THE BOLY OSAKA が「いい時代の空気感」を目指す理由│取材記事
このnoteは、ホテルに携わっている人たちに直接聞いてきたホテルへの想いをさかかなが徒然なるままに書き記した「ホテル取材note」です。
たまに趣味の延長で、ホテル紹介noteを書いているのですが、先日こんなツイートをしたところ、大阪にあるホテル「THE BOLY OSAKA」さんにお声がけをいただき、取材をさせていいただきました!
このホテル取材noteが、ホテルに携わっている人たちがそもそもどんな想いでホテルを運営しているかを、みまさまに少しでも伝えられたら嬉しい限りです。
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「大阪のための、大阪のホテル」
と聞いて、あなたはどんなホテルを想像するだろうか?
THE BOLY OSAKA(以下、BOLY)は、大阪・梅田駅から御堂筋線で1駅の淀屋橋駅から徒歩5分のライフスタイルホテル。
客室数は13室で、価格は1万円後半から4万円後半。出張のビジネスユースからご褒美旅行のシーンにも使えるスタイリッシュさが特徴です。
ここ数年で続々と開業しているライフスタイルホテル。マネージャーである間宮さんが、BOLYのホテルとしてのポテンシャルを紐解いた結果たどり着いたのは「ライフスタイルホテルとして、代替不可能な存在でありたい」という想いでした。
▲今回取材対応をしてくだったマネージャー間宮さん。ホテルの立ち上げから携わっており、現在はホテルの運営をしている(取材時の写真を撮り忘れてしまいました……。反省……。)
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ミッションは「大阪に大阪らしいかっこいいホテルをつくる」
ーはじめまして、さかかなです。間宮さん、さっそくですが「THE BOLY OSAKA」について簡単に紹介していただけますか?
一言でいうと「大阪らしいかっこいいホテル」です。
大阪の人間が、大阪の感覚で「大阪の誇りだ」と言えるホテルでありたいと思っています。
実はBOLYは、異業種参入型のホテルなんです。
30年間、大阪で空間デザインを生業としてきた株式会社infix(インフィクス)が大阪で多くの空間デザインを手掛けてきたからこそわかる、大阪の感覚を自分たちの手でつくろうと企画・経営・運営・デザインを手掛けています。
僕自身、大阪生まれの大阪育ちです。大学を卒業して東京の広告会社でプランナーとして働いていましたが、今はホテルマネージャーとして大阪に戻っています。
BOLYを運営しているメンバーたちもみんな大阪育ちなんです。
ホテル経験者はほぼ皆無で、20代~30代のメンバーが自分たちで「大阪らしいホテルにするには」「お客様にまた来てもらうには」を考えて、試行錯誤しながら運営しています。
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ーなぜ空間設計のデザイン業界からホテル業界に進出したのでしょうか?
大阪には、「ええホテル」がなかったんです。
「大阪行くんやけど、ええホテルない?」と、東京で働いてるときに聞かれても、当時は外資系やチェーンのホテルばかりで、答えられませんでした。
当時思いつく「ええホテル」は、大人の社交場と言われていた堂島ホテル(2016年閉館)だったり、HOTEL SHE, OSAKA(2017年開業)さんくらいだったんじゃないかなあ。
▲HOTEL SHE, OSAKA。日本で初めてレコードを全室導入して、若い世代にSNSを中心に話題になっている
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ー自信を持って紹介できるホテルがないから、なら自分たち作ってしまおう!という展開だったんですね。
そうですね。ラグジュアリーでもなく、カジュアルでもない。そしての居心地がよくて、「そうそう、大阪らしいってこれだよね」という空間として堪能してもらえるホテルが、大阪には必要だと僕たちは考えていました。
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1.世代や価値観を超えて愛される「ええホテル」のために、感性を高い方に合わせた
ーBOLYの「ええホテル」のこだわりについて、もっとお聞かせください。
「ええホテル」と思ってもらうために、僕たちが重視していることのまず1つ目に、感性の基準を高い方に合わせることを意識しています。このような試みをしているホテルは日本でまだ多くないと思います。
これは僕の持論なのですが「部屋が広いから、宿泊費が高い」は違うと思うんです。
ホテルの宿泊費は、一般的には部屋の面積で決まります。このとき効率を重視すると「一番せまい部屋の面積」を基準に最低価格を設定します。その場合、逆に高価格の部屋は、単にせまい部屋を拡張した「大人数で泊まれる部屋」になってしまうんです。
それって、僕らが目指している「ええホテル」ではないんですよね。
▲一番広いリバーサイドの部屋。まるでリビングのようにくつろげる。窓からの眺めがよく、大阪の喧騒感はなく開放的な空間。
僕らの場合は、まず「ええホテル」としての空間としての基準があって、各部屋それぞれの空間に当てはめています。
言い換えれば、感性を高い方に合わせて、それから部屋の価格帯ごと落とし込んでいる。だから一番広い部屋と同じ気持ちの良さを、一番コンパクトな部屋でも味わえるんです。
▲最もコンパクトな部屋。天井が高く、抜け感が気持ち良い。3月の暖かな陽射しが、ブラインドを通過し、眠気を誘う。
川側の部屋ではないので、窓からの眺めはないが、どこかカラッとした空気の漂う外国のホテルに似た空気を感じる。
感性の高い方を基準にした理由としては、ホテルをこれから経営していくうえで、多様な人がいる空間であったほうが絶対いいと思っていて。
ホテルは住空間の延長でパーソナルな場所でもありながら、誰でも来れるパブリックな場所で、どんな人でもお客様になっていただけるポテンシャルを持っています。
けれど、富裕層を対象にしたオールインクルーシブなホテルにしてしまうと若い人は来れないかもしれません。逆に、若者向けのインスタ映えする安いだけのホテルでは、今度は大人たちが来なくなってしまう。
だから、BOLYは、ラグジュアリーな世界を知っている人にも満足してもらえるホテルでありながら、価格設定を落としてお客様の間口を広げた設計にすることを意識しました。なので、どのような世代のお客様にも「お、こういう空間ええな」「ええ空間って、ええな」と思ってもらえると思ってます。
BOLYは、開業してようやく一年になるのですが、大学生の方がパートナーとの記念を祝うのにうちのスイートルームを選択してくれたり、近所に住むご年配の夫婦がカフェに立ち寄るようにリピートしてくださったりと、僕たちが思い描いていた以上に多くの人たちに利用してもらえるようになってきてました。
少しずつではありますが、BOLYのこだわりが体現できてきた気がしています。
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2.BOLYの目指す「大阪らしい」はたこ焼きルームではなく、お好み焼きの概念
ー私、正直に言うと「大阪らしい」にはあまりイメージがないんです。間宮さんたちの言う「大阪らしいホテル」とは、どんな感じなのでしょうか?
はじめは「ええホテル」つくるんやったら「大阪発のかっこいいものを集めたホテル」をつくったろと思ってたんですよ。わかりやすいですよね(笑)
だから「グリコのロゴをつくったデザイナーさんにロゴをお願いしよう」とか「大阪発のプロダクトをアメニティに揃えよう」とか話してたんです。
でもちょっと待てよ……と。ある日、お好み焼きを思い出したんです。
ーえっ? ホテルでお好み焼きを食べれるようにしたんですか?
違います(笑)
僕らはお好み焼きの概念を取り入れようとしたんです。
お好み焼きって、大阪のソールフードなんです。そのルーツなんですが、大阪って、江戸時代に水都(すいと)だったんです。水の都として、物流が栄えていて、国中のいいものが集まる場所なので「天下の台所」なんて呼ばれていました。大阪の食文化が豊かな背景はここにあります。
たとえばイカと明太子を乗っけて「北海道風お好み焼き」って言いますよね。けど、ベースとなるのは大阪の「お好み焼き」なんです。
好きなものを選り好んで食べるから「お好み」焼きっていうんです。「BOLYもお好み焼きでいいんだ。」と気づいたんです。
それまで僕がしようとしていたことは、例えるなら「たこ焼きルーム」なんです。それはメディア的には「大阪らしい」けど、大阪の人は泊まらないじゃないですか。
お好み焼きの概念に気づいた後は「大阪にあるホテル」をベースとして、自分たちがかっこいいと思うものを揃えていきました。
なので、インテリアには世界的に有名なプロダクトを取り入れたり、ロゴは東京のデザイナーさんにお願いしたり、それぞれのかっこいいところを吸収しながら、BOLYを形成していきました。
ただ、その中でも高価なものやトレンドのものを集めるのではなく、BOLYが「大阪らしいかっこいいホテル」にしていくために必要な、肌触り、色味、臭いなどを僕たち大阪人の感性で組み立てているんです。
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3.コンセプトをつくらず、ホテルが持つ「その土地ならでは」を醸し出す
ーホテルをお好み焼きのように見立てて、「大阪らしい」空間を醸し出していくことがミッションだと気づかれたんですね。
はい。なので「大阪らしい」を目指していますが、具体的に「これ!」というコンセプトはつくりませんでした。
ホテルを器のように考えて、BOLYにしかない空気感を生み出すことをずっと考えました。その結果、川沿いにある建物をリノベーションして作られたのBOLYにしか出せない、川沿いの気持ちよさを大切にしています。
「大阪らしい」をつくりたいけど、僕たちは求めているのは「大阪のええホテル」なので、大阪じゃないと出せない価値、というものを生み出していかなくてはならない。
となると、必然的に、ホテルのある場所性や建築性は重要になってくるのかかもしれないと思うようになりました。
その1つの原体験として、ホテルを作る前に社長とニューヨークのマンハッタン、ブルックリンにいろんなホテルを見に行くために行ったんですけど、そこでの体験がよかったんです。
ブルックリンは自由な街なんです。空き地があって、そこでよくわかんない兄ちゃんたちがコーヒーを飲んでたり、世界的にも歴史的な建造物がリノベーションされて、クリエイターたちのラボ兼カフェのような施設があったり。古いも新しいも、ヒッピーさも洗練さもミックスされた空間でした。
一方、マンハッタンは超高層ビル群がひしめく働く街。2つの街は川を挟んで隣接しているのですが、その景色がBOLYのあるキタハマに似ているなと感じたんです。
川向うに働く街が向こうに見えて、歴史的な建造物がある。キタハマ自体も為替取引所の発祥の地でありながら、ビルをリノベーションしたカフェやBOLYのようなホテルがあって。
自由さを感じる川沿いの気持ちよさが似ているんですよね。
なので、BOLYは屋上のテラスも、この共用部のロビーも、川側のお部屋も、どれもふわっと抜ける川沿い空間のよさを味わうことを大切につくられています。
すごい力説しましたが、うちに来て屋上テラスでビールを片手にぼーっとすると、この良さはわかってもらえると自負してます(笑)ほんと多くの人に体験してほしいです。
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代替不可で、更新性のあるホテルでありたい
ところで、逆に僕から質問なのですが、ライフスタイルホテルってどう思いますか?
ーえ? えっと……。今の時代の人たちのライフスタイルや価値観にあったホテルでしょうか。若い世代を中心に、InstagramなどのSNS発信で人気が出てきている気がします。
そうですね。僕も親しい考え方です。その反面といいますか、僕はBOLYをライフスタイルホテルとしてバズらせたくないんですよね。
東京で働いていた頃、僕は広告業界でバズらせること=話題を作ることを仕事にしていました。ちょうどバズ動画が流行った頃です。商品の認知をあげるための広告としてはいいことだと思うのですが、それと同時に忙しい生活者の中で「バズ」そのものは消費されてしまうんですよね。
特に、ここ数年で爆発的に新しいホテルが開業しています。
否定しているわけではないんですが、そのなかには、表面的なオシャレ感で「これをやっておけばSNS映えなんでしょ?」という気持ちが少し見え隠れしている気がするんです。「バズ」を狙えばいい、みたいな。
それと同時に、そのおしゃれさをパッケージ化して、各地に展開する事業者も増えています。事業経営を考えたら「パッケージ化」というのは、正しい手法の1つですが、そこに、どこか消費感を感じてしまうんです。
でも、だからこそ僕たちのBOLYには、「大阪のええホテル」としてやれることがあるな、と思ってます。
僕たちは、あえてコンセプトを作っていません。お客様からしたら、ホテルにコンセプトがあったほうが、ホテルをパッと理解できて「こう楽しむんだね~」とわかりやすいとは思うんです。でも僕たちは、そういったストーリーによる消費性よりも、更新性のあるホテルをつくりたいんです。
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-消費性ではなく、更新性?
はい。「ええホテル」として長く大阪の人たちと一緒にあり続けるための更新性。それにはホテルそのものが「代替できない存在である」ことが必要だと思っています。
ここは僕たちのこれからの課題、というかチャレンジしていく部分でもあります。
だから今まで話してきた「ええホテル」になりたい、とは反してしまうのですが、BOLYの正式名称「THE BOLY OSAKA」にホテルってつけてないんです。団体名のようなものであるべきだ考えています。
大阪らしいかっこいい空間を目指して、更新し続けていったときに、いつかはホテルじゃないかもしれない。それくらいの気持ちでいます。
あ、でもBOLYは、水都だった大阪の通りの名前の由来になってる「堀」から来てるんですよ。前に流れているのが「土佐堀川」っていうです。「道頓堀」とかもそう。
「堀」からひっぱてきて「BOLY」ってするとこが、大阪っぽいでしょ(笑)
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冷静にホテルのもつポテンシャルや私たち生活者の時流を分析しながらも、「ええホテル」のあり方を語る間宮さん。
大阪らしいを目指しながらも、大阪にこだわらず、明確なコンセプトはないという逆説的な挑戦が、BOLYの目指している「大阪らしいええホテル」につながっていくのでしょう。
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▲BOLY の良さをすべて語り尽くしている紹介動画。興味がある人はぜひ!(でもね、あの空間の良さはね、この動画じゃ半分くらいしか伝わらないんだよ……)
※この取材はコロナウイルス拡大前に行ったもので、withコロナの世界線の話しは含まれておりせん。ご了承ください。
SPECIAL THANX:しろ、ヤマシタ マサトシさん
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ホテルマガジンにまとめてます。よかったら見てみてね。
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▼Twitterもたまにホテルの紹介ツイートしてます