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【詩】まなざしのむこう

まなざしのむこう


冴えた灰色の鳥は

秀でた翼を呪い

錠のない部屋から

窓の向こうを眺める


射し込む日差しに

執拗に問われるも

翼を広げる理由は

どこにも存在しない


焦げる季節に瑞々しくも

大陸の風が荒ぶにつれ

力尽き地を這う葉でさえ

凩に乗り空に愛される


漠然たる絶望に浸り

曖昧な希望を抱き

深手を負わないため

直向きに爪を研ぐ


表も裏もない硬貨を

空白な床に落とし

複雑な運命の行方を

手軽に求めてしまう


御機嫌斜めな空は

渦巻く風を起こし

雷の雨を降らせ

翔る者に足枷をする


梅雨晴れの日に

一輪の黄色い花が

部屋の仲間となり

爽やかな風が吹く


秘めた想いを交わし

通じ合う喜びを知り

時の早さに悲しみ

黄色い花は逝く


冴えた灰色の鳥は

黄色い花を嘴に咥え

白い雲と遊ぶ空へ

勢いよく飛び立つ


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