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ギャル過ぎ


少し前に浅草にある居酒屋で呑んでいた。

良い感じに酔いが回り楽しんでいると
トイレに行きたくなった。

店員さんにトイレがどこにあるかを
聞くと、

一階が男性用トイレで
二階に女性用トイレと男女兼用のトイレが
あるとの事であった。

私は一階の男性用トイレを使おうと思い
その方向に向かうと、男性用トイレの
少し前くらいで、
ギャルの店員さんが卓上調味料の
補充を行なっていた。

ギャルが醤油の補充してるの
人生で初めて目撃したなぁ〜と
思いながら、そのギャル店員さんに

「お手洗いお借りしまーす」と
伝えた。


「はぁい、どうぞぉ〜」
と言われた。 


居酒屋ギャル店員なのだから

「おけまる〜🤗」
とか言って欲しかったなと思いながらも

そんなこと言う訳ないし、
自分のギャル語のボキャブラリーの古さに
驚いた。


そしてトイレに入ろうと
扉に手をかけた時、扉の張り紙に気づいた。


しっかりと
扉を閉め切ってから
鍵をかけないと
扉がスライドしてしまい
勝手に開いてしまいます




え、嫌だ。




私の立ち小便姿は誰にも見せられないし
何よりも見たくないであろう。

それに加えて
引き戸が勝手に開くって
どういう仕組みという
疑問も思い浮かぶが、
とにかく勝手に引き戸が
スライドされてはいけないのである。


と思いながら、トイレに入り
鍵をしっかりとかけて
用を足していた。


すると、
自然に扉がスライドしていった。


え、嫌だ。


しっかりかけたと思っていた
鍵はかかっていなかったようだ。


ゆっくりと当たり前かのようにスライドし、
店の喧騒でスライドされる際に
発せられる音は掻き消されていた。

しかし、しっかりと扉がスライドしていく様を
私は間接視野で捉えていた。
私は瞬時に自らの間接視野を疑った。
酔いも回ってそう感じているだけかも!!
と思い、首を左に向けた。
めちゃくちゃ扉がスライドして全開になっていた。



最悪だ。



トイレの前の卓ではギャル店員が
醤油を補充している。


私は今、用を足し始めているから
ドアを閉めに行くのも不可能である。

気にせずそのまま用を足しても良いが
もう完全に扉が開いている事を自覚しているので
完全スルーを決め込むのも憚られる。


そして何より、
用を足してながら左を向いている自分と
醤油を補充しているギャル店員の
目が完全に合っている。


やばい。
新種の痴漢をしてしまっているかもしれない。

やばい。
いつも直ぐ終わるのに尿道の調子が良いのか
終わらない。

どうしよう、

私は願った。
ギャル店員が無言で扉を閉めてくれるのを。

他力本願なのは分かっているが
その時はホッピー飲みまくってて思考が
追いつかなかった。


しかし、私もギャルも身動きを取らない。
しかし目は合い続けている。


このまま目が合い続けて
私の用足し終わるのを待つことになるのかと
思ったその時、
ギャル店員の口が動き出し言葉を発した。




「まじ、きぃまずぅ〜〜〜!!」




ギャル過ぎた。

そんな百も承知な言葉を発するよりも
扉を閉めて欲しかった。

扉を閉めに来ても、小便器は戸板で
区切られているから見えないのは
店員さんだから分かっているはず。

なおさら、閉めて欲しかった。

店中に響き渡る、きまずぅ〜の声。

お願いだから他の人に気づかれないようにして。

私とあなただけの事件にして欲しかった。

それでもまだ、扉は開いたままである。

気まずいと発言されてから私は
すいませんすいませんと言わんばかりに
頭を下げまくっていた。

それを見てギャル店員は、
また醤油の補充を再開させた。


扉閉めてくれ!!!




結果的に扉は閉まらず、私は用を足し終えて
テーブルに付きお酒を飲み直した。
よく分からないがその日は良い酔い方をして
気持ちよく帰った。


お刺身盛り合わせと
扉が直っているかを楽しみに
またあの店に行きたい。

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