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関口彩「吉田のシラスから、愛を知る(7日目)」

吉田町、滞在7日目。
今日は朝から港へ。一昨日お邪魔した住吉水産さんが「朝の市場を見に来ますか?」と言ってくださっていたので、えー!いいんですか!と気合を入れて早起きをしました。

早起きと言っても、朝イチのセリは7時半から。ここ最近では8時に船が戻ってくるそうで、8時過ぎに市場にお邪魔しました。

到着すぐにちょっとした違和感が…

市場の様子。あれっ、みなさん静か…

地元も港町ですが、セリの威勢の良い掛け声がどこでも当たり前と思っていたんです。その声が、全くない。アレェ〜…とても静か。

不思議に思いながらも、初めて見る、獲れたてキラキラのシラスに感動!シラスちゃ〜ん!

いたよいたよ!シラス!
加工業者の方たちが、シラスの中にガサっと手を突っ込む。おぉ、そんな大胆に!大きさや質を見ているのかな?

静かに、淡々と行われる様子を呆気に取られながら見ていました。本日のシラス、カゴふたつで10万円也。普段なら5万円という価格も、ここ最近は漁獲量が激減して値段が釣り上がっているそう。船が戻ってくるのが遅いのも、シラスが獲れず港に帰れないってことなんですね。

市場を眺めていると、綺麗に作業分担されていることもよく分かります。先日も教えていただいた「おかばん」さんが大活躍!

船を待ち、シラスを丘まで運ぶ役割の「おかばん」さん。「丘で番をする人」の意。
おかばんさんは、漁師さんの奥さんたち。現在は男性がすることも多いそう。
船から市場まで、フックの付いた棒を使ってカゴを運ぶ。2人1組。
買い取りが決まると、業者さんの車まで運ぶ。
車が並ぶ列には、業者の屋号が書いてある。

ここで、今日市場に誘って下さった住吉水産の鈴木さんに「なんでここのセリは静かなんですか?」と質問をしてみました。

お話を伺うと、この市場はセリではなく「入札」で、希望金額を紙に書き、1番高い価格を書いた業者さんが落札をする方法だそう。なるほど、だから静かなんだ!

「これに書いてね、あの人に渡すんだよ。」

「これ」に書く。左側の欄に金額を記載する。
「あの人」。水色の紙をたくさん持ってる!落札を決定する人。

船が一旦落ち着いたようで、朝1回目の入札は終了。シラスの水揚げは1日3回。そんなにたくさんあるんだな!

おかばんさんが置いていった仕事道具。うーん、美しいな。
ここにも。
今日はこの半分も船が出ていないそう。

「もう少し時間はある?」と鈴木さんに言われ、市場の2階へ。シラス漁の様子を見せて下さいました。

わ!いるいる!たくさんの船!

肉眼でも見える先に、たくさんの船が!天気が良い日だったので、キラキラと輝いて見えました。
「この港は、シラス漁だけですか?」と質問をすると、シラス漁だけだそう。他の港に行けば、桜エビとシラス、カツオ、など、港によって漁の免許が違うことも初めて知ったのでした。

そこから再度、住吉水産さんにお邪魔することに。なんと…穫れたてシラスを振る舞っていただく!

キラキラ!美しい!季節によって若干色味が変わるそう。今はクリーム色。
この地域では酢味噌で食べる習慣がある。

魚の豊富な富山の人間ですから、旅先で魚介をいただき驚くことは滅多にありませんが…1時間前に獲れたばかりのシラス、こんなに贅沢なことはありません。

食感は柔らかい中にも噛むとシャリっとした歯触りが。臭みなど全くないシラスの香りが口に広がって「こりゃあ、シラス丼でかき込みたくなるわ!」と唸りました。

先日もお話を伺いましたが、温暖化等の影響で、シラス漁は激減しているそうです。今まで獲れなかった魚が北上していたり、爆獲れする年があったり、それは富山でもよく聞く話。

自然のことだから、どうしようもない…とでも言うように、淡々とお話をされる鈴木さんの様子を見て、この先のことを思いました。

この先のこと。
自然現象によって、生きることが困難になる環境が更に広がるのかもしれません。それは世界中ですでに始まっているし、人間の力ではどうしようもないことです。

だけど今回初めて訪れた吉田町で、人と触れ合い、自然と触れ合った。私の故郷は富山だけど、旅をすることによって、家族のように愛すべき土地が増えていくことに気付きました。

旅を終えても、きっとここに思い馳せるな。何かあれば思い出す、手を差し伸べる。出会った人がお互いになんだとすれば、それはとてつもないパワーだ。

【住吉水産の鈴木さん、みなさま、ありがとうございました!】

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