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【教職員の皆さんへ】学校現場の声を見える化し、対話の文化をつくるオンライン・プラットフォームをつくります。

私が教育にかかわる理由


「自分を大人だと思う」29.1%、「自分の国の将来がよくなる」9.6%、「自分で国や社会を 変えられると思う」18.3%
これは2019年に日本財団が9カ国の18歳を対象に行った「社会や国に対する意識調査」における、日本の回答割合です。ここでは細かくは言及しませんが、いずれの項目も、他の8カ国と比べても、顕著に低いと言える数字になっています。


私は、大阪で人権教育の盛んな地域で、被差別マイノリティの当事者として育ち、小さな頃から「この社会にはおかしいこと、変えたいこと、どうにかしたいことがある」と思ってきました。18歳の時に国際NGOの企画に参加をして世界の国々をまわり、「どうにかしたいことは世界中にあるのだと」と感じました。そして、自分にできることを一生懸命考え、いきついたのが「教育」の世界でした。

自分の頭で批判的に物事を考えられる子どもたちが育つ教育、どんな社会的背景の子どもたちも自分を大切な存在だと感じられる教育。「私の人生は私がつくっている、私たちの社会は私たちがつくっている」。希望と責任を持って、そう言える人が増えるような教育。そういうものを、つくりたいと思ってきました。

小学校現場での挫折経験

大学を卒業してすぐ、小学校で働きました。ここで大きな挫折を経験することになります。違和感を感じることがたくさんありました。
草木を摘むのも木登りも禁止で、4列で歩く練習なのか?と思うような遠足。ラスト15分はしゃべらずに黙々と食べるという、給食の「もくもくタイム」。なんら手立てをされないまま、指示されていることが理解できず、毎日怒鳴られる子。
隣のクラスで、怒られたストレスで吐いてしまった子どもがいた際、そのクラス担任の先生に「吐いたからって追撃の手を緩めちゃダメなのよ、それで許されると思うんだから」と言われた時のショックは今でも忘れられません。でも、一番ショックだったのは、私自身が「おかしい」と言えなかったことでした。
 
私は臨時常勤講師として、たった3ヶ月しか働いていません。
ですが、その間、違和感があるけれど表明できない、なんとなく周囲の先生たちの空気を読んで私が私を守るために子どもを叱ってしまう、そんなことを繰り返し、だんだん「自分だけが感じていることなのかな」「自分がおかしいのかな」というような感覚を抱くようになりました。表現しないことによって、自分がわからなくなる、失っていく、そんな経験をしました

学校の外にいるからこそ、できることは...?

その後、私は現場を離れ、学校の外で教育に関わるようになりました。
挫折して現場を離れてしまった自分には、今でもその悔いがあります。
同時に、その分、外にいるからこそやれることを最大限やろうと思っていますし、現場で奮闘している皆さんを本当に心から尊敬しています。

2018年の夏、当時の大阪市長が「全国学テの結果を、教員の評価やボーナス、学校予算の増減に反映させる」という方針を突如打ち出しました。
私の周囲では、悲鳴のような現場の声が本当にたくさん聞かれました。学力不振の背景には貧困など社会的な問題があり、またそういうしんどさを抱える地域にこそ、むしろ手厚いサポートが必要です。この方針は、原因を学校で働く教師のがんばりの足りなさに求め、賞罰を与えることで人間をコントロールしようとするもので、現場でギリギリ踏ん張っている人たちの、職業的な誇りを傷つけるものだったと思います。

私のSNSのタイムラインでは大阪の先生たちを中心にこの方針への怒りや悲しみ、絶望が続々と綴られていました。しかし、それらの発信は私的なもので、広く社会に届いてないと感じました。書いている方達も、書かずにはいられないから書いてるけど、書いたら変わると思っているわけではなかったと思います。それを見て、私は、反対のネット署名をすることにしました。


結果的に署名は1万6千筆集まり、教育委員会と市長宛に提出しました。多くの市民や教職員、団体の努力により、方針は見送りとなりました。

もちろん方針自体を止めたいという気持ちも大きかったのですが、何よりこの、ひたすら現場が絶望していく流れを止めたかったのです。
現場の人たちの、思いや声の「出口」を、しっかり社会に届く「出口」をつくりたいと思いました。
「ああ届いたな」「自分が声を発したことが何か動かすかもしれない」「あ、自分以外にもこんなに、それは違うと思ってる人いるんだ」と感じられたら、それが勇気づけや力づけになるのではないかと思ったのです。
実際、「もうちょっとがんばれる気持ちになった」「ホッとした」という反応が多くありました。今まで抵抗があって署名なんてしたことがなかったという先生が「今回だけは居ても立っても居られなくて署名しました。勇気を出して職場の人にもお願いしてみたら、同じ思いでいることが分かって嬉しかった」と教えてくれました。当時大阪市教委で働いていた知り合いの先生から「あの署名、ほんまにありがとう」と言われた時には、複雑な心中を想像し、やるせない思いになりました。
この署名を実施した時の手応えは、原体験として自分の中に残っています。

学校の内側にある思いや力こそが、学校を変える

「学校は変わらないといけない!」という学校外からのメッセージや圧力は、年々高まっています。もちろん、妥当な意見もその中にはたくさんあります。私自身、いろんなことを発信してきました。ですが、それらの外からのメッセージが現場の人の心を冷やしているところもあるのではないかと、ここのところ思うのです。
各現場や一人ひとりの教職員の中には、さまざまな葛藤や、よりよくしていくための模索があります。でも、そこは見られずに「学校はダメだ」「ひどい」と断罪されてしまう。でも変わりたい、変えたいって思ってる人は、学校の中にこそたくさんいると思うのです。学校の内側にある思いや力を引き出し、あたためることでこそ、学校はよくなっていくのではないでしょうか。

小学校現場にいた時の私と同じように「こんなことが気になるのは自分だけなのだろうか」と孤独を感じること、同僚と心を開いて本音で話せないこと、「どうせ変えられない」「言っても聴かれない」と諦めて手放していることが、皆さんの中にもあるのではないでしょうか?
私は、子どもたちが、「自分は大切な存在で、自分の意見は尊重される」「私が動けば物事を動かせる」という実感を積んで、巣立っていける学校をつくりたいと願ってきました。けれど、冒頭に紹介した数字にも表れているように、現実はそうなっているとは、残念ながら思いづらい状況です。
そして、日々子どもたち・生徒たちに向き合う私たち大人は、そんな実感を持っているでしょうか?学校で働く大人たちがその実感を高めていけたら、そこにこそ、希望があると私は思います。

「声は届く」を実感できる"体験"をつくるプラットフォーム

私たちは「声が届いた」という経験や「動いたら変わった」という成功体験を1つ1つ積んでいく必要があります。
職場を変えることも、教育施策を変えることも、簡単だとは思いませんが、その成功率を上げるためのオンライン・プラットフォームを、今つくっています。1つずつ実際に変えていくことができたらそれは自信になります。
「言っても届かない」、「声は聴かれない」という実感を、このプロジェクトを通して私たち自身の手で、塗り替えていきませんか?

私たちは、私たちをエンパワーしていけるはずです。一人では難しくとも、声を集めることは力になります。そしてそれが、子どもたちをエンパワーできる日本の学校教育をつくっていくことにつながるはずです。

教職員の皆さんが一番実感されていることだと思いますが、学校現場の疲弊と窮状は、もはや極まっています。皆さんの身近なところでも、不必要に子どもが傷ついたり、教職員が心を病んだり、心強かった仲間が現場を去ったりしているはずです。後回しにすればするほど、手立てはもっと困難になるでしょう。だから、今このプロジェクトを立ち上げます。
もう、無駄にできる時間はないと思うのです。

「学校はもっとよくなる」。
本当はそう思いたい皆さんと、一緒につくっていくプロジェクト。
School Voice プロジェクトと言います。

2021年の秋にまずはWEBアンケートサイトをサービスリリースします。現職の教職員の皆さん(※本プロジェクトは小中高の一条校の教職員の方を対象としています)にユーザー登録をしていただき、アンケートで声を出していただくことを通して、見えない思いや現場にあるさまざまな知恵や資源を「見える化」し、社会に届けていきます。

ぜひ情報をキャッチしていただけたら嬉しいです

まだ、キックオフしたばかりで情報が少なくて恐縮ですが、これからどんどん以下のSNSで情報を出していきます。ぜひフォローしていただき、今後の動きに注目していただければ幸いです。

▼Twitter
https://twitter.com/schoolvoice_pj

▼Instagram
https://www.instagram.com/schoolvoice.project

▼公式LINE
https://lin.ee/QVLTG8X

▼Facebookページ
https://www.facebook.com/schoolvoice.project/

また、4月からは、「学校現場の声を聴き合うおしゃべり会」という、小さな対話の場を定期的に開いていくことになりました。プロジェクトに興味を持ってくださった教職員の方に、ぜひ、お越しいただければと思います。

長文お読みいただいてありがとうございました。
一人でも多くの、現場の教職員の皆さんに届きますように。

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武田 緑|学校DE&Iコンサルタント
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