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2022年 ノーベル賞生理・医学賞受賞者予想

去年のノーベル賞予想ではDavid Juliusを的中させることができました。今年も張り切って予想していきます。

ノーベル賞とは

生理学・医学賞は、おおむね臨床と基礎が交互に選ばれてるという周期性がみられます。去年が「温度と触覚の感知メカニズム」を発見したDavid JuliusArdem Patapoutianに生理学・医学賞が贈られています。基礎分野ですね。ということで今年は臨床分野を中心に予想をしていきます。

◎ 迅速なCOVID-19への対応を可能にしたmRNAワクチン開発に対して

Katalin Karikó, Drew Weissman

各種メディア等の予想と同様、KarikóとWeissmanが今年の本命。従来までのワクチンと異なり、mRNAを細胞に取り込ませ、スパイクタンパク質を生産させることで免疫を誘導するmRNAワクチンを開発。この一年で名だたる学術賞を総なめし、残すはノーベル賞のみという状況。去年からノーベル賞本命に名前が挙げられているが、前述した通り今年は臨床系が受賞されると予想され、満を辞して受賞か。パンデミック終息の希望の光を社会に与えるという意味でも選ばれる可能性が高いとみています。

KarikóとWeissmanを本命にあげるだけではこのNoteのオリジナリティがないので、もう一枠を予想してみます。もちろん受賞者がこの二人だけという可能性も高いのですが、ご存じの通りノーベル賞の受賞枠は最大で三人です。もう一人受賞者が選ばれるとすれば、だれが選ばれるでしょうか?ここでは二人の研究者をあげてみます。

Pieter Cullis, Malik Peiris

一人目は生化学者のCullisです。脂質の研究で知られ、脂質でできた粒子で薬剤などを梱包する方法を確立しました。この技術はmRNAワクチンにも応用され、世界的な医学賞であるガートナー国際賞をKarikó、Weissmanとともに受賞しています。

もう一人はウイルス学者のPeirisです。世界ではじめてSARS-CoV-1を単離したことで知られています。SARS-CoV-2の研究においても中心的な役割を担っています。

◯ モノクローナル抗体による抗がん剤の開発に対して

Dennis J. Slamon, Axel Ullrich, H. Michael Shepard

モノクローナル抗体を用いた抗がん剤、トラスツズマブを開発し2019年のラスカー臨床医学賞等を受賞したSlamon、Ullrich、Shepardが対抗馬です。乳がんや胃がんの治療に用いられています。Ullrichがん遺伝子であるHER2を同定し、SlamonShepardらがこれを標的とした抗体を作製し、キラーT細胞などを介してがん細胞を取り除く画期的ながん治療法を開発しました。

▲ VEGFの発見および加齢黄斑変性の治療法の開発にに対して

Napoleone Ferrara, Donald R. Senger

VEGFの遺伝子をクローニングし2010年のラスカー臨床医学賞を受賞したFerraraもノーベル賞の有力候補です。VEGFの阻害剤は加齢黄斑変性の治療に応用されています。ノーベル賞はその分野の最初期に貢献した人まで遡って贈られることがあり、この性質を踏まえるとVEGFの発見者であるSengerも受賞する可能性も十分にありそうです。

△ 肥満のメカニズム(インスリン経路およびレプチンの発見)

C. Ronald Kahn

ノーベル賞、ラスカー賞に次いで権威があるとされるウルフ賞の受賞者から、候補者を選んでみました。Kahnインスリンのシグナル伝達機構と疾患との関連を研究して2016年にウルフ賞医学部門を受賞しています。

Jeffrey M. Friedman

Friedman食欲を調節するホルモンであるレプチンを発見し2019年にウルフ賞医学部門を受賞しました。レプチンは肥満とも深い関係があります。生活習慣病は世界的に社会問題になってきているので、近いうちにノーベル賞の対象になるのではないかと考えています。

✖️ PI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路の発見に対して

Michael Nip Hall, Lewis Clayton Cantley, Stephen Staal

最後に、去年も候補にあげたPI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路を紹介します。受賞分野の周期性が壊れて基礎よりの受賞者が選ばれるとしたら、この三方ではないでしょうか。

PI3K, AKT, mTORはいずれもセリン・スレオニンキナーゼ(タンパク質などにリン酸を付与する酵素)で、栄養シグナルに応答して細胞周期など様々な細胞現象を調節するシグナル伝達経路を構成します。どのキナーゼもガン治療の重要な標的とされています。

Michael Nip Hallは1993年にmTORのクローニングに成功し報告しています。ちなみにGeorge LiviもHallとは独立にmTORのクローニングに成功しましたが、論文出版がHallよりも5ヶ月遅れ、ラスカー基礎医学賞はHallの単独受賞となっています。研究期間を考えれば5ヶ月なんて誤差みたいなものですが、このわずかな差が受賞者に選ばれるかどうかを分けるようです...

続いてLewis Clayton Cantleyは1985年にPI3Kを発見しました。mTOR発見の8年前のことです。ガードナー国際賞をHallと共同受賞しています。

最後にStephen Staal。実はこの方、主な受賞歴がなくWikipediaの記事もない、超大穴です。AKTは1991年に3つのグループによって独立に発見された、と書かれている文献もあるのですが、よくよく調べるとこの記述は正しくありません。AKTがキナーゼとして同定されたのは確かに1991年ですが、実はその4年前の1987年に発ガン遺伝子としてStaalがクローニングに成功してるそうです(Manning and Toker, Cell, 2017; 下記にリンクあり)。ノーベル賞は最初の発見者に賞が与えられる傾向が高いと言われているので、AKT発見に対して賞が贈られるとすればStaalが選ばれるのではないでしょうか?2016年に講演をしていた形跡があったので、まだご存命、と信じています。もしStaalが受賞すれば、個人的には超胸アツ展開!

最後に

私はYouTubeで受賞発表を見守りたいと思います。当たったらほめてください…
ノーベル賞の公式HPは↓です!
YouTubeのリンクやカウントダウンがみれます。


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