ビフォーアフターの同級会
5月末、「なんか今年、集まるらしいよ」と友人が言う。
中学の同級会は二十歳の集以降、キリよく10年ごとに開催される。
「同級会やります!」と地元に残っている幹事から6月早々にグループLINEにお知らせが来た。
さて、参加しようか、やめておこうか。
「今更行っても、誰が誰だか分からないし」「逆に、誰?って聞かれるのも嫌だし」と
後向きに悩み始める。
思い悩むこと3か月、結局行くことにした。
理由は2年前に幼馴染が病気で亡くなったように、いつ会えなくなるか分からないから。
それに今回は、宴会費、宿泊費込みで割とお手軽価格なのだ。
地元は田舎の温泉郷。同級生にひとりいると便利な旅館の後継が私たちの年代にいて、今回もそこの旅館で開催される。
幹事の関所を通った後、宿泊組は部屋へ向かった。
「この部屋、半年前から押さえたらしいよ」
ドアを開けると日本庭園が目に入る。
いきなり靴箱ではない。
石畳風な床を歩き中に入って行くと和室と洋室、リビングが広がる。
そしてお風呂は岩風呂でシャワーヘッドはリファの設置されている。
宴会前からテンションが上がる。
会場に行くとやはり、この人、誰だっけ?と分からない人も半数近くいたが、きっとお互い様だと思いながら顔見知りと話し込む。
一次会、二次会、三次会。
参加するかどうか散々迷ったのに、会うと一瞬で昔の感覚が蘇るのが不思議だった。
「マーちゃんってあんなにおしゃべりだったっけ?」
「いやー、おとなしくて全然喋らなかった感じだよ」
「そうだよねー」
「そうーいえば、アユミちゃんてどうしてるのかな」
「あー、この前の3月に東北に転勤になったよ」
「へー、中学の時、頭よかったよね。東北かぁ、まぁ、うちら寒いの慣れてるから大丈夫か」
他にも、この人がどうなった、あの人は実はもう亡くなった、と話は尽きない。
中には35年ぶりに合う人もいた。
卓球部のコウちゃんは2度結婚して2度家を買った。
中学時代の真面目さから想像するに女に騙されたか?
あの人がこんな風になったんだぁと人生の答え合わせをしているみたいで面白かった。
美味しい料理とお酒も楽しさを引き上げていた。
無口な人が意外とおしゃべりになっていたり
細っこい人がゴリマッチョになっていたりした。
50歳のおじさん、おばさんたちは色々な人生を歩んできたけど、
数時間、童心に返り、また明日も会うかのような軽い「バイバイ」をして、10年後の再会を約束した。