ウインナー珈琲を、どうぞ。
素敵な記事に出会いました。
ウインナーコーヒーの、甘さと苦さみたいに、ひとつのカップにそれぞれの経験を見事におさめられたお話。
詩旅つむぎさんの作品をご紹介します。
いつもの喫茶店で頼むのは、決まってブレンド。
シンプルで、一番安いから。
シャイで、一生懸命で、悩みが満載の新入社員のころ。
ウインナーコーヒーを頼むたびに、思い出す、あの苦くて、甘くて、温かい記憶。
小説を読んでいるかのような、テレビドラマを観ているかのような、リズム感の良さに浸る。明朝体で綴られた文章と、適度な余白に、安心感と心地のよさを覚える。
ほんのちょっと自分を甘やかしたい日、
いつもの喫茶店でウインナーコーヒーを頼んでみよう。こちらの小説をお供して。
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つむぎさんの記事を読んで、
私もウインナーコーヒーをすすりながら、新卒時代のことを思い出した。
よろしければ、私の話にもお付き合いください。
22歳。
入社した会社で、希望の部署に配属されなかった。
人生のプランにはない、「不動産売買営業」という、職種に就くことになった。
右も左もわからない、
そのうえ想像もしていなかった仕事。
小生意気な娘は、とにかくやる気がでない。
一方で、負けず嫌いで頑固な性格が、
「できないなんて、嫌だ」と身を乗り出す。
気がつけば、120%フルで、仕事に没頭していた。
会社の思うツボである。
同じ部署の先輩は、小柄でふんわりとした見た目に反して、情熱的でパワフルに仕事をこなす女性。9才歳下の新入社員の勢いを超えて、150%で仕事をするような暑苦しい人だった。
とにかく、、暑苦しかった。
ある日、私が顧客のアポイントで戻りが遅くなったとき。
事務所にはまだ明かりが灯いていて、先輩が机で居眠りをしていた。
「先輩、起きてくださーい。まだ残ってるんでるか?」
「お、おかえり!どうやった?」
「もちろん、先輩のおかげで上手くいきましたよ!」
「おめでとう!じゃあ、今から飲みに行こっか!」
先輩が、眠たい目をこすりながら、私の帰りを待っていてくれたこと。気づいていたけれど、なんだか照れ臭くて、うまく言えなくて。
近所の居酒屋さんでしっぽり飲んだり、ちょっと歩いたところにある中華料理屋さんで天津飯とビールで乾杯したり。
「今回だけやからな!」といいながら、いつも多めに払ってくれる先輩は女前で、かっこよかった。
そんな時間が最高で、大好きだった。
私が入社して、1年後。
仕事ができる先輩は、元職場の方に引き抜かれて、新しく設立した会社に転職をされた。先輩がいなくなるのが、とんでもなく、寂しくて、泣きながら仕事をしたのを覚えている。
転職されても、ちょくちょく会って、仕事やたわいも無い話を、夜な夜なさせてもらった。先輩なりに、気にかけ続けてくださったこと、嬉しくて有り難くて。
今となっては、私はお酒をぐびぐびと飲むような人間ではないのだが、
居酒屋のカウンターで、季節ものの肴とビールでちびちびと晩酌をしていると、あの時のあの時間を思い出す。
私は若くて、未熟で。
甘え方も頼り方も知らなくて。
先輩の背中から、ぜんぶ学ばせてもらった。
泡みたいにどこかに消えていってしまったけれど、ちゃんと余韻を残す、そういう女性だった。
きっと、先輩は今日も、どこかで、一杯ひっかけながら。
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詩旅つむぎさん、美味しくてあたたかい記事をありがとうございました^ω^☕️✨
また更新楽しみにしていますね♪