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No11 構造計算適合判定資格者検定について&平成27年の回答案

構造計算適合判定資格者検定のメリットと難点

建築構造設計、構造審査をされている方の1つの目標として、「構造計算適合判定資格」の取得を目指される方は多いかと思います。

この資格を取得することで
・希少な資格ということで設計をする場合に説得力が増す
・審査機関で募集があれば副業として臨時の判定員をすることもできる
(審査1件:数万円らしいです。)
・構造設計に比べて給料や職場環境なども比較的良い構造計算適合性判定員への転職に使える
以上のようなメリットがあります。

「構造計算適合判定資格」は「一級建築士」等と異なり、設計においては必須の資格ではありませんが、持っていると働き方の選択肢が増える良い資格だと思います。

一方で、この試験の難点は
・3年に一度しか行われないこと
・内容的にやや難しいこと(主にルート3(保有水平耐力計算)中心)
・とても情報が少ないこと
だと思います。

2007年に構造計算適合性判定が始まったときに大量に資格所持者が増えましたが、そのときに取得した層の多くが定年などを迎えて引退しています。
現在の試験内容になってからは、平成27年(2015年)、30年(2018年)、令和3年(2021年)の過去3回しか試験が行われておらず、1回の試験で約150人程度の合格者しかいないため、現在の試験形式になってからは全国で資格所持者が500人も居ない希少な資格となっています。


構造計算適合”性”判定資格と構造計算適合判定資格

余談ですが、2007年頃の試験は「構造計算適合”性”判定資格」であり、この資格を持っていると、構造設計一級建築士の試験が一部免除されます。
一方、2015年以降の試験は「構造計算適合判定資格」であり、ややこしいですが”性”が付いていない”適合判定資格”となっています。この資格には構造設計一級建築士試験の一部免除等はありません。
私が持っている資格も「構造計算適合判定資格」の方です。

試験の概要・合格点等

試験概要

【受験資格】
一級建築士試験に合格した者で、以下の業務に関して、合計5年以上の実務の経験を有する者
・構造設計
・構造計算適合性判定の業務
・建築物の確認の業務(構造を含む)
・住宅性能評価の業務(構造を含む)
※詳細は、日本建築防災協会のHPをご覧ください。

【試験の時間割】
考査A:多肢択一式問題 (午前10時~12時の2時間)
考査B:記述式問題   (午後1時~午後4時の3時間)

例年、考査Aは25問、考査BはRC造、S造ともに大問1問、小問3~4問となっています。また、得点は考査Aが100点満点、考査Bが150点満点の合計250点満点です。

過去3回の試験結果の概要

平成27年(2015年)
・実受験者数 732名
・合格者数  164名
・合格率   22.4%
・合格基準点 167点/250点(66.8%)
・平均点   138点/250点(55.2%)

平成30年(2018年)
・実受験者数 574名
・合格者数  172名
・合格率   30.0%
・合格基準点 167点/250点(66.8%)
・平均点   143点/250点(57.2%)

令和3年(2021年)
・実受験者数 481名
・合格者数  135名
・合格率   28.1%
・合格基準点 167点/250点(66.8%)
・平均点   149点/250点(59.6%)

https://www.kenchiku-bosai.or.jp/workshop/tekihan2021/

以上が過去3回の試験結果となります。
発表されている合格基準点を見ると、考査Aと考査Bの合計でだいたい2/3程度の正解を取れば合格することができます。


自分の試験経験談

私は、令和3年に行われた構造計算適合判定資格者検定に合格することができました。しかし、試験勉強をする上でこの試験の情報がとても少なく、情報収集に大変苦労しました。

例えば、
・日本建築防災協会のHPに過去問が掲載されているが、過去に行われた試験回数が少なく過去問題の絶対数が少ないこと
・回答案が考査A(4択)のみしか開示されていないこと
・考査B(記述)の回答案がどこにもないこと
・一級建築士や構造設計一級建築士と異なり、大手資格学校でも対策講座などを取り扱っていないこと
・受験している人が少ないため、情報入手しにくいこと

私はたまたま同じ会社に平成27年、30年の合格者が在籍していたため、色々とアドバイス等をもらいながら、勉強を行うことができましたが、もし居なかったら合格は難しかったのではないかと思います。

私は運良くこの試験の情報を手に入れることができましたが、同じように情報収集できる方は多くはないかと思います。
そのため、自分の情報や経験を少しでも多くの人に公開していきたいと思い、この記事を書いています。

ここからは、この記事の本題である、過去に行われていた試験第1回目(平成27年分)の回答案を書いていきます。

平成27年 構造計算適合判定資格者検定 考査B 回答案

一番最後に平成27年の試験問題(考査A、B)のPDFをダウンロードできるようにしていますので、お持ちでない方は先にダウンロードしていただければと思います。

問1

「Ⅰ.構造計算書(抜粋)」(pp.3~12)及び「Ⅱ.構造図(抜粋)」(pp.13~25)は、構造計算適合性判定に提出された 10 階建ての鉄筋コンクリート造建築物の構造計算書及び構造図の一部である。それらを参照し、問 1-1~問 1-3 の各設問に解答せよ。

問1-1

「Ⅰ.構造計算書(抜粋)」の「3.設計方針」及び「7.保有水平耐力の検討」について、以下の2つの設問に解答せよ。
(1)設計方針の中で最も不適切な項目を指摘し、これと関連して荷重変形曲線(Q-δ図)において不自然となっている内容を記述せよ。
(2)設計方針の中で最も不適切な項目を修正し、再度、構造計算を行った場合に予想される荷重変形曲線(Q-δ図)及び保有水平耐力の結果を、X 方向及び Y 方向について記述せよ。

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