ホストの振り返り/Otono「三保は完成されている、だから難しい」
▶︎サムネイル:「Japanese Black Pine」Takahiko Azamiより
▶︎滞在期間
9月30日〜10月6日: Ryo Fujimotoさん
10月7日〜10月13日:莇貴彦さん、はらだまほさん
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ホストを務めさせていただきました、株式会社Otonoの増田です。
今年も私の視点でアーティストの皆さんの滞在を振り返ります。
旅人のみなさん
清水・三保地域に滞在してくださった旅人のお三方。
今回はアーティストさんたちのご都合の関係で2回に分けて、それぞれの皆さんに清水・三保地区にご滞在いただきました。
9月30日〜10月6日は Ryo Fujimotoさん、10月7日〜10月13日は莇貴彦さん、はらだまほさん、が滞在しました。
三保松原は「完成されている」
違う期間に滞在された方もいらっしゃるなかでアーティストの皆さんが口をそえろえて、「ここは完成されている」と言っていたことが印象に残っています。
「三保松原で作品を作ろうとすると「映え」てしまう。」「自身の色を出す作品を作るには三保松原そのものが魅力的すぎる。」というはらださんや莇さんのお言葉や、「三保の魅力は侘び寂びなんだと思う。無理に足し算しようとすることで三保の持つエネルギーとプラスしようとしたコンテンツのエネルギーが反発したり、違和感が生じたりするのだと思う」というRyoさんのお言葉はありのままの三保の魅力を感じていただけたからこその言葉だと感じています。
所謂「わかる人にはわかる」という状態であると捉えています。
しかし、三保松原は万葉集や絵画、小説など数多の芸術作品にその姿を残しています。ユネスコに認められた芸術の源泉としての文化的価値とアーティストの皆さんの「作品づくりが難しい」という三保への所感は乖離しているように私は思いました。
その疑問をRyoさんにぶつけたところ三保松原そのものを礼讃して、「素晴らしい景色を残す」目的で三保松原を題材にするのか、「自身の作品を残す」目的で三保松原を活かすのかでは全く違うのだと思うとおっしゃっていました。三保松原への礼讃の気持ちを持つからこそ、アーティスト自身を表現する作品作りは難しい(そぐわない)という感想を持たれたとのことです。
3人の方が真摯に三保地域に向き合い、私たちにこの気づきをシェアしてくださったことが今回のMAWで得られた大きな財産だと感じています。
観光事業者でもある私たちは「わかる人にはわかる」三保松原の魅力にリスペクトを持ちながら「知りたい人に伝わる」「わからない人にも届く」形にしていく工夫を続ける必要があり、皆さんとのディスカッションを通じてその難しさを改めて感じています。
これから
3人の旅人のみなさんとはご滞在中にたくさんお話しをさせていただき、三保地域を新たな視点で考え直す機会と問いをいただきました。三保地域に本社を置く「株式会社Otono」として地域を見つめ直し、「三保地域の魅力を伝える術って何だろう」という問いに真摯に向き合っていきます。
三保地域との関わり
旅人の御三方ともに、それぞれの手法と想いで三保地域に関わってくださいました。各人のnoteもぜひご覧ください。
〈滞在期間中の取り組みご紹介〉
■Ryo Fujimotoさん
ワークショップ:「nature sound recording in Miho」@10月5日開催
松韻、海のおと、生き物の足跡、人の営みの音…たくさんの音に溢れる三保地域を探検して聞こえてくる音を録音し、参加者みんなで聴き合うワークショップです。
弊社運営するイベントスペース「コラボレーションスペースOtonoma」(以下:Otonoma)をイベント会場・拠点にして三保松原の音を集め歩きました。イベントの様子はこちらにまとめています!
■莇貴彦さん
作品:Japanese Black Pine(ストップモーションアニメーション)
Youtube:https://youtu.be/hi3Rw2CzPxQ
「黒松の幹の模様が格好良い!」とたくさんの写真をストップモーションアニメーションにまとめてくださいました。この松の「格好良さ」を三保地域に訪れる方にも感じていただきたいと思い、Otonomaをはじめ静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」や三保生涯学習交流館での動画の上映や作品の紹介を予定しています。
■はらだまほさん
作品:言葉とからだの往復書簡
三保地域の4ヶ所(Otonoma、生涯学習交流館やレストラン、カフェなど)に「『愛』にまつわるエピソードを1つ思い出して、紙に書く」というお題を設置し、訪れた人たちに言葉を残してもらう取り組み。
集まったメッセージ(作品譜)は、はらださんの作品に昇華されたり、SNSに公開されるとのこと。
私たちにとっても初めての取り組みでいくつくらい集まるのか見当がつきませんでしたが、地域の方々や訪れた方たちがたくさん書き残してくださいました。
「知っている人に話すにはなんだか気恥ずかしいけれど、誰にも知ってもらえないのは寂しい…」そんな思いを書くのにすごく嬉しい仕掛けだと私自身も参加して感じています。