ザ・ローリング・ストーンズ

 音楽好きの多くは「ルーツめぐり」をやったことがあるだろう。私は、ザ・ストリート・スライダーズのファンなので、彼らに影響を与えたザ・ローリング・ストーンズから始め、チャック・ベリー、オーティス・ラッシュ、ロバート・ジョンソンあたりまで遡った。今なら、音楽サブスクで聴き放題だが、当時はアルバムを買うしかない。高校時代、タワーレコードで安い輸入盤を買うことを覚えたが、インターネット普及前の高校生にとって、限られたお小遣いで何を買うかは難問だった。最初に買ったのは、スライダーズの複数のメンバーが名盤として挙げていたストーンズ「べガーズ・バンケット」だった。有名な収録曲は「悪魔を憐れむ歌」「ストリート・ファイティング・マン」だが、私は「地の塩」「ファクトリー・ガール」が好きだ。

   またひとつピアスの穴をやがて聞くミック・ジャガーの訃報のために 
             松野志保『Too Young To Die』
 この短歌を読むと、1969年、ハイドパーク・フリーコンサートでのミック・ジャガーを思い出す。ストーンズのオリジナルメンバーだったブライアン・ジョーンズ変死の二日後、ステージに立ったミックは、白いフリルのブラウス姿で詩集を開き、詩人キーツの死を悼むシェリーの詩を朗読した。
 かつては野性と妖艶さを併せ持つ青年であったミック・ジャガーも今や七十九歳。「ストーンズの良心」だったチャーリー・ワッツは逝去したが、健康オタクのミックはもちろん、キース・リチャーズ、ロニー・ウッドもまだまだ元気そうだ。今のストーンズにはこちらの俳句の方が相応しいかも知れない。

    ローリング・ストーンズなる生身魂

             榮猿丸『点滅』

※塔ニ〇ニニ年十一月号「私のコレクション ロック、ポップスの歌③」より転載しました。

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