌である。4番の

ゆれる釣床 今宵の夢は
明日の戦さの この腕試し

 となっていて、士気の高さを伺わせる。

 シャドー家の生人形と帝国海兵の精神構造には、どちらも根底に支配者や指導者が在る、という前提をしてこの両歌は成り立っている。すなわち海兵には"天皇"その方であり、生人形には"おじいさま"である。そこから、海兵では上司や家族、また生人形は直属の"お陰さま"である。
 しかし、当然この前提は誤謬じみている。海兵には家族が死に際に浮かぶことのほうが大半であろうし、生人形は直属の"お陰さま"こそその根底を支える正体であろう。(または、生人形の"真の"生みの親かもしれないが、これに関しては完全に忘却してしまっているかもしれない)
 
 この誤謬だらけの前提を"在る"と錯覚させるための壮絶なプロパガンダこそ、『お掃除の歌』であり、『月火水木金金』なのだ。

 『シャドー・ハウス』はそういう意味で戦中日本とパラレルな構造を成していると言えるかもしれない。

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