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緊急着陸体験、上空で煙充満の機内で死ぬかと思った話

この記事は、私が体験した飛行機事故と、その際の対応を詳細に記録したものです。この実体験を共有することで、同じような状況に直面した際の参考となり、飛行機に乗る際の備えや教訓として活かしていただければと思い、記事にしました。少しでも皆さんの安全意識向上に繋がれば幸いです。とても長いですが、どうぞご理解の上、最後までお読みいただければと思います。


2023年7月1日、福岡発宮崎行のANA4667便に搭乗しました。後輩2人との楽しく短いフライトになるはずが、人生で最も恐ろしい体験をすることになるとは思いもしませんでした。

この便は12:25発ー13:10着の45分間という短いフライトです。しかし、熊本上空で発生した緊急事態により、その旅は一変しました。

異変の始まり―霧がかった機内

離陸してから20分ほどが経過したころ、飛行機が熊本上空に差しかかりました。ふと機内を見渡すと、どこか薄く霧がかったように見え、「自分の目が霞んでいるのか?」と最初は自分の感覚を疑いました。しかし周りを見渡すと、他の乗客たちはスマホをいじったり、眠ったりしており、異常には気づいていない様子でした。

「なんだかおかしい」と感じた私は、CAの動きに注目しました。彼女たちは徐々に慌ただしくなり始めており、明らかに何かが起きていることが伝わってきました。私はとっさに上着を脱ぎ、口元を覆いました。

その間も、機内に漂う霧のようなものは徐々に濃くなり、やがてそれははっきりと「煙」だと分かる状態になりました。その瞬間、ようやく周囲の乗客も異常に気づき、不安なざわめきが広がりました。

緊急アナウンス―「姿勢を低くして」

ほどなくして、CAからのアナウンスが流れました。

「皆様にご案内いたします。ただいま客室乗務員がマスクをお配りしております。お手元に布やマスクなどお持ちでないお客様は客室乗務員までお知らせください。また、引き続き姿勢を低く保っていただき、鼻と口をマスクや布で覆ってください。」(音声ママ)

指示が出された頃には、煙がさらに濃くなり、前方がほとんど見えない状態になっていました。その後、追加でマスクやブランケットが配られました。この時のCAたちは非常に落ち着いており、プロフェッショナルな対応を見せてくれました。こんな緊急事態の中でも感心するほどでした。

窓が開かない恐怖―命の危機を感じる

機内は次第に煙で充満し、窓が開けられない密閉空間にいる恐怖が募りました。

実際の機内の様子

さらに、吸い込むたびに感じるオイルのような匂いが呼吸を阻害し、「このままでは息ができなくなるのでは」と強く感じました。私は前傾姿勢を取り、できるだけ足元の空気を吸うように努めました。

低酸素状態が人体に及ぼす影響
短い時間でも低酸素状態は人体に深刻な影響を及ぼします。通常の酸素濃度は21%とされていますが、これが18%になると頭痛などが起こりはじめ、16~14%で脈拍と呼吸数の増加 ・頭痛・吐き気などにみまわれて精神集中が難しくなり、細かい筋力作業が困難になってきます。12%でめまい・吐き気・筋力低下などの症状を引き起こし、判断力も低下します。そして10%まで酸素濃度が低下してしまうと顔面蒼白・意識不明・嘔吐といった症状がおこり、気管閉塞で窒息死の危険がでてきます。

飛行機の緊急用マスクの必要性とその使用方法などを解説! – skyticket 観光ガイド

遺書を書くべきか―頭をよぎる最悪のシナリオ

機内全体が緊迫感に包まれる中、「このまま最悪の事態もありえるのでは?」と覚悟しました。もしそうなら、せめて家族に言葉を残したい。そう思い、スマホを開きました。しかし、「今まで本当にありがとう」以外の言葉が浮かびません。。。緊急時には気の利いた文章など書けないものだと痛感しました。

そこで改めて冷静になり、エンジンの状況を確認しました。プロペラは正常に動いており、炎や異常な煙は見当たりませんでした。残りのフライトの時間が15分であることを確認し、総合的に判断して「もしかしたら無事に着陸できるかもしれない」と少し希望を抱き、遺書を書くのをやめて冷静さを取り戻しました。

パイロットのアナウンス――「貨物室の火災は消火済み」

その後、「プンッ」と聞いたことのないアラート音が鳴り、パイロットからの説明が入りました。

「貨物室。貨物室から煙が出てるそうで、これはこちらも消化できました。
現在煙が充満していますが、今しばらくお待ちください。あと(CA:姿勢を低くしてくださーい)15…10分強で着陸できる目標でございます。
何かありましたら客室にまでお知らせください。失礼します。」(原文ママ)

パイロットの声は早口で、かなり焦っている様子が伝わってきました。また、別のアナウンス時にアナウンスを切る瞬間に「あっ」という声が聞こえ、かえって不安を煽られる結果となりましたw

緊急着陸――タラップでの混乱

13時10分、飛行機は目的地でもある宮崎空港に緊急着陸しました。

着陸直後、すぐに滑走路への脱出が指示されましたが、この小型機には滑り台はなく、前方と後方のタラップ(階段状の設備)が使われました。

私は後方出口に並んでいましたが、進むのが遅く、さらに後ろからパイロットが走ってきて「早く降りて!」と声を荒げました。

最終的に全く進まず、私は前方出口に誘導され、ようやく機外へ出ることができました。

後でニュース映像を見て知ったのですが、後方出口にはタラップが準備されておらず、消防隊員が一人ずつ乗客を抱えて降ろしていたため、脱出に時間がかかっていたようです。これは空港側の準備不足が否めません。煙の場合、機体火災や爆発の懸念もあるのでこの対応は不安すぎます。

誰も知らない緊急脱出後の世界
控え室での混乱と自身が行うべき判断

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