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偶然会うことはないけどね
妻と買い物をしている時に、〇〇と旧姓で呼ぶ声が聞こえた。振り返るとそこには妻の同級生がいた。その同級生とは、子供が小さい時に何度か会ったり遊んだことがあるので私もすぐ気がついた。妻がよく私に言っていたことを思い出した。「〇〇ちゃんてって渡辺満里奈にそっくりだよね〜」おニャン子世代の私には響く言葉。誰が一番好きだったかと高校生の時に友達と話をしていたからね。満里奈さんね〜確かに似ていると思った。同じ様に歳をとっても、あまりあの頃と変わっていないのもそう思わせたのかもしれない。
妻と同級生が話し込んでいる間、私は邪魔だと思いお酒コーナーで本日のお酒は何にしようか?と思っていると、あることに気がついた。
偶然同級生や知り合いに会うということが全くないということを。
なぜならば地元とは言っても、ここは妻の地元だからだ。そう言えば、この町で私を知っている人って誰もいないんだな〜誰にも知られていない気軽さと同時に若干の寂しさも感じる。隣の会社の人も、大家さんもこの地元には住んでいない。私が知っている誰かと偶然出会うということは無いんだなぁ〜
実家を無くしてからは、私の生まれた町にも行くこともないし、生まれた町自体に個人的にあまりいい思い出もない。だから未練はないんだけど、でも実家は大好きだった。ボロボロの工場と2階建ての家には思い出がいっぱいある。楽しい思い出も悲しい思い出も。家という形では永遠に失った訳だが、いつでも目を閉じて想いを馳せれば実家に行くことはできる。
そんな事を買い物途中に思っていたら、妻が戻ってきた。
「〇〇ちゃん変わらないよね〜相変わらず可愛いし、綺麗だし」
「そうだね」
「今日の夕飯何にしようかな?」
「カレーがいいね!」と私が言うと
「また〜カレー〜」と妻が言った
たわいのない会話が始まり、私の思い出モードも終了を迎えて現実へと戻ってきたのだった。