猫の魔力〜『猫と庄造と二人のおんな』書評〜
猫には不思議な魅力がある。美しいさらさらの毛並み、吸い込まれてしまうような大きな丸い瞳、子どものころに夢中になったスライムのような、柔軟でつかみどころのない体躯、追いかければ逃げ、放っておくと寄って来る気まぐれな気性、具体的な要素を挙げればキリがないが、そんな彼らの魅力を前に人類は皆、無力である。『吾輩は猫である』が大ヒットしたのも、漱石の文才に因るものであるのはもちろんそうなのだが、その主人公が猫であったことも一因であろう。『吾輩は犬である』とか『吾輩は鳥である』とかであっ