えっこれ打ち切りなの!と思った漫画の話
こんな新進漫画家の方のnoteに出会いまして。
漫画月刊誌の裏側が垣間見えて、こう言ってはこの漫画家の方には非常に申し訳ないのですが、興味深く読みました。
そして何より、この漫画家の方のフラットなスタンスに好感を持ちました。
こんな風にフラットでいられる人、少ないですよ。
上記のnoteには、無料で読める前作の読み切りへのリンクも貼ってありましたので勿論読んでみました。
おっ、かわいい絵です。
キャラクター造形いいですね。
敵であっても話し合う姿勢。
複雑な出生。
敵側の複雑な表情描けるのはポイント高いです。
主人公は平常心が揺るがないタイプなので、敵側ほどの表情の起伏の幅は広くはないけど、それは主人公のパーソナリティに従って正しく描けているということでもある。
回想シーンの先生の言葉とその時の表情もグッと来ます。
感情の起伏が少なめの主人公としては訴えかけるものがあります。
先生の言葉と共に印象深く感じられます。
話の仕掛けも良いと思います。
なるほどこれで次に即連載はおかしくはないかもしれません。
しかし当の本人の漫画家さん的にはそこ(読み切り1回で即連載)が逆にウィークポイントとなってしまったと非常に冷静に自己分析なさっています。
しかしそれでもこれだけきちんとテーマがはっきりある=描きたい意欲及びその根拠がある、ことは明白ですから編集部があるいは…と賭けに出る気持ちもわからなくもないですね。
んじゃなんでせっかくの連載が打ち切りなんてことに…という疑問解消と、単純に絵も作風もイケるので連載の単行本買おう!となりました。
が。
あー。紙の本。大きい本屋が入ったショッピングセンターがどんどんなくなって、本屋難民の地方民の頼みの綱のe-honでは取り扱いしてません!!
うがー!!
なんでや!仮にも天下のJUMPコミックスやんけ!
はい。じゃ次善策の電子書籍買います。
はい。買いました。
電子書籍は地方民の味方です。
紙の本を買いたかったけど許してください。
見かけたら紙本も買いますので。
おっ、やっぱりかわいい絵ですね。
口絵もかわいいです。
よし本編。
…あ。1頁目でデッサンちと怪しい。
いや、ひどいってほどじゃない。
新人さんならこんなもんです。
ただ広げた両の腕も自信のなさと不安感が滲み出てるかな…。
この作者の方、謙虚で正直だから不安なところも絵に出ちゃうんだなあ…。
アインちゃんが文句なくかわいいし綺麗です。
これで一見ぽやんとしてて最強なのがまた良いです。
ユラちゃんよりかわいいのでこりゃ並のヒロインでは太刀打ちできんぞ…。
細かく書くとキリがないので要点だけに絞ります。
確かにこの話の運びだと、1巻はスローテンポで割と世界観説明になってます。
本格的にストーリーがドライブして作者の描きたいテーマにダイレクトに触れるのは概ね2巻以降になります。
2巻は文句なく面白いです。
エンタメとしても勿論いいのですが、1巻から通底してる作者のスタンスがいいのです。
もしも1巻のストーリーを短期連載または読み切りを数回、で一旦切ってから長期連載として2巻以降のエピソード、という構成なら、もっと続いたかもしれません。
2巻がすごく良いだけに非常にもったいない。
あと、1巻分を短期連載または読み切り数回で掲載していたならその間に画力向上に励むこともできたでしょう。
長期連載に比べれば合間にインターミッションが入るので、試行錯誤の期間も若干とはいえ取れるのでは。
この作者の方は繰り返しますが非常に謙虚な方なので、「画力が足りない」と自己分析してますし、某他社誌にも言われたとのことですが…。
某他社誌、そんなに抜きん出て画力高いかな?
某他社誌出身の超が付く大御所様、そんなに上手くな(あわわわ)
あと、はっきり言っちゃうと例えば鬼滅の刃は画力高くはないです(特に頭の描き方がひどい。その代わりと言ってはなんだけど表情、感情、情動はすごく描けてます)
他にもストーリーやテーマは文句なくいいんだけど正直絵が下手…という大・大・人気大御所漫画家さんもいます。
(炎上しそうだから名前は出さない)
いや、この作者の方がすげー画力高いとは言いませんよ。1巻のっけから私ツッコミ入れてますし。
他にも若干こうした方が…て箇所は複数あります。
例えば
どの年代のキャラも同じ顔の長さなので、主人公格キャラと皆同じ年代に見える。(例えばおじさんや弟妹、設定では年上そうなクロ執事くんでも)
ユラちゃんがもう少しかわいいといいなと思う。顔や頭(髪の毛)と衣装、あと言葉遣いがややミスマッチ感。
アインちゃんが文句なく可愛すぎるので女の子が霞む。
アインちゃんのカラーリングが淡いので、モノクロでもカラーでもアイキャッチにはもう少し画力の上乗せが必要になる(たくさん上乗せじゃないです。少しでOK)
煽り顔は難しいですができれば習得していただきたい(2巻口絵のアインちゃん)
キャラの表情にもう一段の深みが欲しい
キャラのネーミングの不統一感
こんな感じ?
でも致命傷じゃないのよ、ほんの少しずつ足りないな、くらいで。
何よりストーリーいいです。
テーマもとても良い。
説明長いのを除けばかなりいいとこ突いてます。
説明をストーリーや絵に溶かし込んでその分台詞短くできれば「もんのすごく良くなる」と思います。
あと、「アインちゃんのカラーリングが淡いので、モノクロでもカラーでもアイキャッチにはもう少し画力の上乗せが必要になる」問題。
これの解決には「憧れのこれ系絵柄の大御所様の影響」から一歩踏み出して、「ほんのちょっとのリアルデッサン感」入れればおおかた解決する気がする。
あと、ここが解決するともしかするとスローテンポの連載序盤でも読者が着いてくる可能性があります。
もそっと詳しく書きます。
「憧れのこれ系絵柄の大御所様の影響」から一歩踏み出して、「ほんのちょっとのリアルデッサン感」入れる、とは「漫画絵の法則だけでなくリアル陰影の法則も入れる」ということです。
絵柄自体にそう問題はないので、リアル陰影の法則理解して、今の絵柄にちょい乗せしたらかなり見栄えよく目を引くようになると思います。
淡いカラーリングでもグリザイユ 画法ができればなんの問題もないと思います。
グリザイユ までは無理ならそれでもリアル陰影の法則をちょい乗せしたいところ。
グリザイユ が上手くてテーマがない絵より、ちょいグリザイユ 気味に描けてテーマがはっきりしてる方が訴える力は強いと思います。
モノクロなら例えばシュルシュル描かれた髪の毛の重なりの一番陰の濃いポイントポイントに「隈」を入れるとか(実は私自身がそうしている)
眼は一番ポイント高いので、例え淡いカラーリングであっても陰影を他より丹念に入れるとか。
いずれにしてもポイントは「リアル陰影の法則」に忠実に描く。です。
そうすると自動的に読者の目が「リアル陰影の法則で描かれた箇所」に吸い寄せられます。
かつ、リアル陰影の法則に加えて臨場感溢れる「テンプレを超えた表情」が描ければ、割とダルめの展開でも読者が着いていく可能性が高まります。
なんでか?というとテンプレ超えのリアル感情には読者を同調させる力があるからです。
「こんな表情(かお)する奴を放っておけない」、という気持ちを読者に起こさせるからです。
なのでキメの大ゴマシーンでは少なくともテンプレ超え表情を目指したいし、リアル陰影の法則をちょい乗せしたい。
リアル体感はクオリアとして読者を吸い寄せるからです。
うおーなんでこんな偉そうに書いてるんだ!!
と自分でも思うけど、打ち切りは非常にもったいないという気持ちからこうなってしまいました。
けど、漫画も絵も文章もかなり口うるさいグルメの私がここまでもったいないと思うことはそうそうないです。
特に新人さんの作品でここまで褒めることはまず滅多にないです。
なのでできれば再起してほしいですね。
あ、あとこれは作者の方や編集さんには不可抗力ですが、紙本売上が先で電子書籍が後、というのはシステム的にウ⚪︎コだと思います。
電子書籍の方がよほど早く集計できるでしょうに。
地方民は紙の本すら手に入れづらいんで、こんなウ⚪︎コシステムでは地方民は戦力外通告されてるも同然です。
まあ、人口少ない時点で戦力外なのは事実ですが。
いずれにせよ、打ち切りは非常にもったいないと感じるのでこの作者さんの再起と幸運を祈ります。
あーもったいない。
あ、ちなみに見出し画像は初描きアインちゃんです。二次創作なのにすんなり描けた(二次創作参入時に七転八倒する私にしては珍しい)
ついでだから見出し画像だけでなく全部載せとく。
※後編はこちら。