RuiYamaguchi「捉えることのできない商店街(5日目)」
富士市滞在5日目となった月曜日。
昨夜のホットサンド交流会の情報量が凄すぎたせいか、この日は1日通してダウンした。昨日のというよりは、夏からほぼノンストップでインプット/アウトプット祭りだったため、起きた瞬間、重力が地球の10倍ある界王星に来たのかと思った。
寝て食べて寝てを繰り返し、辺りは真っ暗になっていた。
さすがに外出るかと散歩をはじめる。こういった地方でリサイクルショップやユーズドストアに寄るのが趣味だったりする。都会にはない掘り出し物が安く売られたりするからだ。
途中寄ったブックオフで、タイトル見て手に取った本の帯に惹かれた。
美術界の知識だけのやり取りや、説教臭くて押し付けがましい表現に非常に疲れを感じていたところにこれ。また、人を表層的に感動させるよりも、実は笑わせる方がよっぽど難しいのではないかと自分は考えている。
ユーモラスに軽やかに、でも何よりも深くて、笑いではじまり笑いで終わる...
そんな作品を作りたいし表現者になりたい。でもこれ死ぬほど難易度高いこともわかっている。
そういえば3日後に、大学院の授業でポラロイドカメラで撮影した写真のプレゼン/講評があることを思い出す。この吉原商店街でもっとも印象的だった光景を撮影しよう。
商店街にある奇抜で入りづらいお店をモチーフとして選んだ。
ポラロイドで撮ってみる。が、暗くて全く映らない。フラッシュを焚いてもかすかに捉えることができるのは看板だけだった。
しかし、逆にこれが面白いと思った。
富士市は工場の町。ブルーワーカーが多いため必然飲み屋も多い。外国人労働者も多いのでお店も多国籍感溢れる。そんなギラつく吉原商店街の光景は、光を重視するポロライドでは上手く捉えることができない。
いま旅を終えて思うが、つくづく不思議な町だなと。
まるで「千と千尋の神隠し」のような、あそこは幻だったんじゃないかと。
全く捉えられない被写体のイメージを眺めながらそんなことを考えていた。
楽しくなってきたところで、フィルムがなくなってしまった。明日また撮影しよう。