2024年度ノーベル化学賞に選ばれそうな生物学に関わりの深い研究者
直近のノーベル賞化学賞受賞者
過去のノーベル化学賞は物理化学から分子生物学まで幅広い学問が対象となっている。直近では2023年度に量子ドットでMoungi Bawendi博士、Louis E. Brus博士、Alexey Ekimov博士が受賞。2022年度には生物学にも関係が深いクイックケミストリーと生体直行反応の開発でCarolyn R. Bertozzi博士、Morten P. Meldal博士、Karl Barry Sharpless博士が受賞している。そのほかCRSPRやクライオ電顕など生物学でもお馴染みの技術が数多く、およそ2年に1回のペースで選ばれている。
2024年度ノーベル化学賞受賞者候補
Karl Deisseroth博士, Peter Hegemann博士, Gero Miesenböck博士
2010年にNature誌の「Method of the Year」に選ばれたオプトジェネティクス自術の開発に貢献。光で神経活動を操作することが可能になり、神経科学をはじめ生命科学の研究にブレークスルーをもたらした。Hegemann博士は海洋微生物からチャネルロドプシンを発見した。Deisseroth博士はチャネルロドプシンが神経科学を研究する上での有用なツールになると確信し、遺伝学を用いて実装することに成功。オプトジェネティクスの名付け親でもある。Miesenböck博士はこれを生きた生体に応用し、光を用いて個体(ショウジョウバエ)の行動を操作することに世界で初めて成功した。
Robert S. Langer博士
Langer博士は薬物をガン細胞などの標的に狙い撃ちで届けるドラッグデリバリーシステムの発明者。現在、世界最高の天才科学者の一人といっても過言ではない。総被引用数は359953回で存命の研究者の中では世界3位にランクイン。H-indexは297をマーク(少し補足すると、この指標から彼が297回引用された論文を297本もつことを意味する)。
Howard Cedar博士, Adrian Bird博士
エピジェネティクスからも候補者を選ぶ。Cedar博士は遺伝子発現を制御する仕組みであるDNAメチル化の理解に大きく貢献した。Bird博士はメチル化が顕著にみられるCGアイランドの研究者で、ガードナー国際賞をCedar博士と共同で受賞している。
Chuan He博士, 菅裕明博士, Jeffery W. Kelly博士
2023年のウルフ賞化学部門を受賞。He博士はmRNAの転写後修飾の研究、特にRNAメチル化の研究でしられる。菅博士はtRNAに非天然アミノ酸を結合させる技術を開発し、遺伝子暗号の拡張に成功。昨今の生理・医学賞におけるRNAブームに化学賞も続くか。Kelly博士はアルツハイマー病など多数の神経疾患との関連が指摘されているアミロイド繊維の研究者。
Demis Hassabis博士, John Jumper博士, David Baker博士
2024年度のノーベル賞物理学賞でついに情報学分野がノーベル賞で解禁。化学賞からも情報学に関係するテーマが選ばれるか。ここではタンパク質の高次構造予測技術の発展に貢献しワイリー賞(2022年)などを共同で受賞した3氏を紹介。Hassabis博士とJumper博士はDeepMindの技術者で、機械学習を利用した高次構造予測ツールAlphaFoldを開発し、既存の予測精度を飛躍的に上昇させた。Baker博士は長らくタンパク質の高次構造予測分野を牽引してきた。