改札口前のあの子とあの子



駅の改札口でよく見かける、カップルの異空間。


肌をくっつけあって幸せオーラを醸し出しているふたりもいれば、切ない空気が漂っているふたりもいる。


私はよく、後者のふたりを見かけることが多い。

大体ふたりは俯いて、
一方が泣いていて、一方が困っている。
泣いていないほうは「もう話を続けるつもりはない」という顔か、「とにかく黙って切り抜けよう」という顔になっている。
いずれにせよその空間で事態が好転することはない。

当の本人たちは修羅場で、本当はこんな状況になりたくもないし、できれば幸せな気分で改札口を通りたかったはず。


実際同じような経験がある。
私は「泣いているほう」だった。
相手は多分「とにかく切り抜けよう」だったはずだ。

でも改札口を通ったら、
電子音が鳴って金額や日付が表示されたら、
レバーが無機質なスピードで閉まったら、
それまでのふたりが終わってしまうような気がして嫌だった。

改札口は公共の空間でなくて、
ふたりの関係をどうするかの決定打な気がした。
幸せな時は、そんなことちっとも思わなかったのに。



改札口前のそんなふたり。
最近はそんな光景を見かけると、何故か少し嬉しい気持ちになっている。
LINEで簡単に気持ちを交換できるのも楽だけど、めんどくせぇ、って思うくらい気持ちを生でぶつけ合うのもいいんじゃないかな。


今度改札口を通るときは、ふたりはどんな気持ちでいるんだろう。



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