見出し画像

はらだまほ「根っこになる。(7日目)」

__________________

こんにちは。
関東を中心に振付家、パフォーマーとして活動をしているはらだまほです。
今回は、静岡の三保にて株式会社Otonoの皆様に受け入れていただきまして、マイクロアートワーケーション2024に参加させていただきます。
ありがとうございます。
どんな風にnoteを書こうか…と悩みながら、
ひとまず、私なりのメモとして。
_____________________

最終日。
朝から松原に行って、
昨日松の木の隣で描いたテキスト(作品譜:おどりの譜面)を完成させる。

完成させたテキストを
読んでみたり、おどってみたりする。




からだがある。
一本の松の木がある。
晴れている朝の日。

地中の水分を探す。
遥か下にあるかもしれない水脈を想像する。
細やかな水分が布を、皮膚を通り抜けて、
接している面からじんわりと身体を侵食していく。
侵食してきた水分と交換するように身体の細胞が溶け出していき、
地面と身体の境界線がわからなくなっていく。
どぉん。どぉん。

顔の表面は暖かなふわふわの羽毛に包まれていて、
その滑らかな感触を楽しむ。

松を見上げると、松に見下ろされている。

かすかに流れる風に乗って密やかに動く。軽く。
地中と交換し続ける身体と、軽やかに動く身体。


根っこになりたい。
自分の身体が松の根っこのはしっこになる。
松とつながっている。

身体の外側が、ゆっくりと木の皮になっていく。
木の皮となった皮膚は鱗のようにひび割れて、何層にも重なる。
内側はどんどん鱗の層に変化し、中身が消えていく。
気がつくとぱりぱりの外側が重なって重なって、
私の身体は蝉の抜け殻のようにぽっかりとした入れ物になった。

外側の色が抜けていく。
空いた内側に、どろっとした茶色の蜜が押し寄せる。
鱗の殻の内側をいくつか巻き込みながら 
ぽっかりと空いた内側をみちみちと満たしていく。

冷たい水を吸い上げる。
水たちは凄まじい勢いで身体の中を潤し、渇きがたわんでいく。
身体の中を駆けのぼる冷たい水はまるで噴水のように噴き上げ、
行き止まりの皮膚を押し上げ続ける。
押し上げる力がどんどん強くなり、
皮膚を内側から盛り上げ、外側をねじまげる。
身体のあちこちで水の柱が噴き上げ、皮膚を押し上げ、形を変えていく。
あっちも、こっちも、そっちも。
ねじまがり、膨らみ、押し戻され、反発する。

ふときがつくと、根っこのはしにいたはずの身体がぐんぐんと吸われ、
いつの間にか中枢に取り込まれていた。
身体の中で荒れ狂っていた水たちはあっという間に霧散し、
鏡のように静かになっている。
黒のあいだにすっぽりとおさまる。
あたりはからっぽで、静寂に耳を澄ましてみる。


首の後ろをまっすぐ伸ばす。
なにやら胃の周りがじんわりと温かい。
胃の奥から斜め上に向かって入道雲のような塊がもくもくと湧き出る。
雲の塊はもこもこと姿を変えながら身体を引っ張り、
身体を向こうへ連れていく。
身体はもこもことした塊に引きずられながら連れられていく。

たどり着いた途端に入道雲はするりと身体を通り抜け、過ぎ去っていく。
過ぎ去っていくのを見送る。



入道雲が見えなくなる瞬間、足を一歩踏みだす。


いいなと思ったら応援しよう!