重水は甘いらしい

重水は甘いらしい。PNASに出てた記事がおもしろかった。
話をかいつまむと、次のようなことらしい。

そもそも重水について復習すると、質量数の大きい水素をもつ水のことで、文字通りちょっとだけ重い。とはいえ電子状態は軽水(普通の水)と同じなので、生物屋からみれば重水も軽水も同じようなもん(物理・化学屋さんに怒られそう...)。

重水は甘いか?

さて、本題に戻ろう。どうも科学者という生き物は新しいものを目にするとまずは口に入れてみるらしい(諸説あり)。なんと1935年には重水を飲んでみたよって報告がScience誌に投稿されている。彼曰く味は軽水と変わらなかったらしい。

そこにNivら複数の化学者が待ったをかける。「重水、甘くね?」と。え、みんな飲むやん...そんなわけで彼らは重水が本当に甘いかどうかを科学的に検証する研究をスタートさせた。

まず、ボランティアの被験者たちが味覚で重水を区別できるかどうがを検証したところ、28人中22人が重水を選ぶことに成功。一方、味覚受容体阻害剤を混ぜると重水の甘味は消失した。したがって、重水が甘く感じるのは砂糖と同じように、舌に並んだ甘味受容体が原因らしい。"How can such a small difference in water activate specifically this particular receptor?" 。"It is really strange."(どうして水のささいな違いが特定の受容体を活性化できるのか、不思議です。)とNivはコメントしている。

重水が甘味受容体を活性化するメカニズムはわかっていない。そもそも甘味受容体の完全な構造は解けていないので検証が難しい。しかし、例えば重水分子が受容体の構造変化を制限し、活性化の状態の安定性を上昇させている可能性などが考えられるという。タンパク質は自発的に(熱的に)揺らいでいるので、砂糖などが入ってこなくとも甘味受容体は確率的に活性状態になりうる。したがって、重水分子はこの確率的な甘味受容体の活性化状態を長引かせているのかもしれないということだ。

今後、クライオ電顕で甘味受容体の構造を詳細に解析することで、重水が甘い理由を完全に説明できるようになるかもしれない。

原著論文は↓

おまけ

重水舐めてみたいなとか思ってたら、実際に重水を味見してみたって人を発見!(科学者という生き物は新しいものを目にするとまずは口に入れてみるらしい。)機会あれば、重水格付けチェックとかしてみたい。


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