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妹になれないことなら知っている〜声に出して読みたいアイドルソング~SITRA.『妹的存在』
いも‐うと【妹】
きょうだいのうちの年下の女。⇔姉。
妹は、生まれながらに妹であり、後天的に妹になることはできない。
婚姻により義妹になることや契りによって妹分になることはあれど、「妹」そのものになることはできないのである。
しかし、人は、妹になりたいのだ。
そして、妹になりたいと思う気持ちを持つことは自由だ。
そんな中、衝撃のニュースが報道された。
架空の妹になりすまして偽の戸籍を作った女性が逮捕されたのだ。
「年齢による差別を受けているように感じ、ストレスを感じていた」と供述。「一人っ子で幼い頃から妹がほしかった」「戸籍上で自分も若い年齢になりかわることができると思った」
年齢による差別はあってはならないし、妹になりたいという気持ちも尊重してあげたい。
しかし、戸籍を作って妹になっちゃいけないのだ。
超えてはいけない一線を超えないために私たちはなにかできないだろうか。
そして、そんな悶々と悩む人類に光明が差し込んだ。
「妹的存在」になるのである。
ただいま みんなの妹 登場!
戸籍を変えてはいけないが、名乗るのは自由である。
しかも、「みんなの妹」である。だいぶ大きく出ている。
しかし、夢は大きければ大きいほどいい。名乗ってしまえば、全人類の妹になることもできるのである。
(マチカネマチカネ 夢に見る ほどに焦がれて センセーション)
(マチカネマチカネ 夢に見て ドキがムネムネ おにーちゃん!)
概念としての「妹」は、兄(または姉)を慕っている。
その度合いは、夢に見るほどだ。
先に生まれたものが絶対に偉いという儒教・朱子学の教えは、人権が重んじられる現実世界では問題だが、この世界では正義である。
ワレラは みんなの妹 参上!
登場していたのに、改めて参上する。
そして、「ワレラ」という複数形なのに、妹単数である。
そんなエクストリーム構文が許される世界で、概念としての妹が暴れまわっていく。
お勉強キライだけど誰かに
こっち向いてと言いたいからガンバってみたの
(お兄ちゃ〜ん!)
「誰か」とにおわせた数秒後に、それが「お兄ちゃん」だと明かされる世界最短ツンデレ。
なんだって倍速視聴する時代だ。
ツンデレだってファストがマストだ。
ベタベタに愛して
アマアマ甘やかして
カミサマ目ぇつぶって 妹的存在
ウカウカしてたらさ
誰かに見つかっちゃうよ?
ねえ 控えめに そー言っても
それって「恋」なんじゃない?
戸籍上、妹に偽装することは違法だが、実は、兄(または姉)と妹が恋に落ちることは違法とされていない(ただし、虐待・近親婚は違法)。
だから、目をつぶってもらうのは、法ではなく、神様なのだ。
そんな神様に目をつぶれと命令する暴虐も、妹ならば許される。
悪い子だなって頭ナデナデの
爆レスちょうだい!
おてんとさまには顔むけできない方法
お茶の子さいさいでしょ
そして、暴虐を働いたにもかかわらず、「悪い子だなあ」と頭をなでてもらうことを兄(または姉)に求めるとともに、それが「おてんとさまには顔むけできない方法」であることも分かっている。
これからは、「悪女」と書いて「いもうと」と読んでもいい。
いきなり抱きついたら びっくり
モブキャラやめてフィクションを壊してくれるかな?
(お姉ちゃ〜ん!)
本稿でずっと「兄(または姉)」と表記したのは理由がある。
妹が概念ならば、その相対である兄・姉も性別を超えた概念である。
今はたまたま性別を超越した概念としての兄・姉に相当する言葉がないので、「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」と言っているのである。
その全方向性のある歌詞は、やはり全人類を射程に入れた「みんなの」妹ならではである。
(にゃーにゃーにゃ にゃにゃんにゃ にゃにゃにゃにゃー)
(にゃーにゃーにゃ にゃにゃんにゃ にゃにゃにゃにゃー)
唐突な猫だ。もはや妹ですらない。
しかし、妹とは、そのくらい自由なのだ。
「自由」と書いて「いもうと」と読んでもかまわない。
すなわち、「苦労」と書いて、「あに/あね」と読んでもかまわない。
ワガママがミリョクでしょ
ダイスキおにいちゃん
ワガママにシテ欲しい
妄想爆発
概念の妹は、自分のわがままが魅力であることをわかっている。
そして、兄(または姉)がわがままになれないことを知っていながら、わがままにしてくれと言っている。
しかし、それは「妄想」なのだ。
さあ、クライマックスに近づいてきた。
ワレラが SITRAです ただいま参上!
そう、この歌のすごさは、きちんとみんなを現実に戻して終わる。
散々概念としての妹を提示して、かつ、そこにいるのが妹であるという認識をさせ、聞いている人の妹になったうえで、最後に彼女たちがあくまで「妹的存在」であり、「SITRA」という現実にいる人間のアイドルであることを提示する。
私たちは、この歌を聞いて、概念としての妹にまみれ、妹を持ち、兄・姉になったうえで、きちんと現実に戻ってくる。
人類は、飛行機の発明のように、なれないけれどなりたいものを夢想して技術を発展させてきた。
SITRA.は、妹になれないけれど、限りなく妹になることによって、アイドル文化を次のステージに発展させた。
そして、時空をゆがませて私たちを妹世界に誘いこませた作詞者まいさんの功績は、ノーベル物理学賞に値することを指摘して、本稿を終えたい。
なお、世界観をより楽しみたい方は、下記リンクから、是非この曲をリード曲としたアルバムリリースのSITRA.のインタビューを読んでいただきたい。
このコンセプトのアイドルグループなら100億回聞かれるであろう「メンバーの中で『この子が妹だったら楽しいな』と思うのは誰ですか?」という質問に対して、「いらない」と答えたり、「最近ビターでしんどい世の中だと思ったことはありますか?」という質問に対して、「最近働かなあかん年齢(定年)が上がったじゃないですか。あれしんどいですよね」という攻めた回答がされていたりしてて、SITRA.が妹的存在である所以を感じられます。最高。
あと、SITRA.さん、ツアータイトル攻めてます。
そのお話は、また今度。
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— SITRA. (@sitra_official) October 20, 2023
🔥🐰ツアータイトル解禁🐰🔥
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『我が妹』
ツアーを通して、みんながもっと誇れる妹に成る!
初めてのツアー開催、たくさんのお兄ちゃん・お姉ちゃんたちと遊べるのを楽しみにしてます🐰
下記URLにてチケット情報随時更新‼️
第一弾名古屋は今週末解禁予定📢… pic.twitter.com/7PgA547NP4