偲ぶ
親を見送るのとはまた違い、子の介護や看取りをする方もおられる。
難病、外傷、自死の失敗など様々だ。何年たっても受け容れることができないという親御さんに、そんなことはとうていできないままでも仕方がないとしか、伝えることができない。
再生医療の未来に期待を寄せる家族は多い。ゆえに、1日でも長くと希望にすがる。一方で、現段階では元通りにはならないことも多い。
私自身、同じ苦しみに耐えられるか、まったく自信がない。
若くして病に倒れたAさん。お母さまと新妻さんが、なんというか、日々争いながらも懸命に介護をされていた。訪問に入るスタッフに、母は嫁の、嫁は義母を責めて愚痴を言う構図だ。はけ口がなかったのだろう。それを受け止めるのも私たちの役割だ。
いよいよとなったとき、二人で過ごしたい新妻さんと、手元で看取りたいお母さまとで最後の対立が起きようとしていた。どちらの気持ちも当然で、私たちもほとほと頭を痛めた。
しかし、それが勃発する寸前に、Aさんは静かに旅立たれた。
まだ意思表示がわずかにできたころのAさん。我を張らないやさしいお人柄。ケアに対して、いつも感謝のきもちを伝えようとしてくれた。
「最後まで空気を読んだね」ベテランの介護士がつぶやいた。
Aさんも、ご家族もがんばった。あれからだいぶ時間がたったが、思い出すことがある。せめて時間が、少しずつ、それぞれをいやしてくれるように祈る。