高野ゆらこ「9642歩・ポチとミケが逃げた(2日目)」
朝、窓を開けると裾野駅のホームが真下に見える。ポツポツと等間隔に電車を待つサラリーマンや学生を見ながら、この土地にも「趣味・観劇」の人がいるかもしれないんだなと思う。
去年出演した「あの夜であえたら」という作品は、会場が東京国際フォーラムのホールAだった。あんなに大きな舞台に立つのはもちろん初めてで、客席数はなんと5,000。みんなどこから来てるんだろう、とそのときに思ったんだけど、もしかすると5000分の1はここから来ているかもしれない、なんて。
素泊まりにしているので朝食はつかない。料理大好き人間としては、ゲストハウスやウィークリーマンションなどとにかくキッチンを使える滞在場所が良かったのだけど裾野では見つけられず。苦肉の策で持参したレンチン調理器具など。
昨日近くの直売で購入したさつまいもはチンして、持参したチャットマサラをかけて。あとは部屋のケトルでお湯沸かしてワカメスープのできあがり。
あー地場産の野菜とかお魚とか使ってアレコレしたかったな。1週間料理できないのが、今回の滞在で地味に辛いことナンバー1だったりする。
御殿場で今年もMAWのホストをされている、まこぱさんとランチ。裾野で会えるなんてラッキー!カフェノジノさんでキッシュプレートを食べながらあれこれお話しする。
じっくり話していくとこれまで住んだ場所がすごくニアミスしてたり、不思議な縁〜〜。MAWはつい旅人目線で見てしまうけど、同時にホスト側からの目線もあるんだな、なんて当たり前のことを再確認できたのもよかった。ノジノ店主野島さんも交えてお話してたとき、ふとこのあたりに多い名字「カツマタ」さんの漢字の話題に。野島さんが勝又の「又」を
「犬夜叉の…しゃみたいなやつ」
と表現したのが最高に好きだった。
初めて聞いた、あの漢字を犬夜叉で表したの。他にあるよ絶対!
午後は小田さんにくっついて長泉町にある知徳高校へ。
総合学習授業で小田さんの講義があるとのこと。しかも本来使用する予定だった体育館が使えなくなり、放送室から小田さんの声を校内放送でお届けするラジオスタイル!
DJ ODAの、無言の瞬間が全然ない上に自己相槌も適度にはさむ超高度技術で「話術……!」と唸りました。
せっかくだから、と演劇部の練習を見学させてもらう。
いきなり現れた不審者でしかないわたしを受け入れてくれた演劇部のみんなに感謝。11月の大会にむけて目下練習中で、作演出も副部長さんがやるらしい。今日は、脚本執筆のアイデア出しのためのエチュードを中心に。
約3分のエチュードで誰かが「ポチとミケが逃げた」というセリフを言う、それだけ決めて始める。1回目が終わってみんなに「どうだった?」と聞く
と、緊張しました、ってそりゃそうだ。不審者の前で芝居するのは誰だって緊張する。
おこがましいことを承知で、気づいたことや、意識してみるといいかな?と思ったことを伝え、もう一度同じ設定でやってみる。
多分わたししばらく忘れないと思うんだけど、ビックリするくらい芝居が変わって鳥肌がたってしまった。ああ、思い出すだけでなんか泣きそう。お芝居するの楽しいって思ってくれたらいいな。演劇って観るのも面白いからさ、いつか観てほしいよ。
見学にお付き合いさせてしまったかづみさんとゆりさんにも、彼らの変化を見てもらえてよかった。名前鬼だと高校生たちには楽勝すぎるので「好きな食べ物鬼」にして最後はみんなでゲーム。
せっかく三島のほうまで行ったので帰りは三島から帰ることに。
気になってた南米料理のお店で今夜は「ロモサルタード」。
昨日ルーマニア、今日ペルー。美味ーーーー!タンパク質野菜炭水化物ひと皿で摂取!ちょい酸っぱ辛い味付けが完全に好きなやつ。かづみさんもゆりさんもあんまりお酒飲まなそうだし、誘っていいのかなー、ってドキドキしちゃう。でも基本大皿料理のこのお店、みんなで来たら色々頼めてもっと楽しかったかも。
裾野まで戻りがてら、気になっていた裾野市の最南端を見に。
市の境界線って時々超謎じゃないですか?なんでここだけはみ出してるの、みたいなやつ。
夜だったし、行ったからって何があるわけでもないし、ベストオブ「マジ意味ねえ〜〜〜」なんだけど、でもいいのだ。
ポチとミケが今夜のわたしを最高にハッピーにしてくれてるから。