林田真季「藤枝市中山間地域/滞在まとめ」
私はマイクロアートワーケーション(MAW)初年度の旅人として、2022年2月に滞在を予定していました。ホストとの事前打合せも済ませ、あとは現地に向かうだけ!という状況でしたが、コロナの影響であいにく実施に至らず。その後ロンドンに留学してしまったので、今年がはじめてのリベンジ挑戦でした。
たしか初年度の応募は2021年の秋で、まだそこまで自由に旅をすることが憚れるような中このMAWを偶然知って「なんだか面白そう」と思い、ノープランでただ知っているエリアに応募したように思います。ですが、当時のホストとの打合せを重ねるうちに、「せっかくなら、現地でなにかしら自分の制作活動に関連することもやってみるほうが良さそう」と気づき、滞在の準備を進めていました。
そんなことから、今年のMAW応募時は「現在取り組んでいるプロジェクトのリサーチ&実験的制作の場となり得る、山間エリアでの滞在」を最優先にして旅先を選定。正直聞いたこともないし、どこにあるかもよく分からないけれど、’中山間地域’とあるから間違いないはず、と藤枝市を選びました。
私のリサーチ対象は「杉」です。なので、今回のMAW滞在は、大半を杉林で過ごそうと計画していました。しかし直前の天気予報では、滞在中の一週間がほぼずっと雨。そして迎えた初日はバケツをひっくり返したような土砂降りで、杉林には完全に諦めがつきました。
こうなったら流されるままに過ごしてみようと、当初の計画からは大幅に変更。2日目に実施されたホスト(藤枝市役所の中山間地域活性化推進課の鈴木庸介さん・鈴木智之さん)による地域案内で茶園や茶工場を訪れ、生産者の方から話を伺ってすっかり「お茶」の虜になったこともあり、今回の滞在にあたって元々「お茶」に重きをおいていた旅人の古谷晃一郎さん・亀川豊未さんそれぞれの旅(つまりは車)に便乗させてもらいました。結果、旅人のおふたりと親交を深めることができ、これもMAWならではのことのように思います。
そしてなにより、古谷さんと茶園作業を体験し、その流れから私たち旅人全員で茶工場を見学することになった「市之瀬の里」のみなさん。あたたかく私たちを迎い入れ、お茶にまつわるあらゆることを丁寧にしかも楽しく教えてくれ、一気にファンになりました。「美味しいお茶を知れたらいいな」くらいの気持ちで初日を迎えた今回のMAWですが、最終日には「いつかお茶をテーマに作品制作してみたい」と強く思うようになっていました。
ということで、東京に戻ってから思わず、市之瀬の里の勝治義男さんからもらった「茶の実」を使って試作。日光の当て方でイメージが変わってくるルーメンプリントという写真技法を取り入れてみました。抹茶の栽培には直射日光を適宜遮ることが重要、という話を受けて制作した作品です。
おまけ:
東京に戻ってから最初の週末、いつものようにラジオ(J-WAVE)をBGMに流していたら「藤枝市」と聴こえたような、、、一瞬「幻聴か!?」と疑ってしまいましたが、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんが滞在型音楽制作スタジオを藤枝市内に制作している、という話でした。しかも、明治時代から残るお茶の倉庫を改築してレコーディング・スタジオにするとのこと。意外なところであまりにもタイムリーすぎて、勝手にご縁を感じてしまいました笑。なんだか「お茶」をキーワードに、藤枝市が面白くなりそうな予感です。