次郎長生家を活かすまちづくりの会のまとめアウトローの次郎長をどう発信する
アーティストは、北前船などから湊のリサーチ、川村瑞賢の活動と清水次郎長が重なり、清水に興味をもったコンセプトアートの今井しほかさん、台湾の大学院に通い、古い写真から歴史を探りアートにする写真家宇田奈緒さん、人や空間の歴史や隠れたストーリーを体で表現するダンサー木原萌花さんの3名にお越しいただいた。
初めの地域案内では、次郎長や清水の理解を深めるため、座学で次郎長とは何か、何をした人なのかを語り、冊子やパンフレットを提供し、生家の耐震改修、東海道江尻宿、清水港の魅力などについては制作した動画にて説明した。また、富士山について理解を深めてもらった。
その後、町を歩きにでかけ、次郎長関連ポイントを見て回り、牧田会長の店で静岡茶を体験し、川の湊を海に移す事に奔走した次郎長の功績が現代にも生きていることを舌と体で体験してもらった。
さらに日本平、夢テラスへ行き、静岡市域を俯瞰し、駿河湾を挟んだ伊豆半島や富士山との距離感、三保がなぜ富士山の世界遺産登録構成資産として復活できたのか等を可視化した。
これらの情報を提供し、あとは地域意見交換までは各自アーティストが興味ある所を見て回ることとした。
「どこを回ったの?」と、夕ご飯に静岡おでんを共にした時に聞くと、同じ情報を提供してもそこから深堀する視点がそれぞれで、遠方まで足を延ばした、ある人はトレッキング的な回り方をした、道行く人にインタビューした、興味ある人を紹介してもらい合いに行った、さらには作品をつくってみた等、彼女たちの感性の豊かさと行動力に驚いた。
地域意見交換と懇親会では、清水の感想、次郎長をどのようにアピールするのが良いのか等々忌憚なく話あいをおこなった。その後は合う予定ではなかったが「このまま、清水を後に帰るのはもったいない」として、帰宅する前日の夜、駅前のファミレスで、アウトローである次郎長を知ってもらうとした時にアートの役割、できる事は何かについて話しあい、次にどのようにつなげていくのか話し合った。
次郎長を表す「海道一の大親分、義理人情、任侠、漢の中の漢」等々の言葉は若い世代の人には通じていないことはなんとなく分かっていた。しかしながら、地元では、別の表現を探すわけでもなく、次郎長の魅力についても、当たり前に共有しているとして、顕在化してこなかった。アーティストを招いて、彼女たちの話し合いのなかで、その点の弱さが露呈し、地元としての今後の方針が見えてきたと思う。