でっか何これ嘘だろ……やっぱ現実だったわ。銀座天龍のデカつよ餃子
でっかい餃子が食べられる。これほど幸せなことはない。いつも僕は感じていた。餃子、ちいさいと。特に僕が愛するラーメン屋の餃子はなぜかどれもちいさい。
どこにあるかわからないサイズのものを箸先でちょちょっとつまんではい終わり、といった様子なのだ。王将の餃子はなかなかのサイズで満足はしているが、それでもまだ足りない。笑っちゃうくらいに大きいものを食べたいのだ。
「餃子 でかい 愛知」
馬鹿みたいな検索にちゃんとインターネットは答えてくれた。ナゴレコという名古屋のおいしい店を紹介しまくるサイトにそれはあった。
「想像以上に迫力ある焼き餃子にだれもが驚愕!?チャーハンも美味しい中華料理店」
その記事のサムネにはまるでバナナのような餃子。そして記事の一行目には名古屋駅と書かれていて、思わず期待が高まる。その記事を読んで、これはぜひ行かねばと気合いが入った。
すっかり夜は早く訪れるようになり、先月まで夕方と呼んでいた時間帯はすでに夕闇に沈んでいる。名古屋駅ゲートタワー。サラリーマンから学生、はたまた旅行客までありとあらゆる人種がひっきりなしに往来していた。
そんな人をかき分けてレストラン街へと向かうエレベータに乗る。まだ夕餉の時間には早いせいか、都会の摩天楼はやや空きであった。和洋中華、ありとあらゆる誘惑を取りそろえた空間に、一瞬餃子の意志が揺らぎそうになる。ええい、だめだだめだ。僕は今日餃子を食べにきたんだ。
寿司の天使や焼肉の悪魔からの誘惑を乗り越えてその店に辿り着いた。銀座天龍JRゲートタワー名古屋店。ここか。でっけえ餃子を出してくれるって店は。
中は空いていて、朗らかな男性店員から「お好きな席へどうぞ〜」と笑顔で迎えられる。店の奥には大きな窓があり、そこは空欄だった。迷わず窓際に座る。
窓の外ではおやすみ前の太陽が、橙とすみれ色のグラデーションを振りまいて名古屋を照らしていた。下を見ると新幹線を待つ人たちの群れ。いい景色だ。
メニューを見ると「焼きギョーザ(八ヶ)」と書いてある。事前にサイトで見たように、一人前が八個なので、相当に腹を空かす必要がある。僕も今日のために昼ごはんを抜いてきた。いいか、僕は本気だ。
焼きギョーザと初見の中国料理屋で必ず頼むレバニラを注文し、しばし待つ。餃子はすぐにやってきた。ドン、と重そうな皿の音。うおっ、でっけえ。嘘だろ。
デカいのが食べたかったが、これは流石にデカすぎやしないか?遠近法?写真で見るよりでっかい。信じられずに箸でグッと持ち上げる。おっとこれは、現実だ。
認めよう。お望み通りでっかい餃子がやってきた。八個も。小皿にお酢とコショウを混ぜ入れ、カラシを添える。そしてひとくちぱくり。あ!うまい!ってか肉が多い!中はずっしりジューシーで、密度が高い。
にんにくは入っていないのでいくらかあっさりしていて、パクパクとどこまででも食べていけそうな食感だった。これうまいなあ。皮はサクもち、中はぎっしり。うーん、いいねえ。
そんな感じにひとつふたつと食べているとまさかの出来事が起きた。僕の目の前の席におそらくだが中国人四人組が現れたのだ。話している言葉的におそらくそうだ。これは、彼らのリアクションが気になるぞ。
彼らが気になりつつ四つ目の餃子を食べ終わった時、少し腹の具合が気になった。やはり多いのだ。そしてそこに遅れてやってきた。そう、レバニラだ。しかもこれも結構多い。
レバニラは重そうな器にたっぷりと盛られていて、こりゃあキツいかもと思ったが、食べてみると意外にあっさり目の質感と味付けで、こちらも順調に箸が進んで行った。うまいうまい。
中国人四人組にも料理が運ばれていき、餃子の大きさに四人とも吹き出して笑っていた。日本人で言うとまんが日本昔ばなしに出てくるご飯が登場した感覚なのだろうか。その後彼らは頷きながらそれを食べていた。合格、という感想が目に見える、そんな表情をしていた。
ごちそうさまです。しかし食べすぎた。別の席ではひとりで来ていたおばあちゃんが餃子を食べていたが、食べ切れるのだろうか。持ち帰りもあるのだろうか。そんな思いを抱きながら摩天楼とお別れをした。