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#04 スキーレッスンのススメ② スキーレッスンの選び方
スキーレッスンについての、前回からの続きです。
3.日本は昔、滑りが上手であればインストラクターが務まる国だった
前回は、レッスンを受けることによる雪の上でのメリットを中心に書きましたが、メリットは雪の上だけではありません。
インストラクターは地元を熟知した住民でもありますので、
ホリデー/滞在をさらに楽しむための、ランチやディナー、
どのレストランのどのメニューがおススメかも教えてくれます。
これに対する反論として以前は:
「インストラクターに『地元の美味しいお店を教えて』と聞いたら『僕はアルバイトなのでわかりません。』とか『給料安いので、いつもスキー場の従業員食堂で済ませています。』と言われて、がっかりした。」
という、インストラクターの接客レベルの低さをネタにした話がありました。
これは日本のスキー場に海外客がまだ来ていなかった20年以上前の鎖国時代であれば、全国あちこちのスキー場で聞かれる話だったと思いますし、おそらく今でも地元客しか来ないスキー場であれば、そういうインストラクターでもやっていけていると思います。
ところが2000年代に入り、海外客が黒船に乗って、ニセコや白馬といった日本有数のスキー場を中心に押し寄せてくるようになると、インストラクターも世界標準の質が要求されるようになってきました。
その、今から15年ぐらい前の黎明期では、ニセコや白馬のスクールから、海外経験のある日本人インストラクターや外国人インストラクターによって、前述のような、お客様のホリデーを演出するレッスンが確立されていきました。彼らは、たとえ冬だけスキー場に滞在していたとしてもプロですので、地元のお店ぐらいは調べてお客様に紹介していました。
そしてレッスンのメインである滑りを楽しむ方でも、より楽しく安全で快適に滑られるような対応を、滑り出す前から行います。
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以前に比べると随分と上質でおしゃれになっています。
4.スキーインストラクターの本当の役目
たとえば、わたしがインストラクターだったころ、プライベートレッスンのお客様がレッスン前にレンタルの用具を借りる場合、レッスン集合場所をレンタルコーナーにしました。
理由は、スキー用具を正しく選んで着用すること、特にブーツ選びは大変難しいため、そこから一緒にしてあげられるように、レンタルコーナーから一緒に居るようにしました。
同僚のインストラクターで、レッスン時間内だけが仕事だと思っている人たちは、わたしのそれを見てきっと:
「レンタルスタッフだって専門なんだから、任せればいいじゃないか」
「レッスン開始時間より前に働き始めるなんて、よくやるね」
とか思っていたかもしれませんが、それをすることで結果的にレッスンが数倍楽になるのであれば、やらないという選択肢はありません。
逆にやらなかった場合は以下のような悪夢が起こり得ます。
・ブーツのサイズが合わなくて、
レッスン途中でレンタルコーナーに戻ってブーツを交換。
時間を無駄にして、手間もかかり、結果、不満な思いをされた。
・ブーツをちゃんと履かなかったため、
レッスン中に足が痛くなり、途中でリタイヤ。
結果、大変不満な思いをされただけではなく、
「もう二度とスキーをしない」と言われた。
・スキーが長すぎて扱いにくく、
期待していたほど上達にできずにレッスンが終了。
結果、不満な思いをされた。
これらが起こってしまうと、翌日以降のレッスンの仕事が無くなるだけではなく、最悪はそのお客様は二度とスキーをしなくなる(=これからずっとスキーを楽しんでくれるはずのお客様を失う)結果にもなります。
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初心者にとって、スキーに行くということは多くの不安要素や不慣れなことがあります。
・寒い雪の上で何時間も過ごす
・スキーブーツは重くて動きにくく、足に合わないと痛い
・スキーも長くて取り扱いが難しい
・他のスポーツにはない「動く足場」の上でバランスをとる
特殊なスポーツである。
ある国のスキーインストラクター教本の最初にある言葉は
「fun and safety」です。
つまりスキーを滑ることが楽しくて(=fun)、
雪の上で安心・快適(=safety)じゃないと、
またスキーを滑ろうとは思わないのではないでしょうか。
スキーを初めて滑る人、もしくはスキーに苦手意識をもった人の場合、
スキーインストラクターの本当の役目は、上達させてくれることよりも、スキーを「面倒で不安なもの」から「楽しくてまた行きたいもの」に変えてくれることではないかと私は思っています。
ということで、特に初めて滑る人がいるようなスキーホリデーの場合、万難を排して楽しいスキーホリデーにするためには、レッスンは良い解決策ではないでしょうか。
【オマケ】
ところで多くのスキー学校がお客様に対して当たり前のように要望している:
「レッスン開始時間までにレンタル用具を借りて、すぐに滑られる恰好でレッスン開始場所に並ぶ。」
ですが、実はこれ、慣れている大人のお客様であればそこまで難しくないかもしれませんが、初心者や小さなお子様連れのお客様にとっては、かなり難易度が高い要望です。
・不慣れなホテルやスキー場の施設内を移動して
レンタルコーナーまでたどり着き、
↓
・しかも朝のレンタルコーナー大抵は激込みなので、
そこで多くの時間を割き
↓
・慣れないスキーブーツを履く
↓
・歩きにくいスキーブーツで重くて長いスキーをもって、
建物から離れた雪の上の集合場所まで歩いていく・・・。
もし親に言われて仕方がなくスキーを始めようとしている子供なら、この時点でスキー嫌いになっても不思議ではありませんし、小さなお子様を連れた親であれば、この苦労だけで滑る前から萎えると思います。
5.プライベートレッスンとグループレッスン
ここからは、どの形式のレッスンを受ければ、レッスンのメリットを最大化できるかについてお話しします。
日本人的にはスキーレッスンは、一人のインストラクターが複数でバラバラに集まった他人同士のお客様をまとめて教える「グループレッスン」が主流ですが、海外のお客様のほとんどは、お客様1名もしくは1家族でインストラクター1人を貸し切ってしまう「プライベートレッスン」が主流です。
料金はリゾートによって異なりますが、グループレッスンは1人2時間で数千円、プライベートレッスンは1日(4~6時間)で数万円です。海外客の多い人気リゾートほど料金は高くなります。
グループレッスンでもインストラクターはちゃんとケアしてくれますが、
やはりプライベートレッスンの方がより細かなケアをしてくれます。
たとえば前述のレンタルのスキーブーツが合わなかった時のような特別な対応はプライベートレッスンじゃないとしてくれません。
それに、家族でグループレッスンを受けることは、大人と子供でクラスが異なるので難しいので、家族一緒に面倒を見てほしい場合は大抵はプライベートレッスンになります。
プライベートレッスンを1日お願いすると結構な料金になりますが、これから数日間そのリゾートに滞在する場合のメリットや、さらには皆さまのこれからのスキーライフ・・・今後も毎年どこかでスキーホリデーを楽しむ・・・ことを考えると、早いうちにちゃんと ”スキーの楽しみ方” や ”スキーリゾートの滞在を楽しむ方法” を教わっておくべきではないでしょうか。
また、大人だけの友人同士でレッスンを受ける場合ならば、1人分のグループレッスン料金×人数分であれば、プライベートレッスンの料金と大差はないはずですので、是非プライベートレッスンで、インストラクターを”貸切って”みてはいかがでしょうか。
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スキー場を熟知したインストラクターだからこそできる技。
それでも「プライベートレッスンは料金が高いから無理!」という方は、当然、グループレッスンでも良いと思います。
ただし他の参加者の方も居るので、レッスン中いつでも好きな斜面に連れて行ってくれたり、レンタルのブーツのフィッティングから付き合ってもらうような特別対応は難しいと思いますが、工夫次第で皆さま好みのレッスンになるように誘導することもできます。
たとえば「今滑っているコースは狭くて怖い」とか「さっきのコースは快適だった」とか意思表示をすると、インストラクターが気を利かせて、好みのコースで滑る時間を長くしてくれるかもしれませんし、ブーツが合わないようなら、レッスン開始時や休憩時間に相談してみると、その場でサッと解決してくれるかもしれません。そしてリフトでインストラクターと一緒に乗ることができれば、雑談の中で知りたい情報を聞くこともできます。
6.レッスンは滞在中ずっと受けた方がよいのか、それとも最初の1日で良いのか
レッスンの目的が上達目的なら、できるだけ回数を受けた方が良いと思います。お金に余裕があるなら毎回毎日で、少し節約したいなら、たとえばシーズン中に数回。シーズンに数回の場合は、一度受けてから数回自分で練習して、それからまた受けてアドバイスを受けることを繰り返す感じでも十分効果はあるかと思います。
また、託児目的であれば、大人だけで滑りたい日の毎日になるでしょう。
そして今回の話の中心となっている、リゾートにホリデー目的で滞在する人の場合はどうでしょう。
スキーの楽しみ方や、スキー場で過ごすコツを教えてもらいたいのであれば、滞在中毎日でなくても、滞在最初の1、2日間だけでもそれなりに効果はあるかと思います。もちろんヨーロッパのリゾート滞在客のように、滞在中毎日レッスンを受けて、インストラクターに滞在中ずっとお世話になるのも、お金に余裕があれば良いかと思います。(ちなみにヨーロッパのスキーリゾートのデフォルトは1週間です。大抵は土曜日に到着して次の土曜日に帰られるパターンが多いです。)
そして、もしそのインストラクターが気に入ったら、当初は1日のみだったものを翌日以降も延長したり、また来年もお願いすれば良いのではないでしょうか。
この、気に入ったインストラクターを次回もお願いすることを
「指名(リクエスト)」といいます。 海外では一般的です。
海外のスクールでは、指名/リクエストの多いインストラクターが高く評価されます。スクールや連盟単位で表彰されたり、翌年の給料アップにもつながります。つまり海外で評価されるインストラクターは「お客様から人気」で「レッスンが上手」です。日本では、たとえば元選手のような滑りが上手なインストラクターの評価が高いかもしれませんが、「滑りが上手い」や「速い」は、インストラクターに対しての評価基準ではなく選手に対する評価基準です。インストラクターと選手では滑る目的が異なるので、評価基準も異なります。もちろん、お客様から人気で、且つ滑るのも上手なインストラクターも沢山いますが。
話が逸れてしまいましたが、レッスンは下手な人が受けるカッコ悪いものではなく、受けることで皆さんのリゾートの滞在を最大限楽しいものにしてくれるだけではなく、その後のスキーライフを楽しくしてくれるものだ、ということはご理解いただけましたでしょうか。
特に初心者がいる場合や、スキーに苦手意識を持っているような人を一緒に連れていく場合は是非レッスンをご検討されてはいかがでしょうか。
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子供が「来年もまたスキーに行きたい」と思えるような体験をしてもらうため
だとさえ言われています。
スキーレッスンについて、2回も割いて随分と長い話になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回は、スキー用具は自分のものを購入すべきか、それともレンタルの方が良いかについて書きたいと思います。